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19-17(黒崎視点)
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これからTDDによる、80年代の楽曲、誘惑ステージが始まろうとしている。今夜踊ってもらえませんか?その囁き声がマイクを通して響き渡り、夏樹からの視線を浴びた。ドラム音が鳴り響き、イントロが始まった。
この会場へ入った直後のことを思い出した。ピアノ演奏を終えた後、深川さんと合流して後方の出入口から入ると、一斉に拍手で迎えられた。
よく俺達に気づいたものだと驚いたが、その理由を枝川から聞かされて納得した。ステージにいる桜木から枝川へ合図が送られて、上手くタイミングが合ったのが真相だった。すると、深川さんが残念だと苦笑した。本気の発言だろう。
「桜木君を幹部候補として育てていたがね。本人の挑戦を応援したい」
「まだ決定していないぞ?」
「うちが魅力的じゃないのか。ははは」
「本人に聞いてみようか」
5月に入り、桜木からTDDのメンバー加入の相談を受けた。就任式の翌日、IKU側から人事部へ連絡が入り、副社長へ繋がれた。TDDのメンバーとして打診したこと、本人が迷っているのは、社の方針を心配してのことだと。
社内にて検討した結果、メンバーへの正式決定までの期間は、社員としての身分を保証することになった。休日や有給休暇を利用して活動する。
黒崎製菓グループ内の反発は、表面上では起きなかった。アーティスト支援へ進み始めて、実際に成果が出ている。
父がインターン参加を勧めたのが、桜木が黒崎製菓に入社するきっかけだった。欲しい人材であり、早瀬と共に、俺にとって片腕的な存在になるはずだと話していた。枝川とのコンビが解消されるには痛手だ。広報へ推したのは最近の話だ。
「いつまでも同じではいられない。今回に合った歌詞だね」
「君の人生が変化する。最近、夏樹とクルクル回っていない。……ああ、聞き流してくれ」
深川さん相手に気が緩んでしまった。さっそくさっきの演出を持ち出して笑い始めた。夏樹が俺のそばに現われたかのようになったことだ。恥ずかしくないわけがない。
ピアノ演奏を引き受けたのは、深川さんから発破をかけられた結果だが、引き受ける前に踏み留まった。満足して夢から覚めるのが嫌だった。それを踏まえてステージに立った後、妙なこだわりを手放すことができた。
夏樹へ聴かせているイメージで演奏していると、本人がそばにいた。ガラス壁ごしではあったが、十分に臨場感を味わうことが出来た。顔を張り付かせ、慌てふためき、悠人と大和の反応の違いも見せられた。
夏樹が両目を輝かせ、泣きそうな顔をした。そして、両目を見開き、真っ赤な顔をした。必死になって壁にすがりついた結果、頬を押し付けていた。表情の変化にも笑いが起きたが、気づいていないだろう。
今はこういう状況だ。バンドメンバーと共にステージに立ち、招待客を魅了している。囁くようなブレスに会場内が沸き立ち、ふいに視線を向けられる度に、胸の鼓動が高鳴った。
朝起きた後から今の瞬間まで、同じ佇まいをしていない。このギャップを見せられ続けているが、慣れることがない。
常に変化している姿を見て、あるこだわりを手放せた。49歳で引退することをだ。それを脇に置こう。深川さんへ声を掛けて、控え室へ移動した。あの子と、TDDのメンバーを迎えるために。
この会場へ入った直後のことを思い出した。ピアノ演奏を終えた後、深川さんと合流して後方の出入口から入ると、一斉に拍手で迎えられた。
よく俺達に気づいたものだと驚いたが、その理由を枝川から聞かされて納得した。ステージにいる桜木から枝川へ合図が送られて、上手くタイミングが合ったのが真相だった。すると、深川さんが残念だと苦笑した。本気の発言だろう。
「桜木君を幹部候補として育てていたがね。本人の挑戦を応援したい」
「まだ決定していないぞ?」
「うちが魅力的じゃないのか。ははは」
「本人に聞いてみようか」
5月に入り、桜木からTDDのメンバー加入の相談を受けた。就任式の翌日、IKU側から人事部へ連絡が入り、副社長へ繋がれた。TDDのメンバーとして打診したこと、本人が迷っているのは、社の方針を心配してのことだと。
社内にて検討した結果、メンバーへの正式決定までの期間は、社員としての身分を保証することになった。休日や有給休暇を利用して活動する。
黒崎製菓グループ内の反発は、表面上では起きなかった。アーティスト支援へ進み始めて、実際に成果が出ている。
父がインターン参加を勧めたのが、桜木が黒崎製菓に入社するきっかけだった。欲しい人材であり、早瀬と共に、俺にとって片腕的な存在になるはずだと話していた。枝川とのコンビが解消されるには痛手だ。広報へ推したのは最近の話だ。
「いつまでも同じではいられない。今回に合った歌詞だね」
「君の人生が変化する。最近、夏樹とクルクル回っていない。……ああ、聞き流してくれ」
深川さん相手に気が緩んでしまった。さっそくさっきの演出を持ち出して笑い始めた。夏樹が俺のそばに現われたかのようになったことだ。恥ずかしくないわけがない。
ピアノ演奏を引き受けたのは、深川さんから発破をかけられた結果だが、引き受ける前に踏み留まった。満足して夢から覚めるのが嫌だった。それを踏まえてステージに立った後、妙なこだわりを手放すことができた。
夏樹へ聴かせているイメージで演奏していると、本人がそばにいた。ガラス壁ごしではあったが、十分に臨場感を味わうことが出来た。顔を張り付かせ、慌てふためき、悠人と大和の反応の違いも見せられた。
夏樹が両目を輝かせ、泣きそうな顔をした。そして、両目を見開き、真っ赤な顔をした。必死になって壁にすがりついた結果、頬を押し付けていた。表情の変化にも笑いが起きたが、気づいていないだろう。
今はこういう状況だ。バンドメンバーと共にステージに立ち、招待客を魅了している。囁くようなブレスに会場内が沸き立ち、ふいに視線を向けられる度に、胸の鼓動が高鳴った。
朝起きた後から今の瞬間まで、同じ佇まいをしていない。このギャップを見せられ続けているが、慣れることがない。
常に変化している姿を見て、あるこだわりを手放せた。49歳で引退することをだ。それを脇に置こう。深川さんへ声を掛けて、控え室へ移動した。あの子と、TDDのメンバーを迎えるために。
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