284 / 514
21-10
しおりを挟む
これから話すのは、山岡達也という人物のことだ。2年半前はO大経済学部の一年生で、20歳だった。インターンシップ申し込みのエントリーシートの経歴では、海外留学の関係で、O大の系列の高校に編入して卒業後、O大に進学したと書いてあった。ただし、ある大学を中退したことは除かれている。
この経歴を作り出したのは、隠したいものがあるからだ。中退した大学は、夏樹の実家のある方面だ。当時の名前は、山岡達也だ。事件後に母方の親戚の養子になり、野田姓に変わった。さらに、父親の従兄弟の養子になり、山岡姓に戻った。
下の名前の字は、普段は”達哉”を使っている。子供の頃に病気がちで、字を変えたく、両親が決めたという理由だった。大学側から提出された書類は”山岡達也”だ。しかし、インターンシップ中は、達哉という字を使っていた。夏樹の事件の相手だと知っていれば、最初からインターンシップ参加を断っていたかも知れない。
当時80名全員分のエントリーシートを確認したが、ほとんど顔写真を見ていなかった。3日間に分けて受け入れ面接を行い、自分が担当したのは一日のみだ。
あの大学生だと気づいたのは、インターンシップ開催中の一日目の昼休憩時のことだった。夏樹の周りを学生たちが取り囲み、夏樹は山岡の姿を見ずに済んだ。
その頃のことだ。山岡が女子学生に声を掛けて無理に写真を撮り、俺の方へ報告が上がってきた。しかし、午後の講義が数分後に控え、対面したのみで終わった。
早瀬に対応を頼み、参加を辞退させる方向にさせた。迷惑行為を起こした場合は辞退させると、面接時にも提示してある。早瀬も今、思い出している。
「あの時は焦ったよ。目と鼻の整形だけで、ああまで変わるのか。顔写真だけで気づくのは難しい。ある程度の印象が変えられる」
「俺は後悔した。俺への挑発は関係なかった。山岡君の考えている事が理解できない。2年半前に参加したのは、再び、夏樹のことが気に入っただけか」
「あの後、他の子へ付きまとったそうだ。……留学はしていないだろう。逮捕歴3回じゃ、入国を断られる」
豊栄企画という、主にイベント系を扱う会社の代表が、山岡の父だ。黒崎製菓グループ企業のファーマーズとは取引があった。迷惑をかけられた女子学生の母親が経営陣にいる。現在は取引していない。息子とはいっても形式上の関係だと、親同士の立場で説明を受けたと聞いた。
「読者モデルもやったそうだ。カモフラージュなのか、罪悪感がないのか。今年もインターンを申し込むぐらいだ。また夏樹君に会いに来たんじゃないか?それとも、あんたへの恨みか。騒ぎを起こそうとしているだろう。藤沢君への付きまといは、ライバル心からだったね?彼の方は、ジュエリーブランドのモデルだから」
「……付きまといは収まったと聞いた。事務所がガードしている。プラセル側も守っている」
「O大系列の高校は、黒崎家が代々通っている学校じゃないだろう?情報は入って来ない。……圭一さんが人の顔を記憶するのは便利だ。また覚え直せた。収穫だ。そう考えないか?」
「今月、夏樹に話をする。体術と身のこなしが浸透した。家の周りをうろついたのは親戚の者だ。山岡君は来ていない」
「悠人が見かけた、2人のことか。……続きは電話にしよう。実父のことで相談したい」
「何かあったのか?」
「……オフィスに連絡を寄越して来た。父の方から、俺に全て教えたと話したからだよ。息子のバーテルスさんが、うちと黒崎家に会いに来たんだって?17歳の時に、俺のことを知ったそうだ」
「そう聞いている。俺が知ったのは、リッターラグナの合併を始めた頃だ」
バーテルス氏は早瀬の実父のフェリックス氏が起こしたことを、親戚の集まりの時に、聞き耳を立てて知ったと話していたそうだ。そして、早瀬の存在も知った。両親はバーテルス氏の幼少期から不仲であり、フェリックス氏には複数の愛人の存在がいることを感じ取っていたそうだ。
黒崎家とバーテルス家は昔から縁があり、バーテルス氏は3歳の時に、うちの家に滞在したことがあるそうだ。父と拓海兄さんが可愛がっていたと聞いている。晴海兄さんとも庭で遊び、沢山の場所に連れて行ってもらい、沢山の思い出を作った家だと彼が教えてくれた。その恩ある家に、何をしたのかと憤ったそうだ。
