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肩を叩いて背中をさすり、首筋へ顔をうめた。やっぱり熱が高い。寝室で飲ませた方がいいから、ベッドへ戻るように促した。しかし、動こうとしない。両腕を回して頬ずりされた。
「このまま寝ると疲れるよ?」
「見える場所に居てくれ。……甘えている。認める」
「はっきり言うなよ~。ベッドに連れて行けないじゃん。巧妙になって来たね。言い方も優しいし。……スープご飯を食べて、ここで寝てよ」
「駄々をこねなくて済んだ。9時まで寝ておく」
ソファーにごろっと寝転がった。ここで寝ると決めたようだ。黒崎の身体にタオルケットをかけて、テラスのカーテンを引いた。振り返ると、すでに寝息を立てていた。安心しきったような寝顔をしている。
(久しぶりに寝顔を見たなあ。充電が出来ているならよかった……)
先週のことだ。社内事情を知っておきたくて、早瀬さんに電話で聞いた。黒崎からもグループ内の事を聞けたから、教えてくれるだろうと思ってのことだ。早瀬さんからはいいよと返事されて、ストレートに聞かせてくれた。
消耗して疲れているかと心配したら、その反対だよと教えてくれた。黒崎は足を引っ張る人物を静観し、不意打ちでケリを入れて落とすそうだ。それを自然体でやるから、負担になっていない。ただし、理不尽な振る舞いをしないから、グループ内では好かれている。ずいぶんと味方が増えたそうだ。
他にも理由があった。一年前から怖さが増したことで、派閥関係が収まった感があるという。おそらく黒崎不在の酒の席でも、話題に出せない時期があったはずだ。本人へ漏らす人物を警戒してのことだ。
それを聞いて意外だった。元からの温厚な面が、仕事では表に出ていないのだと聞いたからだ。拓海さんと似ているからこそ、”穏やかな黒崎副社長” のイメージを持っていた。それを話すと、早瀬さんが笑って否定した。
(圭一さんが穏やかになったのは、夏樹君と暮らし始めた後からだ。……副社長に就くぐらいだ。マイルドになるわけがない。労わってあげてね。いつもの手作り弁当を食べて、和んでいる)
(そんなに怖いんだね。取り巻きみたいな人達がいる話を聞いたよ)
(それも聞いたのか。……足を引っ張るグループじゃないよ。有利だから従っていた人達だ。その人達は、大学時代に取り巻いていた事を話題に出している程度だ。……圭一さんが振り回されるわけがない。俺もいるから大丈夫だよ)
(ありがとう。お世話になっています)
(どういたしまして)
心配するなと笑っていた。怖いのは元からだし、可愛いとさえ言われているのだという。営業企画部のオフィスではだ。手作り弁当を食べていたからだそうだ。
(お弁当がラッキーアイテムだったのか。それこそ驚いたよ~)
バタバタしているだろうから、毎回、軽くつまめる物にしてあった。それをゆっくり食べて、ウサギのピックを見て微笑んでいるそうだ。自然体でやるから、部署内で笑いが起きている。本人は計算していないし、そもそも気にしていない。
家に帰るとホッとして、気力を充電できると言った。ますます美味しいものを作りたくなる。料理が好きだから、やりがいがある。
「さあ、スープを作ろう。和風か洋風か。黒崎さん……、寝てた」
さっと口を閉じてキッチンへ行こうとすると、名前を呼ばれて振り返った。小さな声のはずなのに、しっかりと耳に届いたから、胸がきゅんとした。夢の中でも俺のことを呼んでいるのかと。
「いつものことか。……夏樹、離れるな。暑いのか。こっちに来いって。ふふん。可愛いなあ~」
しまった。起こしてしまいそうだ。顔が熱くなるのを感じながら、そそくさとキッチンへ入った。
「このまま寝ると疲れるよ?」
「見える場所に居てくれ。……甘えている。認める」
「はっきり言うなよ~。ベッドに連れて行けないじゃん。巧妙になって来たね。言い方も優しいし。……スープご飯を食べて、ここで寝てよ」
「駄々をこねなくて済んだ。9時まで寝ておく」
ソファーにごろっと寝転がった。ここで寝ると決めたようだ。黒崎の身体にタオルケットをかけて、テラスのカーテンを引いた。振り返ると、すでに寝息を立てていた。安心しきったような寝顔をしている。
(久しぶりに寝顔を見たなあ。充電が出来ているならよかった……)
先週のことだ。社内事情を知っておきたくて、早瀬さんに電話で聞いた。黒崎からもグループ内の事を聞けたから、教えてくれるだろうと思ってのことだ。早瀬さんからはいいよと返事されて、ストレートに聞かせてくれた。
消耗して疲れているかと心配したら、その反対だよと教えてくれた。黒崎は足を引っ張る人物を静観し、不意打ちでケリを入れて落とすそうだ。それを自然体でやるから、負担になっていない。ただし、理不尽な振る舞いをしないから、グループ内では好かれている。ずいぶんと味方が増えたそうだ。
他にも理由があった。一年前から怖さが増したことで、派閥関係が収まった感があるという。おそらく黒崎不在の酒の席でも、話題に出せない時期があったはずだ。本人へ漏らす人物を警戒してのことだ。
それを聞いて意外だった。元からの温厚な面が、仕事では表に出ていないのだと聞いたからだ。拓海さんと似ているからこそ、”穏やかな黒崎副社長” のイメージを持っていた。それを話すと、早瀬さんが笑って否定した。
(圭一さんが穏やかになったのは、夏樹君と暮らし始めた後からだ。……副社長に就くぐらいだ。マイルドになるわけがない。労わってあげてね。いつもの手作り弁当を食べて、和んでいる)
(そんなに怖いんだね。取り巻きみたいな人達がいる話を聞いたよ)
(それも聞いたのか。……足を引っ張るグループじゃないよ。有利だから従っていた人達だ。その人達は、大学時代に取り巻いていた事を話題に出している程度だ。……圭一さんが振り回されるわけがない。俺もいるから大丈夫だよ)
(ありがとう。お世話になっています)
(どういたしまして)
心配するなと笑っていた。怖いのは元からだし、可愛いとさえ言われているのだという。営業企画部のオフィスではだ。手作り弁当を食べていたからだそうだ。
(お弁当がラッキーアイテムだったのか。それこそ驚いたよ~)
バタバタしているだろうから、毎回、軽くつまめる物にしてあった。それをゆっくり食べて、ウサギのピックを見て微笑んでいるそうだ。自然体でやるから、部署内で笑いが起きている。本人は計算していないし、そもそも気にしていない。
家に帰るとホッとして、気力を充電できると言った。ますます美味しいものを作りたくなる。料理が好きだから、やりがいがある。
「さあ、スープを作ろう。和風か洋風か。黒崎さん……、寝てた」
さっと口を閉じてキッチンへ行こうとすると、名前を呼ばれて振り返った。小さな声のはずなのに、しっかりと耳に届いたから、胸がきゅんとした。夢の中でも俺のことを呼んでいるのかと。
「いつものことか。……夏樹、離れるな。暑いのか。こっちに来いって。ふふん。可愛いなあ~」
しまった。起こしてしまいそうだ。顔が熱くなるのを感じながら、そそくさとキッチンへ入った。
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