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サイドへ戻ろうとした時、イヤモニから声が聞こえた。正木プロデューサーから呼びかけられて、そばのスタンドマイクから返事をした。まだ流れる汗をタオルで拭き、首筋に保冷剤を当てた。さらに指示が入った。
「8番方向へ進んでください!アルバム収録分を録ります」
「りょーかいです!……黒崎です。今から入ります」
指示された8番サイドは、観客席アリーナへ張り出したステージになっている。ちょうど正木さんも向かっている。
後ろからローザーさんのアシスタントが走って来て、新しいタオルに交換してくれた。濡れたTシャツを着替えるかと聞かれて、大丈夫だよと首を振った。これからまた汗をかくだろう。
「どれを録るのかなあ。ステージメイキングは終わったんだけど。……正木さん」
「そのメイキングに入れる関連だよ。……ミカちゃーん。これを忘れているよ」
「ありがとうございます。ローザー先生はっと……。やべーー!」
正木さんからファイルを受け取り、ミカさんが走って戻って行った。大変だなと、他人事のように心の中で呟いた。その先では、ローザーさんが大和のヘアスタイルを直していた。ベタベタ触りすぎだと、大和に嫌がられている様子だ。
それを悠人が仲裁して、ミカさんが加わった。ほんの数回仕事をしただけなのに、自然と気が合った。特に大和だろう。あの人から逃げたくて、緊張している心の余裕が無いそうだ。こう話していた。
(……“俺は女性が好きなんです。いくらローザーさんが男前でもダメです。付き合っている子はいないけど、お姉ちゃんと遊びたい!年上女性とです”、か。……大和はしっかりしているなあ。俺なんか警戒心ゼロだって笑われたし。伊吹お兄ちゃんが大好きだから。そういう事にしよう……)
黒崎から記事のことでラインが入る直前に、伊吹からも入った。TDDのナツキとは兄弟だということ、黒崎と俺の馴れ初めも語ったことを。IKUの許可が出ている。
責任感が強くて優しい黒崎社長と出会い、弟がいい影響を受けた。なんせ兄貴が世話を焼いていたから、年上の人に警戒心が薄くて困っていました。今は幸せに過ごしているので安心しています。そう答えたそうだ。
何もかも”変な社長”として振舞うことはない。プライベートでは穏やかな人だと思われると得だ。そう付け足しで入った。
今回は不安を持っていない。恥ずかしい程度だ。聡太郎のことが関わっている以上、綿密に計画を立てて、打ち合わせをしたはずだ。ここにも応援団がいる。
「……まだ準備中だ。少し話そうか。顔色がいいじゃないか。さっきのステージもよかった」
「ありがとうございます!声の伸びが良かったです」
「そうだろう。いい映像が撮れているはずだよ。この周辺を案内する映像を録りたい。5分程度の簡単なものだ。……山岸ドクターがいらっしゃる。ついでに、ミカちゃんの診察をしてもらおうかと……。君たちの先生なのに、すまない」
「いえ。とんでもないです。何かありましたか?」
「風邪を引いているぐらいだ。病院嫌いでね。ローザーが心配している。優しい先生なんだろう?」
「はい。とにかく話を聞いてくれる先生です」
悠人が悲鳴を上げているのを、ミカさんが目撃している。怖がりそうだ。この本音を飲み込んだ。自分のことをペラペラ喋るのはいけない。すると、正木さんがクスッと笑った。
「ガンジス先生だろう?黒崎君、よかったら打ち解けてもらえないか。君たちには危険人物は近づかない。僕は佐伯君の10年来の友人だ。……どうかな?」
「はい。ありがとうございます。遠慮の塊でした。……山岸先生が来てくれました。わあー、逃げています……」
「そう。怖い先生なのか。……よーし。始めようか!」
さっと表情が変わった。話している間に撮影の段取りが完了していた。全く見ていないのに分かったのか。すごいなと驚く時間がない。頭を切り替えて、カメラの前に立った。アナウンサーになったつもりで、アリーナ付近を案内しながら。
