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脳裏に浮かんだのは、18歳の夏樹の姿だ。いびつな形をしていた両手の爪からは、血が滲んだ跡があった。今は流れていない。そして、左手の傷から血が流れた時、俺の右手で止血した光景が浮かんだ。守ってやらねばと思ったはずだ。10代の子が怪我を負わされて、痛みと不安で震えていたのだから。
(今の状況はどうだろうか。自分のエゴなのか、思いやりなのか。価値観の違いなのか?)
こうして、何度も分かれ道に差し掛かり、同じことを振り返っている。毎回納得して進んだ後、また浮かんでくる。これは先月の事だった。夏樹から教えられた答えがある。俺達はリボン結びをした関係だということだった。
(……一つに結ばれた輪っか同士、避けては通れないものだよ。あんたの強引なやり方を止めた後で、やっぱり言わない方が良かったかな?って思い返しているんだよ。結果オーライのパターンが多いからさ。中心がしっかり結んであるから、いびつでもいいじゃん……)
腕時計に視線を向けると、そろそろ一貴が大学へ到着する頃だった。このタイミングなら話ができるだろう。夏樹へ電話をかけようとした時、着信が入った。バーテルス氏からのメッセージだった。
今日話せるか?という内容だ。この後なら深夜になるはずだ。このまま番号をタップして電話をかけると、数回目で出た。スピーカーから聞こえて来たのは、慌てた様子の応答だ。自分の方から電話を促していたのだが。
「……圭一、こんにちは。おっと、待ってくれーー」
「……忙しい時だったか?」
「……すぐに電話が入ると思わなかった。これで落ち着いた。ブリキの太鼓が落ちそうだった。……用件は、今月の食事のことだ。予定通りにドイツへ発つ。来週の金曜か土曜日はどうだろう?……26日までなら」
「……22日の土曜日が候補だ。夏樹に聞いて返事をする」
記憶してある仕事の予定と、手帳を見比べて日付を辿った。日曜の予定がなく、寝るのが遅くなっても問題ない。そう言いかけて、やめておいた。俺は恥ずかしくないが、夏樹から何を言われるのか想像した結果だ。保護者かと言われそうだ。
「……返事を待っている。夏樹君から、お礼の電話をもらったよ。お菓子類が特に気に入ったようだ。ガラスのオーナメントも」
「……ありがとう。見せてもらったが、どれも可愛らしいものだった。本当に喜んでいた。12月に出かける予定をしている」
「……その時は声をかけてくれ。ぜひ案内させてもらいたい。……来月、伊吹君が商談で出版社へ来てくれる。ノアも帰って来るから、3人で遊びに行く予定だ。……ノアが伊吹君に苦手意識を持っているんだろう?あれは冗談だと思う。……頼まれていた件だけど、ここで話して構わないか?」
「……ああ、頼む。二葉のことだろう?」
バーテルス氏から相づちが返って来た。来月から大学の夏休みに入り、ノアが3週間程度、ドイツへ帰国する。それに合わせて、二葉を旅行へ出したいと相談してあった。
この先は、まとまった休みが取れないのは分かっていることだ。ここで息抜きをさせておきたい。ノアが一緒に居るなら楽しめるだろう。バーテルス氏がいるなら、なおさら安心できる。
この件を手短に相談した後、明日の夜に続きをと約束し、通話を終えた。そして、夏樹へ電話をかけた。何かが動いていく途中のこういう時こそ、あの子の声が聞きたい。
(今の状況はどうだろうか。自分のエゴなのか、思いやりなのか。価値観の違いなのか?)
こうして、何度も分かれ道に差し掛かり、同じことを振り返っている。毎回納得して進んだ後、また浮かんでくる。これは先月の事だった。夏樹から教えられた答えがある。俺達はリボン結びをした関係だということだった。
(……一つに結ばれた輪っか同士、避けては通れないものだよ。あんたの強引なやり方を止めた後で、やっぱり言わない方が良かったかな?って思い返しているんだよ。結果オーライのパターンが多いからさ。中心がしっかり結んであるから、いびつでもいいじゃん……)
腕時計に視線を向けると、そろそろ一貴が大学へ到着する頃だった。このタイミングなら話ができるだろう。夏樹へ電話をかけようとした時、着信が入った。バーテルス氏からのメッセージだった。
今日話せるか?という内容だ。この後なら深夜になるはずだ。このまま番号をタップして電話をかけると、数回目で出た。スピーカーから聞こえて来たのは、慌てた様子の応答だ。自分の方から電話を促していたのだが。
「……圭一、こんにちは。おっと、待ってくれーー」
「……忙しい時だったか?」
「……すぐに電話が入ると思わなかった。これで落ち着いた。ブリキの太鼓が落ちそうだった。……用件は、今月の食事のことだ。予定通りにドイツへ発つ。来週の金曜か土曜日はどうだろう?……26日までなら」
「……22日の土曜日が候補だ。夏樹に聞いて返事をする」
記憶してある仕事の予定と、手帳を見比べて日付を辿った。日曜の予定がなく、寝るのが遅くなっても問題ない。そう言いかけて、やめておいた。俺は恥ずかしくないが、夏樹から何を言われるのか想像した結果だ。保護者かと言われそうだ。
「……返事を待っている。夏樹君から、お礼の電話をもらったよ。お菓子類が特に気に入ったようだ。ガラスのオーナメントも」
「……ありがとう。見せてもらったが、どれも可愛らしいものだった。本当に喜んでいた。12月に出かける予定をしている」
「……その時は声をかけてくれ。ぜひ案内させてもらいたい。……来月、伊吹君が商談で出版社へ来てくれる。ノアも帰って来るから、3人で遊びに行く予定だ。……ノアが伊吹君に苦手意識を持っているんだろう?あれは冗談だと思う。……頼まれていた件だけど、ここで話して構わないか?」
「……ああ、頼む。二葉のことだろう?」
バーテルス氏から相づちが返って来た。来月から大学の夏休みに入り、ノアが3週間程度、ドイツへ帰国する。それに合わせて、二葉を旅行へ出したいと相談してあった。
この先は、まとまった休みが取れないのは分かっていることだ。ここで息抜きをさせておきたい。ノアが一緒に居るなら楽しめるだろう。バーテルス氏がいるなら、なおさら安心できる。
この件を手短に相談した後、明日の夜に続きをと約束し、通話を終えた。そして、夏樹へ電話をかけた。何かが動いていく途中のこういう時こそ、あの子の声が聞きたい。
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