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すっかり日が暮れている。悠人が遠藤さんの家に遊びに来ていて、早瀬さんが仕事帰りに迎えに来たそうだ。我が家へのお土産は、悠人が作ったカボチャのスープだ。バンバンミックスマックスという調理器具を使ったから、滑らかに仕上がったと得意顔だ。さっそく今夜、食べさせてもらう。
悠人が玄関のウサギを眺めて、怖いと言い出した。早瀬さんまで笑っている。外灯の位置を変えたから、ウサギの顔に影が出来るようになった。そんなに怖いだろうか?
「夏樹が立っている場所から見ると、そうでもないよ。こっちに立ってよ。ウサギ君が、ワルい男になったから」
「どれどれ?へえー、いかつくなったね。影のあるウサギか~。エプロンを着けて可愛くするよ」
まるで今日の話のようだ。角度が変われば印象が異なる。悠人と同じく頷いたところで、黒崎が玄関へ出て来た。今日の話が思い浮かんだものの話題に出せないから、なるべく静かにした。しかし、悠人から顔を覗き込まれた。
「ふむふむ。何か内緒にしている事があるよね?」
「黒崎さんが、エロいことをしたんだ。インターフォンが鳴って助かったよ」
「あのね。知っているよー?裕理さんのお母さん達の話。聞いたんだろ?」
「ええ?」
「夏樹が昼寝している間に、裕理さんが、孝則お父さんから話を聞いたんだよ」
「そうだったんだ……」
お義父さんと早瀬さんの両親との間では、すでに話がされていたそうだ。俺達に話すことを。今ここでは、早瀬さんのことが気になった。3月の渋谷のモニター前に集まった日、バーテルスさんと初対面した。帰るまで2人が話をしていた。すると、早瀬さんが首を振って笑った。
「夏樹君。心配するな。実の父親の名前を知っていた。隆さんから、父親が使っていた楽譜をもらった。サインがしてあった。……実母が勤めていたクラブは、紹介者なしには入れない。黒崎製菓の取引関係者だろうと思ったよ。接待に使っていたからね。……父親はフェリックス・バーテルス氏だ。バーテルス・ビスケットの経営陣の一人だよ。……この家で育っていたら、久弥と蔵之介には出会っていない可能性がある。申し訳ないけど、俺の方は喜びたい。……圭一さん、ごめんね」
「……いや、俺も同じだ。夏樹と悠人君がデビューしていない可能性がある。現時点でだ。……お前が久弥さんとバンドを組んでいなかったなら、悠人君とは出会っていないかも知れない。そういうことだ。余計な話か?」
「話しておいて事後承諾か?最初から変わらないね。俺が9歳の時の、ハロウィンイベントを覚えているか?……もっとお菓子を食べろと強要して、拓海さんから叱られたはずだ。……”ユーリ君のペースがある。なんて子だ!”って。……あの時に初めて、ユーリと呼ばれた。拓海さんからだ。たまたま愛称を付けてくれたと思ったけど、違うみたいだね。ユーリって、小さい頃、拓海さんが呼んでくれていたみたいだ」
「そうだろうな……。あのイベントの時は、お前の緊張を解こうとしたように思える。リッターラグナの合併の時、フェリックス氏からは、えらく腰を低くされた」
「ははは……。悠人、どうしたんだ?」
「昔のハロウィンイベントの写真で、思い出したことがあるんだーー」
悠人が不思議そうな顔をした。ハロウィンイベントで撮った写真の中の拓海さんには、青い石がついた指輪が映っていた。小指につけていたから、仮装の一部かと思ったそうだ。そして、その指輪らしきものを、俺が持っていたのを見たと言い出した。
それはあり得ることだ。お義父さん家には年代物のブローチ類があり、それを磨いて保管する手伝いをしている。その数が多いから、デザインまでは覚えていない。
悠人が玄関のウサギを眺めて、怖いと言い出した。早瀬さんまで笑っている。外灯の位置を変えたから、ウサギの顔に影が出来るようになった。そんなに怖いだろうか?
「夏樹が立っている場所から見ると、そうでもないよ。こっちに立ってよ。ウサギ君が、ワルい男になったから」
「どれどれ?へえー、いかつくなったね。影のあるウサギか~。エプロンを着けて可愛くするよ」
まるで今日の話のようだ。角度が変われば印象が異なる。悠人と同じく頷いたところで、黒崎が玄関へ出て来た。今日の話が思い浮かんだものの話題に出せないから、なるべく静かにした。しかし、悠人から顔を覗き込まれた。
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「黒崎さんが、エロいことをしたんだ。インターフォンが鳴って助かったよ」
「あのね。知っているよー?裕理さんのお母さん達の話。聞いたんだろ?」
「ええ?」
「夏樹が昼寝している間に、裕理さんが、孝則お父さんから話を聞いたんだよ」
「そうだったんだ……」
お義父さんと早瀬さんの両親との間では、すでに話がされていたそうだ。俺達に話すことを。今ここでは、早瀬さんのことが気になった。3月の渋谷のモニター前に集まった日、バーテルスさんと初対面した。帰るまで2人が話をしていた。すると、早瀬さんが首を振って笑った。
「夏樹君。心配するな。実の父親の名前を知っていた。隆さんから、父親が使っていた楽譜をもらった。サインがしてあった。……実母が勤めていたクラブは、紹介者なしには入れない。黒崎製菓の取引関係者だろうと思ったよ。接待に使っていたからね。……父親はフェリックス・バーテルス氏だ。バーテルス・ビスケットの経営陣の一人だよ。……この家で育っていたら、久弥と蔵之介には出会っていない可能性がある。申し訳ないけど、俺の方は喜びたい。……圭一さん、ごめんね」
「……いや、俺も同じだ。夏樹と悠人君がデビューしていない可能性がある。現時点でだ。……お前が久弥さんとバンドを組んでいなかったなら、悠人君とは出会っていないかも知れない。そういうことだ。余計な話か?」
「話しておいて事後承諾か?最初から変わらないね。俺が9歳の時の、ハロウィンイベントを覚えているか?……もっとお菓子を食べろと強要して、拓海さんから叱られたはずだ。……”ユーリ君のペースがある。なんて子だ!”って。……あの時に初めて、ユーリと呼ばれた。拓海さんからだ。たまたま愛称を付けてくれたと思ったけど、違うみたいだね。ユーリって、小さい頃、拓海さんが呼んでくれていたみたいだ」
「そうだろうな……。あのイベントの時は、お前の緊張を解こうとしたように思える。リッターラグナの合併の時、フェリックス氏からは、えらく腰を低くされた」
「ははは……。悠人、どうしたんだ?」
「昔のハロウィンイベントの写真で、思い出したことがあるんだーー」
悠人が不思議そうな顔をした。ハロウィンイベントで撮った写真の中の拓海さんには、青い石がついた指輪が映っていた。小指につけていたから、仮装の一部かと思ったそうだ。そして、その指輪らしきものを、俺が持っていたのを見たと言い出した。
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