上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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 黒崎の背中から降りて彼の腕を引っ張り、噴水のそばのベンチへ促した。せっかくだから、公園のマップを調べておきたい。黒崎の方へマップのページを開いたスマホを向けて、遊びに来ると約束させた。

「今度ガーデンフェスがあるのか。プラセルが協賛しているじゃないか」
「綺麗なものをメインに投資したそうだよ。動物園のペリカン広場も協賛したんだって。あ、ここにテニスコートがあるよ?俺たちには無縁だね~。……副社長になっても、ゴルフをやらないんだね?」
「黒崎製菓の部長クラス以上は禁止だ。グループ内での交流も同じだ」
「……特別親しくなるなってこと?」
「その通りだ。新体制でも方針は変えない。休養も必要だ」
「取り巻いている人が増えるから?」
「その理由も大きい」
「仲の良い人が増えなくなるよ」
「そういう顔をするな。俺だけが通って来た道でも、環境でもない」
「うん。寒いだろ?こうしていようか~」

 歩いて来たから寒くない。座ったままで、両肩へ腕を回して抱きついた。

 黒崎は副社長のポストに就き、新しい人間関係が浮き上がって来た。大して驚かない。5月に、グループ内の派閥争いを始めとする話を教えてくれた。今回の人事で、一旦は静かになったそうだ。そして、大学時代からの取り巻きという存在があることも知った。

 本人の意思とは関係ない。いちいち顔色を窺がわれて、パーティーや遊びの誘いを受けたそうだ。黒崎が気に入るように手配されたものだ。これでは友達とは言えないし、気が抜けなかったと話してくれた。

 今回の就任で盛り上がり、周囲が賑やかになる。俺の周りもそうなるだろうと、黒崎が言った。いっそう、身を引き締めておく日々が始まる。ただし、落ち着くまでの間だ。

「俺のことは気にするなよ。親戚の他にプラスされたけど、予行演習が出来ているもん」
「少々の騒がしさで留めることを約束する。仕事先にも影響しない。大学内も対策してある。……日下君のことだ。取り巻きグループの、先輩の甥っ子だ」
「そうだと思ったよ。この話を聞いた時にね。……日下はいい奴だよ。だから頼んだんだよね?先輩もいい人じゃないの?そうじゃなきゃ、あんたが近づけるわけがない。お義父さんから紹介された人達は違う意味だから、そんなに息苦しさがないよ。……くしゅん!」
「そろそろ帰るか。もう少し居たいのか?仕方がない……」

 全身が温かくなり、両腕に包み込まれたことが分かった。そして、斜め向かいの花壇の縁に座らされた。ここなら水しぶきが当たらないからだ。すると、耳元で優しい声が響いて、胸が痛くなった。強引さを感じない。

(拓海さんって、こんな感じの人だったのかな……)

 まるで別人のようだ。どうしてこんなことを考えるのだろう。拓海さんと似ているのは嬉しいことだ。黒崎の変化が寂しいからかな?彼の背後には、噴水からの光が見える。ますます雰囲気が変わり、もっと胸が痛くなった。

「自覚のない色気を放っているぞ」
「寂しくて見ているんだよ?」
「心もとない姿をしているからだ。どうしたのか話してみろ」
「あんたが変わったからだよ。……あれ?いつもの黒崎さんに戻ったよね?わざと戻すなよ~っ」

 黒崎が意地悪そうに笑い、いつもの雰囲気に戻った。ポコポコと胸元を叩くと、苦笑しながら両手首を掴まれた。何だか嬉しそうにしている。一方的に拗ねている事を自覚して、大人しくした。じっと見つめていると、目尻や額に唇を押し当てられた。
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