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晴海さんが、カツサンドの入った紙袋を持って、車から降りて来た。車には花を積んでいた。しかし、どうやら黒崎に食べさせる口実だったのかと思った。晴海さんがきまり悪そうにしているから、指輪の話題を振ろうと思った。
「……昔のハロウィンイベントの写真を観たんだけど。拓海さんが、青い石のついた指輪をつけていたんだ。小指サイズの。知っている?お義父さん家で見つけて磨いたんだ」
「ああ、あれのことか。子供の玩具に見える物だったか?」
「それは思わなかったよ。ユリウスが齧っていたから取り上げたんだ。一貴お兄ちゃんがハーネスに付けたんだ。気に入ったみたいだからって」
「何だと?誰が引っ張り出したんだ……。俺たちの母と、純白叔母さんが選んで拓海兄さんに贈ったものだ。小学校に上がる前だ。……瞳の色を誇らしく思って堂々としろと。母は悔やんでいたが、叔母さんが自信を付けさせた。黒崎家が代々通っている学校だからか、苛めてくる生徒はいなかった」
「そんな大事なものを……。んん?二葉、おかえりーー」
二葉が帰ってきた。仕事帰りのスーツ姿をしている。先にこっちの家に寄ったのは、黒崎との約束があるからだ。外灯の灯りの下、両目が充血しているのが分かった。
早瀬さんが眉をひそめて、黒崎の前に連れて行った。そして、兄貴に告げ口しろと笑い声を立てた。黒崎の方は、二葉から話すのを待っているようだ。すると、俺と悠人の方へ来たから、ママの話ではないと思った。
「あのね……」
「ゆっくりでいいよ?ゆうとー、それは紙袋だよ。鼻を拭くのは……」
「……ありがとう。ボケたんだろ?」
俺たちに話す方が楽なのか。場所を変えようとしたら首を振ったから、背中を叩いて待つことにした。嗚咽を漏らしながら教えてくれたのは、北岡さんへの想いが恋愛感情ではなかったという話だった。
「一貴お兄さんから聞いたんだけど。早瀬専務のことを意識しすぎて、恋愛感情と間違えてたって話を。それは行きすぎだと思うけど、俺に当てはまると思った。……志乃は女の子らしくて可愛いし、お母さんが優しい人でさ。泊まりに行ったら、スープカレーをご馳走になっていたんだ。だから、憧れていた。如月のことも違うと思う。このままだと、誰のことも好きになれないよ」
二葉が抱きついて、わあわあ泣き出した。背中に両腕を回して受け止めて、悠人に支えてもらった。黒崎がそばへ来て、二葉の頭を乱暴に撫でた。俺が寝ている間に、二葉は黒崎にこの話の内容を、先に電話で伝えたそうだ。
「これでお母さんと話せるよ。そのうち朝陽とも。ここに住めてよかった。すっきりしたんだ……っ。長い夢を見たんだよね?今はそう思ってもいいかな?」
「今はそう思っておけ。これからは目を開けろ。いいな?」
「お兄ちゃん、大好きだよ。皆のことも好きだよーーー」
「……腹が空いただろう?これから食事に行こう。カツ丼がいい」
晴海さんが鶴の一声を出したことで、笑いの空気に変わった。よく食べに行っている日本料理店の大将に頼んで、カツ丼を作ってもらえるそうだ。その予定で、二葉を誘いに来たということだ。カツサンドは明日の朝ごはんにしよう。
さっそく晴海さんが店へ連絡し始めた。黒崎の体調のことは心配ないと、強引に話を終わらせて、みんなで出かける支度を始めた。
夜空には、細い三日月が浮かんでいた。また新しい月が生まれる。そして、再びスタートを切る。今日の出来事のように。
「……昔のハロウィンイベントの写真を観たんだけど。拓海さんが、青い石のついた指輪をつけていたんだ。小指サイズの。知っている?お義父さん家で見つけて磨いたんだ」
「ああ、あれのことか。子供の玩具に見える物だったか?」
「それは思わなかったよ。ユリウスが齧っていたから取り上げたんだ。一貴お兄ちゃんがハーネスに付けたんだ。気に入ったみたいだからって」
「何だと?誰が引っ張り出したんだ……。俺たちの母と、純白叔母さんが選んで拓海兄さんに贈ったものだ。小学校に上がる前だ。……瞳の色を誇らしく思って堂々としろと。母は悔やんでいたが、叔母さんが自信を付けさせた。黒崎家が代々通っている学校だからか、苛めてくる生徒はいなかった」
「そんな大事なものを……。んん?二葉、おかえりーー」
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早瀬さんが眉をひそめて、黒崎の前に連れて行った。そして、兄貴に告げ口しろと笑い声を立てた。黒崎の方は、二葉から話すのを待っているようだ。すると、俺と悠人の方へ来たから、ママの話ではないと思った。
「あのね……」
「ゆっくりでいいよ?ゆうとー、それは紙袋だよ。鼻を拭くのは……」
「……ありがとう。ボケたんだろ?」
俺たちに話す方が楽なのか。場所を変えようとしたら首を振ったから、背中を叩いて待つことにした。嗚咽を漏らしながら教えてくれたのは、北岡さんへの想いが恋愛感情ではなかったという話だった。
「一貴お兄さんから聞いたんだけど。早瀬専務のことを意識しすぎて、恋愛感情と間違えてたって話を。それは行きすぎだと思うけど、俺に当てはまると思った。……志乃は女の子らしくて可愛いし、お母さんが優しい人でさ。泊まりに行ったら、スープカレーをご馳走になっていたんだ。だから、憧れていた。如月のことも違うと思う。このままだと、誰のことも好きになれないよ」
二葉が抱きついて、わあわあ泣き出した。背中に両腕を回して受け止めて、悠人に支えてもらった。黒崎がそばへ来て、二葉の頭を乱暴に撫でた。俺が寝ている間に、二葉は黒崎にこの話の内容を、先に電話で伝えたそうだ。
「これでお母さんと話せるよ。そのうち朝陽とも。ここに住めてよかった。すっきりしたんだ……っ。長い夢を見たんだよね?今はそう思ってもいいかな?」
「今はそう思っておけ。これからは目を開けろ。いいな?」
「お兄ちゃん、大好きだよ。皆のことも好きだよーーー」
「……腹が空いただろう?これから食事に行こう。カツ丼がいい」
晴海さんが鶴の一声を出したことで、笑いの空気に変わった。よく食べに行っている日本料理店の大将に頼んで、カツ丼を作ってもらえるそうだ。その予定で、二葉を誘いに来たということだ。カツサンドは明日の朝ごはんにしよう。
さっそく晴海さんが店へ連絡し始めた。黒崎の体調のことは心配ないと、強引に話を終わらせて、みんなで出かける支度を始めた。
夜空には、細い三日月が浮かんでいた。また新しい月が生まれる。そして、再びスタートを切る。今日の出来事のように。
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