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副社長室のドアの前に立った。営業企画部のシンプルな内装と比べて、重厚さがある。整ったカーペットと、手入れがされた年代物のドアノブがある。
明日から黒崎が過ごす部屋だ。勿体ないから内装を変えないと話していたのは、本心だろうか?
ここを入る前に、どっちの意見を通すのかを決めておこう。俺達はお義父さんに就任式に出てもらいたい。しかし、お義父さんはそうではない。無理はさせたくないものの、寂しいと思っている。
「最後まで、すがりつきたくないから、出席したくないのかな?純白さんは辞める決断が出来たから、退任式は笑顔だったんだよね……。お義父さんも。何か約束をしたのかな?」
「……していないよ。純白さんは、あっさりと別の道を選んだ。急にこの業界から去ったわけじゃないよ。サエキ酒造が会社を設立する時に、純白さんは関わっている」
「だから、お義父さんが、久弥の小さい頃を知っていたんだねー。遊びに来ていたって話していたんだ」
「……黒崎ホールディングスとの提携が決まった時、感慨深そうにしていた。純白さんはサエキさんで一年間やった後、アーティストの支援活動に入った。……隆さんも支援活動を始めた。純白さんにすがりついている。そう思わないか?」
「悠人が俺達に抱きつく意味と、同じじゃないかな?大好きだから、抱きつくんだよ。黒崎製菓のことも、大好きなんだよね?」
「……どうだろうね?」
これで答えは決まった。就任式に出てもらたい。答えがどっちであろうと意見を変えないが、選んだものを応援する。そう心構えをしてドアを開くと、思ったよりも軽くて、転びそうになった。
「わあああ~!……ドアを直したの?」
「ああ。軽めの物に直された。黒崎副社長に」
「勿体ないって話していたんだよ?毎日使うからか~」
「ははは。本当にそうだったか……」
部屋へ入るなり、冗談で口にした話と同じ光景が待ち受けていた。紳士的な2人であり、しっとりした雰囲気と時間が流れていたはずなのに、お互いが眉間に皺を寄せている。
お義父さんには元気を出してもらいたいが、黒崎まで復活することはない。ここは大人として引き下がり、優しい息子であってほしい。
そもそも言い合いをするネタがないはずだ。家じゃあるまいし、副社長室へ来てまで争う内容があるのか?
まだ未熟者だと発破をかけられても、強がりの照れ隠しだと分かっているはずだ。はいはいと頷き、お父さんには勝てません、機嫌を直してねと言う。そう持っていくといい。常日頃から教えていることだ。
「黒崎さんっ。カッコよく、部屋から出させてよ」
「そのつもりだ。何も言っていない。常識的な範囲の話だった」
「喧嘩になっているじゃん。もうー、どんな話をしたんだよ?」
お義父さんからの、今後の仕事への説教かな?常務取締役へ就く前にも、似たような光景があった。あの時よりもずっと距離が近いし、丸わかりの感情表現をしている。遠慮が無くても、黒崎には一歩引いてもらいたい。こういう時だけは。
「お父さん。俺の方からも謝るよ。年の功でアドバイスをしてくれたんだよね?分かっているけど、まだガキだからさ~、ズバリ指摘されて悔しいんだよ。後から直していったし、本人も良かったって、話したことがあるんだよ?」
「どんな内容だい?」
「威圧感を和らげる為に、クッション言葉を使えっていう話だったよ。あとはねー、”ありがとう”って、毎回、最後に付け加えるんだ。それを意識すればいい。自然と身に着くからね。おかげで部下に恵まれて、仕事がしやすくなったはずなんだ。ねえ?黒崎さん?」
「そうだったか?」
「言われたから改善したんだよね?いつ頃か知らないけど」
深川さんが秘書室からお茶を受け取り、カステラを配ってくれた。君は仲裁してくれと苦笑いをしている。
明日から黒崎が過ごす部屋だ。勿体ないから内装を変えないと話していたのは、本心だろうか?
ここを入る前に、どっちの意見を通すのかを決めておこう。俺達はお義父さんに就任式に出てもらいたい。しかし、お義父さんはそうではない。無理はさせたくないものの、寂しいと思っている。
「最後まで、すがりつきたくないから、出席したくないのかな?純白さんは辞める決断が出来たから、退任式は笑顔だったんだよね……。お義父さんも。何か約束をしたのかな?」
「……していないよ。純白さんは、あっさりと別の道を選んだ。急にこの業界から去ったわけじゃないよ。サエキ酒造が会社を設立する時に、純白さんは関わっている」
「だから、お義父さんが、久弥の小さい頃を知っていたんだねー。遊びに来ていたって話していたんだ」
「……黒崎ホールディングスとの提携が決まった時、感慨深そうにしていた。純白さんはサエキさんで一年間やった後、アーティストの支援活動に入った。……隆さんも支援活動を始めた。純白さんにすがりついている。そう思わないか?」
「悠人が俺達に抱きつく意味と、同じじゃないかな?大好きだから、抱きつくんだよ。黒崎製菓のことも、大好きなんだよね?」
「……どうだろうね?」
これで答えは決まった。就任式に出てもらたい。答えがどっちであろうと意見を変えないが、選んだものを応援する。そう心構えをしてドアを開くと、思ったよりも軽くて、転びそうになった。
「わあああ~!……ドアを直したの?」
「ああ。軽めの物に直された。黒崎副社長に」
「勿体ないって話していたんだよ?毎日使うからか~」
「ははは。本当にそうだったか……」
部屋へ入るなり、冗談で口にした話と同じ光景が待ち受けていた。紳士的な2人であり、しっとりした雰囲気と時間が流れていたはずなのに、お互いが眉間に皺を寄せている。
お義父さんには元気を出してもらいたいが、黒崎まで復活することはない。ここは大人として引き下がり、優しい息子であってほしい。
そもそも言い合いをするネタがないはずだ。家じゃあるまいし、副社長室へ来てまで争う内容があるのか?
まだ未熟者だと発破をかけられても、強がりの照れ隠しだと分かっているはずだ。はいはいと頷き、お父さんには勝てません、機嫌を直してねと言う。そう持っていくといい。常日頃から教えていることだ。
「黒崎さんっ。カッコよく、部屋から出させてよ」
「そのつもりだ。何も言っていない。常識的な範囲の話だった」
「喧嘩になっているじゃん。もうー、どんな話をしたんだよ?」
お義父さんからの、今後の仕事への説教かな?常務取締役へ就く前にも、似たような光景があった。あの時よりもずっと距離が近いし、丸わかりの感情表現をしている。遠慮が無くても、黒崎には一歩引いてもらいたい。こういう時だけは。
「お父さん。俺の方からも謝るよ。年の功でアドバイスをしてくれたんだよね?分かっているけど、まだガキだからさ~、ズバリ指摘されて悔しいんだよ。後から直していったし、本人も良かったって、話したことがあるんだよ?」
「どんな内容だい?」
「威圧感を和らげる為に、クッション言葉を使えっていう話だったよ。あとはねー、”ありがとう”って、毎回、最後に付け加えるんだ。それを意識すればいい。自然と身に着くからね。おかげで部下に恵まれて、仕事がしやすくなったはずなんだ。ねえ?黒崎さん?」
「そうだったか?」
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深川さんが秘書室からお茶を受け取り、カステラを配ってくれた。君は仲裁してくれと苦笑いをしている。
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