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12時半。
イベント会場の最寄り駅に到着した。朝陽との合流場所は南口1番出口だ。約束の20分前には、ここに到着しろと言ってある。しかし、朝陽の姿はない。苛立ちを抑えるために、壁の宣伝を眺めた。タイミングよく、黒崎製菓の新商品が出ていた。
駅の構内を移動するのは、何年ぶりのことか。秘書時代でさえ、ほとんど使わなかった。深川さんのお伴で移動し、その流れでタクシーで家と会社を往復していた。とにかく時間がなく、味わう間もなく食事を腹に入れていた思い出がある。
それと似た追い込み方を、朝陽に求めていた。俺とは違う人間で、環境すら異なるのに。晴海兄さんとの通じる部分があり、それを話した際には、少々は朝陽の気持ちが分かると言っていた。そして、根性が無さすぎると、言外に含まれる意味を受け取った。はっきりと口にしていたのは、こうだった。
(……弟には厳しくしたい。妹には優しくしたい。それは自然な思いじゃないか?それを否定すると苦しくなる。あくまでも圭一の心の中のケースだぞ……)
全く知らない土地に、朝陽は連れて来られた。進学でも、親の転勤でもない理由でだ。あれが高3年生の1月のことで、合格すれば4月から大学生になるタイミングだった。それまでは家に籠って勉強するはずで、友人は大学で作ればいいと思っていた。しかし、どれだけ心細い思いをしただろう。ここには友人が一人もおらず、ゲームセンターで知り合った、同年代の高校生達と集まったらしい。
午前中の電話では、怯えた声を出していた。真面目にやっていないことは知っている。本社では一貴の目が光り、真面目に務めているが、店頭の裏方では反対の態度を取っている。同僚から注意を受けないのは、面倒ごとに皆が関わらないためだ。店長には一貴からこう伝えてある。
(様子を見たいから放置してくれ、か。長く勤めている店員二人のみに事情を話してあるそうだ。本人は知らないはずだ……)
それを二葉が察して、母に指摘したことで関係が険悪になった。
(どこかで見た光景だ。ああ、あの頃か……)
人波を眺めているうちに、懐かしい光景を思い出した。大学入学前に実家へ戻り、その半年後、俺に会いに来た沙耶のことを駅へ迎えに行った。あの頃は、沙耶と怜が遠くに離れて寂しかった。怜は卒業後に渡米し、仕方がなかった。
余計なプライドが邪魔をし、沙耶からメールを寄越されては、短い返事を返していたものだ。本心では、会いたくて仕方がなかった。
あの頃の”会いたい”という気持ちの意味は、どういうものか?本当に親友としてのものか?
実家を離れた、12歳当時を振り返った。知らない子ばかりの中学へ入学し、初めて接するも同然の祖父母と暮らし始めた当時は、孤独と不安に襲われた。
懸命に平気なふりをし、中学校の正門を通り抜けた後、ぽっちゃりした体型の女の子と、隣同士の席になった。後ろには怜が座り、友人同士になった。沙耶の手に触ると気持ちよさそうだ。そう思うことで、手を握りたいという想いを頭の中で打ち消した。
(あれが初恋で間違いない。兄さんかと思っていた。37歳で認められた……)
今晩、夏樹に懺悔しよう。自然と笑みが浮かんだのが分かった。さらに打ち明ける内容もある。秘書としての初給料で、沙耶に飛行機のチケットを送ったことを。空港まで迎えに行くと言ったが断られて、最後に降りると言っていた駅へ迎えに行ったことも。
懐かしさが増して、手順を思い出しつつ改札を抜けた。そして地下3階へ進み、朝陽が降りるホームへ向かった。
イベント会場の最寄り駅に到着した。朝陽との合流場所は南口1番出口だ。約束の20分前には、ここに到着しろと言ってある。しかし、朝陽の姿はない。苛立ちを抑えるために、壁の宣伝を眺めた。タイミングよく、黒崎製菓の新商品が出ていた。
駅の構内を移動するのは、何年ぶりのことか。秘書時代でさえ、ほとんど使わなかった。深川さんのお伴で移動し、その流れでタクシーで家と会社を往復していた。とにかく時間がなく、味わう間もなく食事を腹に入れていた思い出がある。
それと似た追い込み方を、朝陽に求めていた。俺とは違う人間で、環境すら異なるのに。晴海兄さんとの通じる部分があり、それを話した際には、少々は朝陽の気持ちが分かると言っていた。そして、根性が無さすぎると、言外に含まれる意味を受け取った。はっきりと口にしていたのは、こうだった。
(……弟には厳しくしたい。妹には優しくしたい。それは自然な思いじゃないか?それを否定すると苦しくなる。あくまでも圭一の心の中のケースだぞ……)
全く知らない土地に、朝陽は連れて来られた。進学でも、親の転勤でもない理由でだ。あれが高3年生の1月のことで、合格すれば4月から大学生になるタイミングだった。それまでは家に籠って勉強するはずで、友人は大学で作ればいいと思っていた。しかし、どれだけ心細い思いをしただろう。ここには友人が一人もおらず、ゲームセンターで知り合った、同年代の高校生達と集まったらしい。
午前中の電話では、怯えた声を出していた。真面目にやっていないことは知っている。本社では一貴の目が光り、真面目に務めているが、店頭の裏方では反対の態度を取っている。同僚から注意を受けないのは、面倒ごとに皆が関わらないためだ。店長には一貴からこう伝えてある。
(様子を見たいから放置してくれ、か。長く勤めている店員二人のみに事情を話してあるそうだ。本人は知らないはずだ……)
それを二葉が察して、母に指摘したことで関係が険悪になった。
(どこかで見た光景だ。ああ、あの頃か……)
人波を眺めているうちに、懐かしい光景を思い出した。大学入学前に実家へ戻り、その半年後、俺に会いに来た沙耶のことを駅へ迎えに行った。あの頃は、沙耶と怜が遠くに離れて寂しかった。怜は卒業後に渡米し、仕方がなかった。
余計なプライドが邪魔をし、沙耶からメールを寄越されては、短い返事を返していたものだ。本心では、会いたくて仕方がなかった。
あの頃の”会いたい”という気持ちの意味は、どういうものか?本当に親友としてのものか?
実家を離れた、12歳当時を振り返った。知らない子ばかりの中学へ入学し、初めて接するも同然の祖父母と暮らし始めた当時は、孤独と不安に襲われた。
懸命に平気なふりをし、中学校の正門を通り抜けた後、ぽっちゃりした体型の女の子と、隣同士の席になった。後ろには怜が座り、友人同士になった。沙耶の手に触ると気持ちよさそうだ。そう思うことで、手を握りたいという想いを頭の中で打ち消した。
(あれが初恋で間違いない。兄さんかと思っていた。37歳で認められた……)
今晩、夏樹に懺悔しよう。自然と笑みが浮かんだのが分かった。さらに打ち明ける内容もある。秘書としての初給料で、沙耶に飛行機のチケットを送ったことを。空港まで迎えに行くと言ったが断られて、最後に降りると言っていた駅へ迎えに行ったことも。
懐かしさが増して、手順を思い出しつつ改札を抜けた。そして地下3階へ進み、朝陽が降りるホームへ向かった。
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