295 / 514
21-21
しおりを挟む
R&W社では、真羽がインターンを続けている。話し上手な社員ばかりだと、プレッシャーに感じているそうだ。グループディスカッションの授業が役に立たなかったと落ち込んでいた。
大学院卒業の人が圧倒的に多いから、自分も院へ進学しようか?と迷いが出て来て、焦ってもいるそうだ。全部ひっくるめると、口下手の人には、やりづらい環境だという事だ。
黒崎が俺の様子を見て笑ったから、何を考えているのか見抜いているのだろう。そして、俺の方から話すのを促している。微笑みひとつで。ざわざわした中にいるのに、ここだけ空気が変わった。
「ビックリしたんだ。意外どころか……。人に会う機会が多いよね?あの真羽でも面食らって、やっていけないかもって落ち込んでいるよ。知識も経験も大きな差があるし、これから育って行くって思ったけど、歯が立たない。そこまで言っているんだ。……ミーティングの時に意見を出したら反応が悪いし、学生が言っていることだから、レベルが高くないから恥ずかしいって。……理由があるんだ。経済学部の子がインターンをやっていて、意見を出せているそうなんだ。O大の子は、最初から自然にチームの輪に入れていたそうだし。……子供じゃあるまいし、こういう事で悩むことすら、恥ずかしいって言っていたよ。もっと話してもいい?」
「ああ、構わない。聞かせてくれ」
ひと言も挟むことなく聞いてくれた。”それは違う、思い込みだ。だからそうなる”。こういうフレーズが、一切出されないから話しやすい。ひと通り話し終わると、笑い声を立てられた。それにも安心できた。
「真羽君には担当の社員がいる。何か話があったのか?」
「何も言われないって聞いたよ。落ち込む要因の一つだよ。注意すらされないからって……」
「注意するものが無いからだ。挨拶と立ち振る舞いが身に着いているんだろう」
「そっか。それを聞いたら、本人が安心するよ。自然にやっているからだね。聞き役になっているってことかな?……うちの大学は、人の話を聞かない学生が多いって評判なんだ。先輩からボコボコにされるそうなんだよ」
「全てじゃない。O大出身者はOBから可愛がられ過ぎている。それをやめさせる為に、R&W社で人事異動をやる。……伊吹君の社員育成手法を意識したようだ。聞きたいか?」
「うん。聞きたい。怖くないよ?」
今はそうしたい。黒崎が肩を揺らして笑い出した。今から2年前のことだという。ブロッコリー社に、うちの大学の学生から入社エントリーされた際のことだ。有望な人だから入社してほしいのに、わざとこう話したそうだ。"新人を育てる費用と、時間の余裕がない。後輩には苦労をかけたくない。……それでも、僕と分かち合いたいのか?いいのか?有望な企業を選びたまえ。……そうか。選んでくれたのか。ありがとう!”と。
「その結果、その後輩をこき使って、業績アップができた。新人育成にも長けていることも評判になった。多方面でも有名になった。……真羽君には、R&W社でやって来いと言った。何か理由があるはずだ。……口下手の学生を歓迎する意味は分かったか?」
「聞き役になれる人を探している。そういうことかな?」
「その通りだ。その方針を取った。5年計画で育てていく。発想が豊かなタイプが多い。外に出さない分、本人の中で温めている。……八代君が面白い」
「どうして?就活していないよ?」
「研究内容だ。うちの開発部が声をかけたそうだ。……断られたがな」
「博士課程までいきたがっているよ。研究機関へ就職志望だよ」
「そうか。うちは人気のない企業だな」
「笑っているじゃん」
「興味を持たない学生に会いたい」
そういう見向きもしてこない学生を、ターゲットにしているそうだ。社員として育てて行けば、会社全体のスキルアップになると考えている。
この話を聞いて、相づちを打つことも忘れた。カッコいいということか?しかし、それを口に出してはいけない。そんな気がした。
大学院卒業の人が圧倒的に多いから、自分も院へ進学しようか?と迷いが出て来て、焦ってもいるそうだ。全部ひっくるめると、口下手の人には、やりづらい環境だという事だ。
黒崎が俺の様子を見て笑ったから、何を考えているのか見抜いているのだろう。そして、俺の方から話すのを促している。微笑みひとつで。ざわざわした中にいるのに、ここだけ空気が変わった。
「ビックリしたんだ。意外どころか……。人に会う機会が多いよね?あの真羽でも面食らって、やっていけないかもって落ち込んでいるよ。知識も経験も大きな差があるし、これから育って行くって思ったけど、歯が立たない。そこまで言っているんだ。……ミーティングの時に意見を出したら反応が悪いし、学生が言っていることだから、レベルが高くないから恥ずかしいって。……理由があるんだ。経済学部の子がインターンをやっていて、意見を出せているそうなんだ。O大の子は、最初から自然にチームの輪に入れていたそうだし。……子供じゃあるまいし、こういう事で悩むことすら、恥ずかしいって言っていたよ。もっと話してもいい?」
「ああ、構わない。聞かせてくれ」
ひと言も挟むことなく聞いてくれた。”それは違う、思い込みだ。だからそうなる”。こういうフレーズが、一切出されないから話しやすい。ひと通り話し終わると、笑い声を立てられた。それにも安心できた。
「真羽君には担当の社員がいる。何か話があったのか?」
「何も言われないって聞いたよ。落ち込む要因の一つだよ。注意すらされないからって……」
「注意するものが無いからだ。挨拶と立ち振る舞いが身に着いているんだろう」
「そっか。それを聞いたら、本人が安心するよ。自然にやっているからだね。聞き役になっているってことかな?……うちの大学は、人の話を聞かない学生が多いって評判なんだ。先輩からボコボコにされるそうなんだよ」
「全てじゃない。O大出身者はOBから可愛がられ過ぎている。それをやめさせる為に、R&W社で人事異動をやる。……伊吹君の社員育成手法を意識したようだ。聞きたいか?」
「うん。聞きたい。怖くないよ?」
今はそうしたい。黒崎が肩を揺らして笑い出した。今から2年前のことだという。ブロッコリー社に、うちの大学の学生から入社エントリーされた際のことだ。有望な人だから入社してほしいのに、わざとこう話したそうだ。"新人を育てる費用と、時間の余裕がない。後輩には苦労をかけたくない。……それでも、僕と分かち合いたいのか?いいのか?有望な企業を選びたまえ。……そうか。選んでくれたのか。ありがとう!”と。
「その結果、その後輩をこき使って、業績アップができた。新人育成にも長けていることも評判になった。多方面でも有名になった。……真羽君には、R&W社でやって来いと言った。何か理由があるはずだ。……口下手の学生を歓迎する意味は分かったか?」
「聞き役になれる人を探している。そういうことかな?」
「その通りだ。その方針を取った。5年計画で育てていく。発想が豊かなタイプが多い。外に出さない分、本人の中で温めている。……八代君が面白い」
「どうして?就活していないよ?」
「研究内容だ。うちの開発部が声をかけたそうだ。……断られたがな」
「博士課程までいきたがっているよ。研究機関へ就職志望だよ」
「そうか。うちは人気のない企業だな」
「笑っているじゃん」
「興味を持たない学生に会いたい」
そういう見向きもしてこない学生を、ターゲットにしているそうだ。社員として育てて行けば、会社全体のスキルアップになると考えている。
この話を聞いて、相づちを打つことも忘れた。カッコいいということか?しかし、それを口に出してはいけない。そんな気がした。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる