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当時のことが知りたくなった。黒崎が秘書をやっていた頃、よくR&W社へ出かけていたそうだ。それは日下が叔父さんに連れられて、託児ルームへ来る時間だった。
”葉月君、こんにちは”。そう挨拶すると、叔父さんの背中に隠れて、手だけを振ってくれた。その反応が面白いから話しかけたのに、なかなか出て来てもらえなかったそうだ。この話を聞くと、当時の黒崎の印象が変わった。本人からの話だけで想像していた。
(そんなに冷たくないと思う。リッターラグナの代表になった後、あの頃の黒崎さんに変わったのかも?根っこは変わらないよ……)
「へえ、日下って、人見知りする子だったのか。いい叔父さんだね~。24歳だったんだよね?5歳の子の手を引いてさ。……どうして恥ずかしいんだよ?」
「そうか。兄貴から面倒みられていたもんな。俺は照れくさいぞーー。……はい、風船を持って行って下さい」
「黒崎さん、風船が欲しいの?」
「ああ。いい物を見つけた。ウサギがいい」
そばには、10個ぐらいの風船が浮かんでいる。ハートや丸、星もある。その中には、ウサギーの風船があった。黒崎が、もちろんそれを選んだ。可愛いものが好きだが、外で隠さないのが珍しい。
それを両手で受け取っている姿に、胸がキュンとした。ギャップがあるから素敵に見える。しかし、それは束の間のことだった。浮かんでいる風船の紐を、俺のベルト部分に結び始めたからだ。あの羽の代わりにしろと言いながら。
「黒崎さーん。それも嫌だよ。動きづらいし」
「……よく似合っている」
「ええ?」
「……誰にも見せたくないから、やめておく。可愛らしいから目を引く」
「ううん、浮かべておくよ。始まるまでは。そのままでもいいかも!」
「そうか。もっと結び付けておく。飛んでいきそうだ」
黒崎の声が耳元で聞こえた。たまに笑うから胸がドキドキして、居心地がいいのか悪いのか分からない。二人きりなら、イチャついて話が出来るのに。うまく乗せられた気がするが、それでもいい。
「これでいい。通報装置の後ろにしてある。研究発表まで浮かべておけ」
「屋内では外すよ。引っかかると危ないし」
「それなら、走らないだろう?安心できる」
「黒崎さん……。そんなに心配しなくても構わないよ。走らないのが習慣になっているからさ。……日下、そうだよね?」
「一石二鳥だ。……日下君、これは危険だろうか?」
「いえ。手に持つなら大丈夫です。そんなに狭くないし、分かりやすくていいと思う。名札だけ下げるより、目印になるし。あ、悠人君が到着だ。大丈夫か……」
「動けないのか。ゆうとー、そっちに行くよーー」
「ここに居ろ。迎えに行く」
黒崎が悠人の元へ向かった。具合が悪いのだろうか。悠人がゆっくりと歩いている。黒崎が肩を揺らして笑い出したから、心配ないと分かった。そして、ソクラテス食堂で満腹になり過ぎたことも知った。彼がテントまで来た後、近くの椅子に座らせた。
「早瀬さんは、一緒じゃないの?」
「藤沢とカズさんが言い合いをしたから、仲裁をしているよ。向かいのカフェのテラス。ここから見えるよーー。うぇっぷ……。そんなにひどくないけど……」
悠人が教えてくれた方向を見ると、いかにも一貴さんらしい光景があった。普通に謝ればいいのに、藤沢に抱きつくようにしている。そして、早瀬さんが引き離そうとして、笑っている。
”葉月君、こんにちは”。そう挨拶すると、叔父さんの背中に隠れて、手だけを振ってくれた。その反応が面白いから話しかけたのに、なかなか出て来てもらえなかったそうだ。この話を聞くと、当時の黒崎の印象が変わった。本人からの話だけで想像していた。
(そんなに冷たくないと思う。リッターラグナの代表になった後、あの頃の黒崎さんに変わったのかも?根っこは変わらないよ……)
「へえ、日下って、人見知りする子だったのか。いい叔父さんだね~。24歳だったんだよね?5歳の子の手を引いてさ。……どうして恥ずかしいんだよ?」
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それを両手で受け取っている姿に、胸がキュンとした。ギャップがあるから素敵に見える。しかし、それは束の間のことだった。浮かんでいる風船の紐を、俺のベルト部分に結び始めたからだ。あの羽の代わりにしろと言いながら。
「黒崎さーん。それも嫌だよ。動きづらいし」
「……よく似合っている」
「ええ?」
「……誰にも見せたくないから、やめておく。可愛らしいから目を引く」
「ううん、浮かべておくよ。始まるまでは。そのままでもいいかも!」
「そうか。もっと結び付けておく。飛んでいきそうだ」
黒崎の声が耳元で聞こえた。たまに笑うから胸がドキドキして、居心地がいいのか悪いのか分からない。二人きりなら、イチャついて話が出来るのに。うまく乗せられた気がするが、それでもいい。
「これでいい。通報装置の後ろにしてある。研究発表まで浮かべておけ」
「屋内では外すよ。引っかかると危ないし」
「それなら、走らないだろう?安心できる」
「黒崎さん……。そんなに心配しなくても構わないよ。走らないのが習慣になっているからさ。……日下、そうだよね?」
「一石二鳥だ。……日下君、これは危険だろうか?」
「いえ。手に持つなら大丈夫です。そんなに狭くないし、分かりやすくていいと思う。名札だけ下げるより、目印になるし。あ、悠人君が到着だ。大丈夫か……」
「動けないのか。ゆうとー、そっちに行くよーー」
「ここに居ろ。迎えに行く」
黒崎が悠人の元へ向かった。具合が悪いのだろうか。悠人がゆっくりと歩いている。黒崎が肩を揺らして笑い出したから、心配ないと分かった。そして、ソクラテス食堂で満腹になり過ぎたことも知った。彼がテントまで来た後、近くの椅子に座らせた。
「早瀬さんは、一緒じゃないの?」
「藤沢とカズさんが言い合いをしたから、仲裁をしているよ。向かいのカフェのテラス。ここから見えるよーー。うぇっぷ……。そんなにひどくないけど……」
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