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控え室から出た時には、黒崎の熱が落ち着いた。俺の方は、火照った顔が落ち着いていた。お互いに気持ちが高ぶっていたのが、よく分かった。何かしていましたと分からない程度だと黒崎が言った。どういう基準だよ?と聞くと、俺がとろんとした目をしていないからだという。
ここは人が多いし、黒崎が目立っている。こそこそと小声で聞いたのは、悠人から笑われたくないからだ。日頃から苛めているから、ここぞとばかりにやり返してくる。
「もう普通になったよ……」
「しばらく続く。いつものことだ。もっとしたくなる」
「腰を撫でるなよ……」
「痴漢と言ってみろ。ケツだ、ケツ」
「そういう言い方はやめたんだ。咄嗟に出て来るから」
「馴染んだな。いいのか悪いのか」
また寂しそうな顔をしている。外での話し方を教え込んだくせに、いざ出来るようになったら嫌なのか?その答えはあっさり返って来た。その通りだと。
呆れて返す言葉がなくて、天井を仰いだ。色とりどりの風船が浮かんでいる。バレンタインらしく、赤や白、茶色がある。それ以外にも、グリーン、水色、黄色もある。
この会場のラフな構成を、黒崎が考えた。スケッチブックに描いていたのは、おとぎの国みたいな構成だった。バレンタインだからといって、他と同じイメージでなくてもいいそうだ。
「うひゃひゃ。俺の影響を受けたの?お世辞でもいいからさ」
「そのとおりだ。俺も成長しただろう?この風船程度に留まっておけ」
「はいはい。飛んでいかないよ。……そっか。なるほど」
外とは違って全てを回収できるから、万一にもどこかへ飛ばされない。その分だけ迷惑をかけないから、思う存分に、おとぎの国のように飾れたというわけだ。こういう面も黒崎らしい。
「”会場の物が倒れて怪我をすれば、せっかくの思い出に水を差す”。そう話していたことがあったね。俺が怪我をした結婚式のレストランでも、同じことを言ったよ?」
「そうだったか?もう忘れた」
気にしているじゃないか。左手にキスをして頬ずりまで始めた。人目を気にせずにやったから、驚いて顔が熱くなってしまった。
「ヒョーー……」
そう小声でつぶやくと、朝陽の姿を見つけた。どうも、心もとない様子だ。友達が一緒ではないからだろう。
「黒崎さん。声を掛けてくるよ。余計なお世話をするために」
「ああ、頼む。ただな。お前のことを妬んでいるようだ。……気づいていたのか?」
「うん、嫌われているみたい。二葉から謝り倒されるぐらい。……デビューステージの時も、握手してくれなくって。少し寂しいけど、悠人もいるし。あんたも。俺も一人じゃ行動できないタイプだから、気持ちが分かるよ……」
朝陽の元へ行くと、黒崎もやって来た。あの時の社員達に謝らなくていいから、手伝いをすると声を掛けて来いと。朝陽は嫌がる様子もない。
「グレーのスーツを着た男性に声をかけろ。……覚えているだろう?お前を二葉の平手打ちから庇ってくれたそうだな?」
「すみませんでした!……はい。先に謝ります」
「”枝川幸也さん”だ。ここの運営指揮を取っている」
「はい!行ってきます」
「……ああ、南波か。どうした?」
「……っ」
向こうへ振り返る手前に、朝陽に俺に向かって舌打ちする仕草をされた。黒崎が話しかけられたタイミングで。
(まだダメか……。胸が痛かったよ……)
これも俺の成長だと知った。いいのか悪いのかは別として。朝陽に嫌われているのが分かり、今でも続いている。嫌われたくないのにな。そう思ったからだ。
ここは人が多いし、黒崎が目立っている。こそこそと小声で聞いたのは、悠人から笑われたくないからだ。日頃から苛めているから、ここぞとばかりにやり返してくる。
「もう普通になったよ……」
「しばらく続く。いつものことだ。もっとしたくなる」
「腰を撫でるなよ……」
「痴漢と言ってみろ。ケツだ、ケツ」
「そういう言い方はやめたんだ。咄嗟に出て来るから」
「馴染んだな。いいのか悪いのか」
また寂しそうな顔をしている。外での話し方を教え込んだくせに、いざ出来るようになったら嫌なのか?その答えはあっさり返って来た。その通りだと。
呆れて返す言葉がなくて、天井を仰いだ。色とりどりの風船が浮かんでいる。バレンタインらしく、赤や白、茶色がある。それ以外にも、グリーン、水色、黄色もある。
この会場のラフな構成を、黒崎が考えた。スケッチブックに描いていたのは、おとぎの国みたいな構成だった。バレンタインだからといって、他と同じイメージでなくてもいいそうだ。
「うひゃひゃ。俺の影響を受けたの?お世辞でもいいからさ」
「そのとおりだ。俺も成長しただろう?この風船程度に留まっておけ」
「はいはい。飛んでいかないよ。……そっか。なるほど」
外とは違って全てを回収できるから、万一にもどこかへ飛ばされない。その分だけ迷惑をかけないから、思う存分に、おとぎの国のように飾れたというわけだ。こういう面も黒崎らしい。
「”会場の物が倒れて怪我をすれば、せっかくの思い出に水を差す”。そう話していたことがあったね。俺が怪我をした結婚式のレストランでも、同じことを言ったよ?」
「そうだったか?もう忘れた」
気にしているじゃないか。左手にキスをして頬ずりまで始めた。人目を気にせずにやったから、驚いて顔が熱くなってしまった。
「ヒョーー……」
そう小声でつぶやくと、朝陽の姿を見つけた。どうも、心もとない様子だ。友達が一緒ではないからだろう。
「黒崎さん。声を掛けてくるよ。余計なお世話をするために」
「ああ、頼む。ただな。お前のことを妬んでいるようだ。……気づいていたのか?」
「うん、嫌われているみたい。二葉から謝り倒されるぐらい。……デビューステージの時も、握手してくれなくって。少し寂しいけど、悠人もいるし。あんたも。俺も一人じゃ行動できないタイプだから、気持ちが分かるよ……」
朝陽の元へ行くと、黒崎もやって来た。あの時の社員達に謝らなくていいから、手伝いをすると声を掛けて来いと。朝陽は嫌がる様子もない。
「グレーのスーツを着た男性に声をかけろ。……覚えているだろう?お前を二葉の平手打ちから庇ってくれたそうだな?」
「すみませんでした!……はい。先に謝ります」
「”枝川幸也さん”だ。ここの運営指揮を取っている」
「はい!行ってきます」
「……ああ、南波か。どうした?」
「……っ」
向こうへ振り返る手前に、朝陽に俺に向かって舌打ちする仕草をされた。黒崎が話しかけられたタイミングで。
(まだダメか……。胸が痛かったよ……)
これも俺の成長だと知った。いいのか悪いのかは別として。朝陽に嫌われているのが分かり、今でも続いている。嫌われたくないのにな。そう思ったからだ。
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