「8番方向へ進んでください!アルバム収録分を録ります」
「りょーかいです!……黒崎です。今から入ります」
指示された8番サイドは、観客席アリーナへ張り出したステージになっている。ちょうど正木さんも向かっている。
後ろからローザーさんのアシスタントが走って来て、新しいタオルに交換してくれた。濡れたTシャツを着替えるかと聞かれて、大丈夫だよと首を振った。これからまた汗をかくだろう。
「どれを録るのかなあ。ステージメイキングは終わったんだけど。……正木さん」
「そのメイキングに入れる関連だよ。……ミカちゃーん。これを忘れているよ」
「ありがとうございます。ローザー先生はっと……。やべーー!」
正木さんからファイルを受け取り、ミカさんが走って戻って行った。大変だなと、他人事のように心の中で呟いた。その先では、ローザーさんが大和のヘアスタイルを直していた。ベタベタ触りすぎだと、大和に嫌がられている様子だ。
それを悠人が仲裁して、ミカさんが加わった。ほんの数回仕事をしただけなのに、自然と気が合った。特に大和だろう。あの人から逃げたくて、緊張している心の余裕が無いそうだ。こう話していた。
(……“俺は女性が好きなんです。いくらローザーさんが男前でもダメです。付き合っている子はいないけど、お姉ちゃんと遊びたい!年上女性とです”、か。……大和はしっかりしているなあ。俺なんか警戒心ゼロだって笑われたし。伊吹お兄ちゃんが大好きだから。そういう事にしよう……)
黒崎から記事のことでラインが入る直前に、伊吹からも入った。TDDのナツキとは兄弟だということ、黒崎と俺の馴れ初めも語ったことを。IKUの許可が出ている。
責任感が強くて優しい黒崎社長と出会い、弟がいい影響を受けた。なんせ兄貴が世話を焼いていたから、年上の人に警戒心が薄くて困っていました。今は幸せに過ごしているので安心しています。そう答えたそうだ。
何もかも”変な社長”として振舞うことはない。プライベートでは穏やかな人だと思われると得だ。そう付け足しで入った。
今回は不安を持っていない。恥ずかしい程度だ。聡太郎のことが関わっている以上、綿密に計画を立てて、打ち合わせをしたはずだ。ここにも応援団がいる。
「……まだ準備中だ。少し話そうか。顔色がいいじゃないか。さっきのステージもよかった」
「ありがとうございます!声の伸びが良かったです」
「そうだろう。いい映像が撮れているはずだよ。この周辺を案内する映像を録りたい。5分程度の簡単なものだ。……山岸ドクターがいらっしゃる。ついでに、ミカちゃんの診察をしてもらおうかと……。君たちの先生なのに、すまない」
「いえ。とんでもないです。何かありましたか?」
「風邪を引いているぐらいだ。病院嫌いでね。ローザーが心配している。優しい先生なんだろう?」
「はい。とにかく話を聞いてくれる先生です」
悠人が悲鳴を上げているのを、ミカさんが目撃している。怖がりそうだ。この本音を飲み込んだ。自分のことをペラペラ喋るのはいけない。すると、正木さんがクスッと笑った。
「ガンジス先生だろう?黒崎君、よかったら打ち解けてもらえないか。君たちには危険人物は近づかない。僕は佐伯君の10年来の友人だ。……どうかな?」
「はい。ありがとうございます。遠慮の塊でした。……山岸先生が来てくれました。わあー、逃げています……」
「そう。怖い先生なのか。……よーし。始めようか!」
さっと表情が変わった。話している間に撮影の段取りが完了していた。全く見ていないのに分かったのか。すごいなと驚く時間がない。頭を切り替えて、カメラの前に立った。アナウンサーになったつもりで、アリーナ付近を案内しながら。
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