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20-17
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こうして羽織ったものを握って言葉を選ぶことしか出来ない。黒崎は何か話したいと思うのに、俺は日頃の口数の多さを発揮できない。
こうしてタオルケットに包まるのは、心の内に閉じこもってOKだという意味合いだろうか?たまにかけ直したり、タオルケット越しに優しく背中を叩かれたりしている。こんなに思いやりのある人が悩んでいたのか。
「親父から聞いたんだが、ママが離婚を決めた時には、倉口とはまだ男女の仲になっていなかったらしい。妊娠が分かった後、黒崎家の中で育てたくなくなった。突発的にだ。出て行く時に俺のことも連れて行こうとしたが、喘息で身体が弱いから、新しい環境に耐えられないだろうと判断したそうだ」
「せめて手紙のやり取りだけでもしたくて、送ってくれたのかな。連れて行けなかったから……」
「そういう内容だと思える。俺の体調のことを心配していた」
離婚後、ママから黒崎へ何度も手紙を送ったが、全て送り返された。黒崎は読んでいなかった。知らなかったからだ。それをまとめて大事に取ってあることを、二葉の方から教えてもらい、黒崎に渡してあった。
「あの手紙には、親父のサインがしてあった。読んだということか」
「それって……。ママが出て行った後、黒崎さん、母方のおじいちゃん達の家へ行ったよね。それが関係しているよ。たぶん」
もしかすると、ここには住んでいないというメッセージだった気がする。ママが新居に選んだ場所は、実家のある方面だ。つまりは黒崎の母方の祖父母の家だ。勘当されているから行き来がなくても、土地勘があるから新居に選んだのだろう。まさか黒崎が暮らしているとは思わなかったと話していた。お義父さんが許すわけがないだろうと思ってのことだ。
「この家に住んでいないって教える為じゃないかな?20歳になった後、あんたの方から会うならOKっていう約束だったんだよね?……それまで待たなくても、そんなに離れていないから、偶然会ったことに出来るだろ?おかしくない。お義父さんが、ママ達の新居の場所を知らなかったと思う?」
「そうだな。親父は知っていただろう。俺に電話を取り次がれなかった時、不在にしていると言われたそうだ。そのままの意味だな……」
「会わせてあげようとしたんだよ。きっとそうだよ。偶然なら、約束を破った事にはならないもん。人の気持ちは教科書通りにはいかない。正しいかそうでないのは、状況で変わるものだよ。……良いか悪いかで判断すると、息子に会うのは悪い事じゃないよね?」
パズルのピースが本来の位置へ移動した。何度も重ねて首をかしげて、この形だろうか?と、他のピースを探していった。数が多い分だけ途中で投げ出したくなったが、根気強く、一枚の絵と向き合い続けた。
まだたくさん残っているし、服の裾が引っかかってバラけてしまう可能性があるが、少しだけで済む。一人で作業するのは大変だ。一人でやらないといけない決まりはない。
「黒崎さん。パズルみたいだと思わない?ずっと一人でやってきたね。お義父さん達も同じかも知れないよ?俺とあんたも、そういう感じがあったし。これは大きな絵だから、一緒に進めて行こうよ。……わいわいがやがや、珈琲とかビールを飲みながら。九条ネギの酢味噌和え、マフィンとかね。……好きなものを食べながら話して、途中で休憩を入れてさ」
自分自身もパズルのピースとして落ち着いた。今回は美味しいものと飲み物を用意する役目をする。黒崎には場を仕切ってもらう。いや、晴海さんがいいだろう。黒崎は口数が少ないからだ。
こうしてタオルケットに包まるのは、心の内に閉じこもってOKだという意味合いだろうか?たまにかけ直したり、タオルケット越しに優しく背中を叩かれたりしている。こんなに思いやりのある人が悩んでいたのか。
「親父から聞いたんだが、ママが離婚を決めた時には、倉口とはまだ男女の仲になっていなかったらしい。妊娠が分かった後、黒崎家の中で育てたくなくなった。突発的にだ。出て行く時に俺のことも連れて行こうとしたが、喘息で身体が弱いから、新しい環境に耐えられないだろうと判断したそうだ」
「せめて手紙のやり取りだけでもしたくて、送ってくれたのかな。連れて行けなかったから……」
「そういう内容だと思える。俺の体調のことを心配していた」
離婚後、ママから黒崎へ何度も手紙を送ったが、全て送り返された。黒崎は読んでいなかった。知らなかったからだ。それをまとめて大事に取ってあることを、二葉の方から教えてもらい、黒崎に渡してあった。
「あの手紙には、親父のサインがしてあった。読んだということか」
「それって……。ママが出て行った後、黒崎さん、母方のおじいちゃん達の家へ行ったよね。それが関係しているよ。たぶん」
もしかすると、ここには住んでいないというメッセージだった気がする。ママが新居に選んだ場所は、実家のある方面だ。つまりは黒崎の母方の祖父母の家だ。勘当されているから行き来がなくても、土地勘があるから新居に選んだのだろう。まさか黒崎が暮らしているとは思わなかったと話していた。お義父さんが許すわけがないだろうと思ってのことだ。
「この家に住んでいないって教える為じゃないかな?20歳になった後、あんたの方から会うならOKっていう約束だったんだよね?……それまで待たなくても、そんなに離れていないから、偶然会ったことに出来るだろ?おかしくない。お義父さんが、ママ達の新居の場所を知らなかったと思う?」
「そうだな。親父は知っていただろう。俺に電話を取り次がれなかった時、不在にしていると言われたそうだ。そのままの意味だな……」
「会わせてあげようとしたんだよ。きっとそうだよ。偶然なら、約束を破った事にはならないもん。人の気持ちは教科書通りにはいかない。正しいかそうでないのは、状況で変わるものだよ。……良いか悪いかで判断すると、息子に会うのは悪い事じゃないよね?」
パズルのピースが本来の位置へ移動した。何度も重ねて首をかしげて、この形だろうか?と、他のピースを探していった。数が多い分だけ途中で投げ出したくなったが、根気強く、一枚の絵と向き合い続けた。
まだたくさん残っているし、服の裾が引っかかってバラけてしまう可能性があるが、少しだけで済む。一人で作業するのは大変だ。一人でやらないといけない決まりはない。
「黒崎さん。パズルみたいだと思わない?ずっと一人でやってきたね。お義父さん達も同じかも知れないよ?俺とあんたも、そういう感じがあったし。これは大きな絵だから、一緒に進めて行こうよ。……わいわいがやがや、珈琲とかビールを飲みながら。九条ネギの酢味噌和え、マフィンとかね。……好きなものを食べながら話して、途中で休憩を入れてさ」
自分自身もパズルのピースとして落ち着いた。今回は美味しいものと飲み物を用意する役目をする。黒崎には場を仕切ってもらう。いや、晴海さんがいいだろう。黒崎は口数が少ないからだ。
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