上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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19-18(夏樹視点)

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 宴たけなわ。その言葉が当てはまる状況の中、パーティーがお開きになった。もっと過ごしたいと名残惜しさを残して帰って行く人たちを、控え室の窓から眺めた。さっきまで、招待客へのお見送りをやっていた。招待客からのリクエストで、百面相を披露した俺が代表した。

 悠人も出ると言ったが、大和に付き添ってもらっている。介抱が上手だし、精神的に揺れ動いている人を落ち着かすのが早い。そばにいるだけで安心する。

 それはステージが終わり、控え室へ戻った直後のことだった。大和が床にしゃがみ込み、過呼吸を起こしたような状態になった。緊張感が解けたことと、前のバンドでの体験が、フラッシュバックしたからだ。

 今までほとんど話したことが無かったし、今日も話す間がなかった。本人が謝ろうとするのを、皆で止めた。乗り越えて戻って来たなら、それでいいじゃないかと。久弥も活動を再開させた人だ。聡太郎もスタートした。

 すっかり落ち着いた大和を囲み、アイス珈琲を飲んだ。ほうじ茶、ミルク、ココア。ホテル内だから選び放題だが、普段通りにしようと、悠人の指示に従った。かつ、全員が同じ珈琲にした。

 すぐに落ち着きを取り戻して、大和が笑顔になった。須賀部長が会場内に残っているが、本人の言うとおりにして、具合が悪くなったことを知らせなかった。前のバンドを脱退する時になり、何があったのか全容を打ち明けたそうだ。フラッシュバックのことも話したと聞いている。しかし、心配をかけたくないと大和が言った。今、悠人が大和の背中をさすっている。

「ふむふむ。繊細なんだね。夏樹もそうだよ。……俺は図太い方だよ。本番に弱いけど。桜木さんも図太いけど、めちゃくちゃ優しい。すがって泣くなら、一番いい人だよ」
「ゆうとー。うん。須賀君だよ?大和の名字は……」
「げええええっ。なつきー。ボケた自覚がないだろ?」
「すがって……。ごめん。聞き間違えたよ」

 こういう時に余計なことを口にした。黙ったままでいると、普段通りにしろと言われてしまった。どっちなんだよ?真面目に聞いたのにと言い返すと、笑いが起こった。まあいいか。今夜の構成と結果を記録すると、笑いと関心が寄せられた。それこそ普段通りなのに。

 聡太郎のテーピングを、伊吹が手伝った。バンド加入の意思が固まって告知すると、批難してくる人が出るのは予想してある。久弥の代わりになれるのか?と。

 そういうわけで、その手前に、伊吹という変な社長が久弥とコラボすれば、そっちに注目が集まる。聡太郎へのクッションになるだろうと、伊吹から提案を受けたそうだ。久弥から聞いた。もう一度やるのを応援するぞという、メッセージでもある。

 TDDへの加入の返事は、一か月後だ。大和の加入は決定した。さっそく契約書を交わす日程を決めて、俺たちも同席する。俺が思い浮かんだのは、3月までTDDで活動した後、新しいバンドとして出発したいという提案だ。バンド名は同じで良いと思う。久弥がそれをメモに取って、そばにいるマネージャーの蓮司さんに渡した。

「そろそろ帰るぞーー。蓮司君!……よし!」
「お疲れ様でしたーー!」
「お疲れ様でーーす」

 俺達の方も落ち着いたから、帰るとしよう。それぞれが帰り支度を始めて、打ち上げをする約束をして別れた。大和には須賀部長が迎えに来た。久弥が父ちゃんが迎えに来たぞと言ったから、どっと笑いが起こった。大和は嫌がって逃げ出したが、追いつかれていた。

 もちろん俺には黒崎の迎えが来た。帰りに隣の公園へ寄って行こうと提案されて、ワクワクした気分になった。やっと行けるのかと思ったからだ。なぜか意地悪そうに笑っていたが、追及せずに会場を出た。
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