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礼拝堂の鐘の音を聴きながら、黒崎というすけべじじいと、追いかけごっこをしている。駐車場へ向かう間、距離を取って歩いているわけだ。さっきのお仕置きのつもりだ。車の中で一緒になるし、家の中では密着するに決まっているから、今のうちにだ。からかうように振り返って手を振った。
「黒崎さーん。こっちだよー!」
「こら。走るな」
「走っていないよ~。俺の足が速いんだってば」
「同じことだ。そろそろやめておけ」
黒崎が本気になれば、すぐに追いついて来る。その証拠に、どんどん距離が縮まって行った。歩くスピードではかなわない。あっという間に追いつかれそうになり、さらに距離を取った。そこで、また追いかけごっこの状態になった。
「そろそろ息が上がる頃だ。庭を散歩したくないのか?」
「するよ。日課だもん。あんたがいるときは」
「今日は家の中にいろ。外に出してやらない」
「意地悪を言うなよ。ネギを採って来たいもん。いいじゃん。今日は元気なんだよー」
「疲れただろう。こっちに来い」
「捕まえてみろよ~」
「なんだと?」
「ちょっと待って。早過ぎるよ?どういうことだよ?わああ~」
歩いているはずなのに、そう見えないスピードで近づいて来た。それに驚いて面食らっていると、両腕に捕らえられて、黒崎の匂いに包まれた。笑っているような、困っているような。そういう顔をしている。
人通りがないのをいいことに、肩口に頬ずりをした。すっかり温かくなり、上着がいらない。シャツの感触と、しっかりした肩を堪能していると、こめかみにキスをされた。
「機嫌が直ってよかった。帰るぞ」
「あんたが悪いんだよ。キスマークを付けようとするし、珍しくイチャついてくるし。そうするのは、こういう場所にしろよ。ふん」
「……早く来い」
いつものように強引に手を引かれた。駄々をこねるな。走るな。言うことを聞け。ありったけの小言を聞かされながら駐車場へ到着し、車に乗った後、今日の振る舞いの理由を教えてもらった。
俺の上半身を見られるのが引っかかるから、キスマークを付けたそうだ。南里先生は女性なのにと言い返すと、他のスタッフがいるし、可愛いなという目で見られているからだと、恥ずかしげもなく言い切られた。今度は俺の方が呆れる番だ。
「オルガンの時も、同じ理由なのかよ?やたら色々と……」
「三河さんが理由じゃない。目を伏せがちにするな」
「なんだよー?もう……」
黒崎が前を向いたまま、何も話さなくなった。決まりが悪いなら、多分こういう事だろう。黒崎なりに色気を感じて、周りに見せるのが惜しくなった。そうとしか思えない。照れくさいから口を尖らすと、いきなり引っ張られた。それもやるなと言ってあるぞと言いながら。
「ここは俺とあんたしかないだろ。普通にさせてよ」
「家まで理性を保ちたいからだ。脱がされたいのか?」
「へええ?え?マジ。ヒョーー?」
「気のせいだ」
本当に素っ気なくあしらわれて、車が駐車場から出た。目当てであるカツサンドを買った後、この辺りをドライブするのが定番コースだ。しかし、今日は真っ直ぐ帰る。黒崎から誘惑されからだ。
甘い眼差しにクラクラした後、思う存分、ハンカチの下で顔をニヤけさせた。そして、数分後には勘違いだと分かった。真っ直ぐに帰るのは、俺が担当した挿入歌の番組が始まるからだった。
「来週の金曜日じゃないの?黒崎さんが録画セットしていたもん」
「それは動物園の再放送分だ。お前が着ぐるみから驚かされた分だ」
「再放送を撮るなよ~。消してってば」
「俺が観たいからだ。カツサンドを食べたいなら言うことを聞け」
とか言いつつも、信号待ちでは頬に触れたり、唇をつままれたりした。やっぱり誘惑しているじゃないかと、思い切り顔をニヤけさせて我が家へ向かった。
「黒崎さーん。こっちだよー!」
「こら。走るな」
「走っていないよ~。俺の足が速いんだってば」
「同じことだ。そろそろやめておけ」
黒崎が本気になれば、すぐに追いついて来る。その証拠に、どんどん距離が縮まって行った。歩くスピードではかなわない。あっという間に追いつかれそうになり、さらに距離を取った。そこで、また追いかけごっこの状態になった。
「そろそろ息が上がる頃だ。庭を散歩したくないのか?」
「するよ。日課だもん。あんたがいるときは」
「今日は家の中にいろ。外に出してやらない」
「意地悪を言うなよ。ネギを採って来たいもん。いいじゃん。今日は元気なんだよー」
「疲れただろう。こっちに来い」
「捕まえてみろよ~」
「なんだと?」
「ちょっと待って。早過ぎるよ?どういうことだよ?わああ~」
歩いているはずなのに、そう見えないスピードで近づいて来た。それに驚いて面食らっていると、両腕に捕らえられて、黒崎の匂いに包まれた。笑っているような、困っているような。そういう顔をしている。
人通りがないのをいいことに、肩口に頬ずりをした。すっかり温かくなり、上着がいらない。シャツの感触と、しっかりした肩を堪能していると、こめかみにキスをされた。
「機嫌が直ってよかった。帰るぞ」
「あんたが悪いんだよ。キスマークを付けようとするし、珍しくイチャついてくるし。そうするのは、こういう場所にしろよ。ふん」
「……早く来い」
いつものように強引に手を引かれた。駄々をこねるな。走るな。言うことを聞け。ありったけの小言を聞かされながら駐車場へ到着し、車に乗った後、今日の振る舞いの理由を教えてもらった。
俺の上半身を見られるのが引っかかるから、キスマークを付けたそうだ。南里先生は女性なのにと言い返すと、他のスタッフがいるし、可愛いなという目で見られているからだと、恥ずかしげもなく言い切られた。今度は俺の方が呆れる番だ。
「オルガンの時も、同じ理由なのかよ?やたら色々と……」
「三河さんが理由じゃない。目を伏せがちにするな」
「なんだよー?もう……」
黒崎が前を向いたまま、何も話さなくなった。決まりが悪いなら、多分こういう事だろう。黒崎なりに色気を感じて、周りに見せるのが惜しくなった。そうとしか思えない。照れくさいから口を尖らすと、いきなり引っ張られた。それもやるなと言ってあるぞと言いながら。
「ここは俺とあんたしかないだろ。普通にさせてよ」
「家まで理性を保ちたいからだ。脱がされたいのか?」
「へええ?え?マジ。ヒョーー?」
「気のせいだ」
本当に素っ気なくあしらわれて、車が駐車場から出た。目当てであるカツサンドを買った後、この辺りをドライブするのが定番コースだ。しかし、今日は真っ直ぐ帰る。黒崎から誘惑されからだ。
甘い眼差しにクラクラした後、思う存分、ハンカチの下で顔をニヤけさせた。そして、数分後には勘違いだと分かった。真っ直ぐに帰るのは、俺が担当した挿入歌の番組が始まるからだった。
「来週の金曜日じゃないの?黒崎さんが録画セットしていたもん」
「それは動物園の再放送分だ。お前が着ぐるみから驚かされた分だ」
「再放送を撮るなよ~。消してってば」
「俺が観たいからだ。カツサンドを食べたいなら言うことを聞け」
とか言いつつも、信号待ちでは頬に触れたり、唇をつままれたりした。やっぱり誘惑しているじゃないかと、思い切り顔をニヤけさせて我が家へ向かった。
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