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13時半。
もうすぐうちの最寄り駅へ到着すると、ノアから電話が入った。彼らを迎えに行くために、俺達も散歩をしている。昔からある街だからか、散歩をしているおじさんと犬も、まったり感がある。もちろん俺達もだ。
ノアとバーテルスさんはこの辺りへ来るのは初めてだし、興味があると話していた。それはそのはずで、昔ながらの大きな商店街と、タワービルが建っているという、ごちゃまぜ感のある場所だ。子供時代に住んでいたドイツの街並みに似ているそうだ。
さっき悠人からラインが入った。おばあさんの命日でお墓参りに行き、その帰り道で通りかかった渋谷での、4面の大型ビジョンを映した動画も送られて来た。車の中から撮影したそうだ。そこではTDDのPV映像が流れていて、観ている人達から久弥コールが起きていた。今日が初日で、明後日まで流れると聞いている。
何年先かは分からないが、久弥は今回で最後のバンド活動になる。ソロ活動も。それを知っているファンが集まったのだと、長谷部さんからも連絡が来ていた。
近くの木陰で立ち止まり、黒崎に動画を見せると感心した様子だった。ここまで反響があるのかと。ファンの声が自然と揃い、練習なしで広がっている。まるでコンサート会場のようだ。さっそく悠人に電話をかけた。ざわざわとした様子と、誰かの名前を呼んでいる声が聞こえてきた。
「もしもし。聞こえるー?音を上げるね。『……ヒーサーヤ!ヒーサーヤ。ナツキ、ユート、……親愛なる雫たちへーー、トゥーー、ディア、ドロップスーー!』」
「すごいね!」
「俺もジーンときたよーー」
「実際にモニターを観たいなあ」
「そうだよねーー」
観に行きたいが、久弥の人気から、騒ぎが起きるといけないからと、止められている。悠人は帽子をかぶって、車の中から少しの時間だけ撮影した。そして、信号が青になったそうで、車が発進し、電話を切った。さっそく黒崎に報告した。
「お義父さんに観に行ってもらうよ。手持ち無沙汰みたいだし。遠藤さんが近所でよかったよ。これからは、アーティスト支援を手伝う仕事ができるんだし」
「静かにしていられない人だ。いい人材が出て来るだろう」
黒崎隆個人としての活動だ。ジャンル問わずに、IKU主催のコンテストや新人発掘チームで見つけた、アーティストの卵たちを支援する。
(みんなの笑っている顔が見たいのか。俺と悠人のことも笑わそうとするもんなあ)
お義父さんは音楽好きなのだと知った。黒崎や晴海さん、一貴さんはクリエイティブな人だ。きっとそうだろうとは思っていた。
お義父さんが若い頃の黒崎家では、跡取り息子は芸術をするなと言いつけられた。ただし、娘は自由に習えた。踊り、華道、ピアノ、洋裁などだ。嫌だけれど、習わされた人もいるに違いない。
「黒崎さんの子供時代も同じ感じだった?聖河さんは習えなかったって話していたんだ」
「おそらく同じだ。ピアノは、俺が習いたいと言って駄々をこねたそうだ」
「なるほど。鉄の意志だもんね。実家はね。おじいちゃんの家だと……。あ、やめておこうっと」
「……こら、何を考えている?」
「ウヘヘ。ごめんね」
中山の祖父母のことを思い出した。万理の事件が起きた後、祖父母と両親が疎遠になった。一方的に母が責められたからだ。父が跳ねつけて会わなくなり、引っ越しをしたことで遠い存在になった。
この10年間では、2回しか会っていない。父はひとり息子であり、従兄弟が兄弟がわりだった。黒崎と出会った結婚式は、唯一仲のいい家族のものだった。
もうすぐうちの最寄り駅へ到着すると、ノアから電話が入った。彼らを迎えに行くために、俺達も散歩をしている。昔からある街だからか、散歩をしているおじさんと犬も、まったり感がある。もちろん俺達もだ。
ノアとバーテルスさんはこの辺りへ来るのは初めてだし、興味があると話していた。それはそのはずで、昔ながらの大きな商店街と、タワービルが建っているという、ごちゃまぜ感のある場所だ。子供時代に住んでいたドイツの街並みに似ているそうだ。
さっき悠人からラインが入った。おばあさんの命日でお墓参りに行き、その帰り道で通りかかった渋谷での、4面の大型ビジョンを映した動画も送られて来た。車の中から撮影したそうだ。そこではTDDのPV映像が流れていて、観ている人達から久弥コールが起きていた。今日が初日で、明後日まで流れると聞いている。
何年先かは分からないが、久弥は今回で最後のバンド活動になる。ソロ活動も。それを知っているファンが集まったのだと、長谷部さんからも連絡が来ていた。
近くの木陰で立ち止まり、黒崎に動画を見せると感心した様子だった。ここまで反響があるのかと。ファンの声が自然と揃い、練習なしで広がっている。まるでコンサート会場のようだ。さっそく悠人に電話をかけた。ざわざわとした様子と、誰かの名前を呼んでいる声が聞こえてきた。
「もしもし。聞こえるー?音を上げるね。『……ヒーサーヤ!ヒーサーヤ。ナツキ、ユート、……親愛なる雫たちへーー、トゥーー、ディア、ドロップスーー!』」
「すごいね!」
「俺もジーンときたよーー」
「実際にモニターを観たいなあ」
「そうだよねーー」
観に行きたいが、久弥の人気から、騒ぎが起きるといけないからと、止められている。悠人は帽子をかぶって、車の中から少しの時間だけ撮影した。そして、信号が青になったそうで、車が発進し、電話を切った。さっそく黒崎に報告した。
「お義父さんに観に行ってもらうよ。手持ち無沙汰みたいだし。遠藤さんが近所でよかったよ。これからは、アーティスト支援を手伝う仕事ができるんだし」
「静かにしていられない人だ。いい人材が出て来るだろう」
黒崎隆個人としての活動だ。ジャンル問わずに、IKU主催のコンテストや新人発掘チームで見つけた、アーティストの卵たちを支援する。
(みんなの笑っている顔が見たいのか。俺と悠人のことも笑わそうとするもんなあ)
お義父さんは音楽好きなのだと知った。黒崎や晴海さん、一貴さんはクリエイティブな人だ。きっとそうだろうとは思っていた。
お義父さんが若い頃の黒崎家では、跡取り息子は芸術をするなと言いつけられた。ただし、娘は自由に習えた。踊り、華道、ピアノ、洋裁などだ。嫌だけれど、習わされた人もいるに違いない。
「黒崎さんの子供時代も同じ感じだった?聖河さんは習えなかったって話していたんだ」
「おそらく同じだ。ピアノは、俺が習いたいと言って駄々をこねたそうだ」
「なるほど。鉄の意志だもんね。実家はね。おじいちゃんの家だと……。あ、やめておこうっと」
「……こら、何を考えている?」
「ウヘヘ。ごめんね」
中山の祖父母のことを思い出した。万理の事件が起きた後、祖父母と両親が疎遠になった。一方的に母が責められたからだ。父が跳ねつけて会わなくなり、引っ越しをしたことで遠い存在になった。
この10年間では、2回しか会っていない。父はひとり息子であり、従兄弟が兄弟がわりだった。黒崎と出会った結婚式は、唯一仲のいい家族のものだった。
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