上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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 ソファーが軋む音がした。優しいキスを受け取りながら目を閉じていると、荒くなった息づかいを感じて目を開いた。熱っぽい目と同じく、黒崎の身体が汗ばんできた。

 肩口に頬を寄せると、背中に回された腕に力が入り、身体を引き上げられた。そして、膝の上に座り、肩へ両手を置いてもたれ掛かった。顔を上げて見つめる余裕がないからだ。

 今の黒崎は肉食獣のような空気を纏っていて、視線を捕らえられる度に胸の鼓動が跳ねて、ちっとも落ち着かない。

「……怖いのか?」
「うん……。いつもと違うもん。食べられそうだよ。熱に浮かされて、いきなり……」
「いきなりしない。許可をもらってからだ」
「どこがだよ。黒崎さん……」

 黒崎の身体がソファーの背に深く沈んだ。そのまま抱き寄せられて、腕の中に包み込まれた。耳元で呼ばれた名前の声が優しい。けっして荒っぽいことがされていないが、やっとホッとできた。

「夏樹。こっちを向いてくれ」
「うん……」

 懇願するかのように囁かれた後、甘い痺れが背中に伝わった。やっぱり襲い掛かって来そうだった。わざと空気を醸し出しているのが分かるのは、肩を揺らして笑い出したからだ。こっちはそんな余裕が無いのに。

「優しくしているだろう?そう怖がるな」
「怖いってば。今日はどうしたの?」
「さらけ出せたからだ。嫌な時代の自分のことを。これでも怖ったぞ、お前の反応が。当時はもっとだ」
「そんなに怖がるなよ。雑誌の記事を読んだとき、嬉しいことが書いていたんだ。お弁当の話。どれだけレストランを作りたかったのか知ったよ。嫌うなんて、思うわけないじゃん……」
「お前から怖がられることも、嫌われることも怖かった。今回のことだけじゃない。他にも言えないことをやってきたし、今も同じだ」
「怖がるのをやめられたなら良かった。早瀬さんに話を聞こうとしたのは、初めてじゃないんだ。こういう理由でよかった。……じゃれついて話したのって、俺の為だろ?しんみりした空気の中だと、大泣きしそうだから。やっぱり怖がっているじゃん。うへへ。ん……。あ、待って……」
「待たない。怖がらせないから許して貰えないか?」

 大人扱いしたいと言われた。半分冗談だと思う。普段よりも強い力で、足首を握られた。くるぶしに温かい感触が起きた後、身じろげないことが分かった。

「黒崎さん。もう……」
「綺麗だ……」

 視線だけを向けると、意地悪そうに笑って歯を立てられた。何度も繰りされて声が漏れると、足首を掴んだままで、内ももへ吸いつかれた。片方も同じく掴まれて動けなくなり、身を任せるしかなくなった。

「両手で邪魔をしてみるか?」
「すぐに押さえ込むだろ……。やってみろって?」

 さらに息がかかって足が震えた。あやすように太ももにキスをしながら視線を向けられたから、とっさに顔をそむけた。恥ずかしくて真っ赤になっているからだ。しかし、すでにバレているから、何度も触れては刺激された。
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