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17時。
会議を終えて、支社長室の奥にある応接室へ入った。一時間後に料亭へ移動し、午前中の取引先との会食が始まる。その間、休憩に充てることにした。
このアナログ手帳では、プライベードの予定のみ管理している。どのページを見ても、夏樹のスケジュールで埋め尽くしてある。そして、彼の体調の変化も記録してある。検診時に役立つ。本人は気づかないものはあるはずで、そのために記録している。
今日の分で、先週から続いていた実験が終わると話していた。来週に別のものが始まり、7月の定期試験へ向けての対策が始まる。
(とうとう卒業か。あっという間だ。11月末にコンサート、年明けから予定が詰まっている……)
12月に入れば、ほぼ大学へ出向かないスケジュールだ。音楽の仕事が立て続けに入ったのは、学業との両立が取り除かれるためだ。
卒論提出がない分、日常の実験演習がハードだと評判を聞いていたが、当の本人は気づいていない。楽でいいよと笑っていた。
悠人からは、こんな話を聞いた。実験演習がひと区切りついた後、夏樹が室内の床に寝転がって寝息を立て始めたことがあったそうだ。体調が悪いのかと騒ぎが起きると、来週の分を予習すると言いながら起き上がり、デスクのパソコンへ向き直ったそうだ。次の興味が出たからだった。
俺にとっては、心配の種の要素が大きいエピソードだ。一つのことに集中しすぎる癖が出始めている。この事を夏樹へ話すと、あっさりと認めていた。あの時の会話を思い出した。
(……うんっ。集中しすぎて疲れたんだ。8月はミニライブがあるからさ、体力を温存するからね)
(……いつから温存するんだ?)
(……今もしているよ。ほうれん草のお浸ししか作っていないもん。ほらね?)
あれは本気で言っていた。細かく刻んだアーモンドが入っていたはずだ。普段ならやらないことをやっている分、手を抜いているとは言えない。
あの子の前に現れる的を減らしてやりたい。次々と弓矢を構えて射っていき、新しいものが現れる。その考えを和らげようにも難しく、開発部という楽しい仕事をそばへ置いた。それを失うことになる状況を想像させることで、全ての的への矢を逸せよう。そう考えての結果だ。
今の状況はどうだろうか?自分自身の考え方や、当初の予想が方向性を失いつつある。漠然とした不安ばかりを煽っていなかったか?正しいことをしたのか?
「俺の考える幸せの形を押し付けていた。素晴らしいものだと思い込んでいた。今さらか……」
パートナー、家族として、あの子が危険な方向へ進もうとするなら止める。アドバイス、釘を刺すという方法によって。
俺の方も、夏樹からコントロールを受けている。きつい言い方と強引なやり方を察知し、事前に注意されている。優しい言い方をしろと。それは愛情あるものだ。
それならば、俺の方からの行動はどうだろうか?自分の望み通りの姿になるようにコントロールし、心配だという布によって夏樹のことを包んでいた。そういう気がした。確信できないのは、あの子の為だという思いが強いからだ。
会議を終えて、支社長室の奥にある応接室へ入った。一時間後に料亭へ移動し、午前中の取引先との会食が始まる。その間、休憩に充てることにした。
このアナログ手帳では、プライベードの予定のみ管理している。どのページを見ても、夏樹のスケジュールで埋め尽くしてある。そして、彼の体調の変化も記録してある。検診時に役立つ。本人は気づかないものはあるはずで、そのために記録している。
今日の分で、先週から続いていた実験が終わると話していた。来週に別のものが始まり、7月の定期試験へ向けての対策が始まる。
(とうとう卒業か。あっという間だ。11月末にコンサート、年明けから予定が詰まっている……)
12月に入れば、ほぼ大学へ出向かないスケジュールだ。音楽の仕事が立て続けに入ったのは、学業との両立が取り除かれるためだ。
卒論提出がない分、日常の実験演習がハードだと評判を聞いていたが、当の本人は気づいていない。楽でいいよと笑っていた。
悠人からは、こんな話を聞いた。実験演習がひと区切りついた後、夏樹が室内の床に寝転がって寝息を立て始めたことがあったそうだ。体調が悪いのかと騒ぎが起きると、来週の分を予習すると言いながら起き上がり、デスクのパソコンへ向き直ったそうだ。次の興味が出たからだった。
俺にとっては、心配の種の要素が大きいエピソードだ。一つのことに集中しすぎる癖が出始めている。この事を夏樹へ話すと、あっさりと認めていた。あの時の会話を思い出した。
(……うんっ。集中しすぎて疲れたんだ。8月はミニライブがあるからさ、体力を温存するからね)
(……いつから温存するんだ?)
(……今もしているよ。ほうれん草のお浸ししか作っていないもん。ほらね?)
あれは本気で言っていた。細かく刻んだアーモンドが入っていたはずだ。普段ならやらないことをやっている分、手を抜いているとは言えない。
あの子の前に現れる的を減らしてやりたい。次々と弓矢を構えて射っていき、新しいものが現れる。その考えを和らげようにも難しく、開発部という楽しい仕事をそばへ置いた。それを失うことになる状況を想像させることで、全ての的への矢を逸せよう。そう考えての結果だ。
今の状況はどうだろうか?自分自身の考え方や、当初の予想が方向性を失いつつある。漠然とした不安ばかりを煽っていなかったか?正しいことをしたのか?
「俺の考える幸せの形を押し付けていた。素晴らしいものだと思い込んでいた。今さらか……」
パートナー、家族として、あの子が危険な方向へ進もうとするなら止める。アドバイス、釘を刺すという方法によって。
俺の方も、夏樹からコントロールを受けている。きつい言い方と強引なやり方を察知し、事前に注意されている。優しい言い方をしろと。それは愛情あるものだ。
それならば、俺の方からの行動はどうだろうか?自分の望み通りの姿になるようにコントロールし、心配だという布によって夏樹のことを包んでいた。そういう気がした。確信できないのは、あの子の為だという思いが強いからだ。
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