この経歴を作り出したのは、隠したいものがあるからだ。中退した大学は、夏樹の実家のある方面だ。当時の名前は、山岡達也だ。事件後に母方の親戚の養子になり、野田姓に変わった。さらに、父親の従兄弟の養子になり、山岡姓に戻った。
下の名前の字は、普段は”達哉”を使っている。子供の頃に病気がちで、字を変えたく、両親が決めたという理由だった。大学側から提出された書類は”山岡達也”だ。しかし、インターンシップ中は、達哉という字を使っていた。夏樹の事件の相手だと知っていれば、最初からインターンシップ参加を断っていたかも知れない。
当時80名全員分のエントリーシートを確認したが、ほとんど顔写真を見ていなかった。3日間に分けて受け入れ面接を行い、自分が担当したのは一日のみだ。
あの大学生だと気づいたのは、インターンシップ開催中の一日目の昼休憩時のことだった。夏樹の周りを学生たちが取り囲み、夏樹は山岡の姿を見ずに済んだ。
その頃のことだ。山岡が女子学生に声を掛けて無理に写真を撮り、俺の方へ報告が上がってきた。しかし、午後の講義が数分後に控え、対面したのみで終わった。
早瀬に対応を頼み、参加を辞退させる方向にさせた。迷惑行為を起こした場合は辞退させると、面接時にも提示してある。早瀬も今、思い出している。
「あの時は焦ったよ。目と鼻の整形だけで、ああまで変わるのか。顔写真だけで気づくのは難しい。ある程度の印象が変えられる」
「俺は後悔した。俺への挑発は関係なかった。山岡君の考えている事が理解できない。2年半前に参加したのは、再び、夏樹のことが気に入っただけか」
「あの後、他の子へ付きまとったそうだ。……留学はしていないだろう。逮捕歴3回じゃ、入国を断られる」
豊栄企画という、主にイベント系を扱う会社の代表が、山岡の父だ。黒崎製菓グループ企業のファーマーズとは取引があった。迷惑をかけられた女子学生の母親が経営陣にいる。現在は取引していない。息子とはいっても形式上の関係だと、親同士の立場で説明を受けたと聞いた。
「読者モデルもやったそうだ。カモフラージュなのか、罪悪感がないのか。今年もインターンを申し込むぐらいだ。また夏樹君に会いに来たんじゃないか?それとも、あんたへの恨みか。騒ぎを起こそうとしているだろう。藤沢君への付きまといは、ライバル心からだったね?彼の方は、ジュエリーブランドのモデルだから」
「……付きまといは収まったと聞いた。事務所がガードしている。プラセル側も守っている」
「O大系列の高校は、黒崎家が代々通っている学校じゃないだろう?情報は入って来ない。……圭一さんが人の顔を記憶するのは便利だ。また覚え直せた。収穫だ。そう考えないか?」
「今月、夏樹に話をする。体術と身のこなしが浸透した。家の周りをうろついたのは親戚の者だ。山岡君は来ていない」
「悠人が見かけた、2人のことか。……続きは電話にしよう。実父のことで相談したい」
「何かあったのか?」
「……オフィスに連絡を寄越して来た。父の方から、俺に全て教えたと話したからだよ。息子のバーテルスさんが、うちと黒崎家に会いに来たんだって?17歳の時に、俺のことを知ったそうだ」
「そう聞いている。俺が知ったのは、リッターラグナの合併を始めた頃だ」
バーテルス氏は早瀬の実父のフェリックス氏が起こしたことを、親戚の集まりの時に、聞き耳を立てて知ったと話していたそうだ。そして、早瀬の存在も知った。両親はバーテルス氏の幼少期から不仲であり、フェリックス氏には複数の愛人の存在がいることを感じ取っていたそうだ。
黒崎家とバーテルス家は昔から縁があり、バーテルス氏は3歳の時に、うちの家に滞在したことがあるそうだ。父と拓海兄さんが可愛がっていたと聞いている。晴海兄さんとも庭で遊び、沢山の場所に連れて行ってもらい、沢山の思い出を作った家だと彼が教えてくれた。その恩ある家に、何をしたのかと憤ったそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる