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理久が悔し泣きをしている。大事な人を侮辱されたと言って声を荒げた。そう簡単に話せることではない、どれだけ大切な人だったのか分からないのか?と言った。枝川さんが理解していないわけがない。今の理久を、ドアの向こうから強引に引っ張ろうとしているのだろうか。しかし、これだと壊れてしまう。
「黒崎さん!止めるから!」
「お前が怪我をする。俺も行かない。腹をくくってもらう」
「目の前にいるのに?」
「一貴に投げたことがあるだろう?お前も」
「そうだけど……」
一貴さんの気持ちが暴走した頃のことだ。もうすぐで悠人が部屋に飛び込んでくるのを知った。俺は止めなかった。この目で見届けると決めた。一貴さんに腹をくくれと言い放ったうえで。悠人が大事な手にこぶしを作って、一貴さんに殴りかかろうとした時に後悔した。一瞬の出来事だとはいえ、全く足が動かなかった。それを早瀬さんが全力で止めた。お義父さんが飛び込んできて謝ったことで、まずは争いが治まった。
「お前も同じことがあった。今の理久君は自己否定の塊だ。悠人君は分かっている。お前も分かるだろう?違う視点で」
「うん。俺と悠人は違う……」
2人を挟んだ向こうに立ち、悠人が冷静に見守り続けていた。俺の方を向いて頷いた。そして、眉間に皺を寄せながら、隣に立っている二葉を励まし始めた。大丈夫だよと言っていると思った。なんて強いのか。
「どうした?あの時のお前は、周りの人間を守るために判断した。人を判断する基準はない。その後でお前が言った」
「覚えていないよ。だったら理久も大丈夫だよ。静久さんの誇りを守ろうとしている。早瀬さんのこともじゃないかな……っ」
「そうだ。大事なことをやっている」
自分が泣いてどうする?癒すことなどできないのに。だったらこうする。2人が怪我をした後で手当てを手伝う。理久の指先には傷があり、すでに血がにじんでいる。今もギター練習を積んでいるのだろう。先週会った時にはなかったものだ。
(そうか。枝川さんが受け止めているんだ。吐き出させたくて……)
さらに理久が声を荒げた。かつて、二葉が如月から侮辱された事に腹を立てた時のように。渾身の力をこめて掴みかかっていた。でも、枝川さんには同じようにしていない。とっさに力を緩めている。
「小学生の時に、歩道に車が突っ込んできたんだ。俺は看板を見つけて一人で走って行った時だよ。久弥お兄ちゃんが走ってきて助けてくれた。でも、車が止まらないから、静久君が突き飛ばしてくれた。俺は静久君に抱えられていたから、どこも怪我をしていない。お兄ちゃんは受け身を取れるって分かっているから、とっさの判断だよ。……そういう人なんだ。俺のお兄ちゃんだ!大事な指を怪我したんだ。裕理君だって後悔しているんだ。泣きたかったはずだよ。俺の一番近くにいたんだよ。だから裕理君には何でも相談していたんだ!」
「君が何も話してくれないからだ」
「それは侮辱する理由にならない!」
「していない。事実だけを言った。君の方が侮辱しているぞ?気がつかないか?」
「え……」
「俺は事実を言った。そうじゃないのか?と。それを君は侮辱された意味に取った。ミュージシャンになるのも、コンテスト前なのに、君たちを守るために車の前に飛び込んで行ったのも、静久さんの選択だ。それを大事に思わないのか?……君が感情を爆発するのはOKだ。同じ意見だろう。でもな、守ったことを否定されたくないはずだ。そうやって悔やむことだ。同情するな!ここで謝れ!」
「俺が謝る相手はここにいない!」
「……本当に馬鹿だな。面倒くさい子だ」
「だからあんたに話せなかったんだ。最初から諦める考え方を持ってる」
「君のことを考えて言った。精神的なものにリバウンドするぞ。うちの社員のケースがある。どれだけの数がいるのか知っているか?部下が3人も患った。今も通院している」
「よく知らないくせに!」
「そのままの言葉を返してやる。俺のことを知っているのか?どういう思いで君のことを見ていたのかを。……君が言ったことは失礼だぞ。馬鹿にしているとまでは言わない。静久さんは自分の意思で、プロの道に進むことを選んだ。だからこそ、早瀬専務の頼みを聞けた。久弥さんを支えてくれ。自分には勇気がないって。あの人がプライドを崩してまで……」
「幸也君……」
「りくーー。戻ってこーーい!」
枝川さんが抱え込むようにして、理久のことを抱き寄せた。泣いている顔を見られたくないだろう?そう話しかけた時は優しい声をしていた。
「黒崎さん!止めるから!」
「お前が怪我をする。俺も行かない。腹をくくってもらう」
「目の前にいるのに?」
「一貴に投げたことがあるだろう?お前も」
「そうだけど……」
一貴さんの気持ちが暴走した頃のことだ。もうすぐで悠人が部屋に飛び込んでくるのを知った。俺は止めなかった。この目で見届けると決めた。一貴さんに腹をくくれと言い放ったうえで。悠人が大事な手にこぶしを作って、一貴さんに殴りかかろうとした時に後悔した。一瞬の出来事だとはいえ、全く足が動かなかった。それを早瀬さんが全力で止めた。お義父さんが飛び込んできて謝ったことで、まずは争いが治まった。
「お前も同じことがあった。今の理久君は自己否定の塊だ。悠人君は分かっている。お前も分かるだろう?違う視点で」
「うん。俺と悠人は違う……」
2人を挟んだ向こうに立ち、悠人が冷静に見守り続けていた。俺の方を向いて頷いた。そして、眉間に皺を寄せながら、隣に立っている二葉を励まし始めた。大丈夫だよと言っていると思った。なんて強いのか。
「どうした?あの時のお前は、周りの人間を守るために判断した。人を判断する基準はない。その後でお前が言った」
「覚えていないよ。だったら理久も大丈夫だよ。静久さんの誇りを守ろうとしている。早瀬さんのこともじゃないかな……っ」
「そうだ。大事なことをやっている」
自分が泣いてどうする?癒すことなどできないのに。だったらこうする。2人が怪我をした後で手当てを手伝う。理久の指先には傷があり、すでに血がにじんでいる。今もギター練習を積んでいるのだろう。先週会った時にはなかったものだ。
(そうか。枝川さんが受け止めているんだ。吐き出させたくて……)
さらに理久が声を荒げた。かつて、二葉が如月から侮辱された事に腹を立てた時のように。渾身の力をこめて掴みかかっていた。でも、枝川さんには同じようにしていない。とっさに力を緩めている。
「小学生の時に、歩道に車が突っ込んできたんだ。俺は看板を見つけて一人で走って行った時だよ。久弥お兄ちゃんが走ってきて助けてくれた。でも、車が止まらないから、静久君が突き飛ばしてくれた。俺は静久君に抱えられていたから、どこも怪我をしていない。お兄ちゃんは受け身を取れるって分かっているから、とっさの判断だよ。……そういう人なんだ。俺のお兄ちゃんだ!大事な指を怪我したんだ。裕理君だって後悔しているんだ。泣きたかったはずだよ。俺の一番近くにいたんだよ。だから裕理君には何でも相談していたんだ!」
「君が何も話してくれないからだ」
「それは侮辱する理由にならない!」
「していない。事実だけを言った。君の方が侮辱しているぞ?気がつかないか?」
「え……」
「俺は事実を言った。そうじゃないのか?と。それを君は侮辱された意味に取った。ミュージシャンになるのも、コンテスト前なのに、君たちを守るために車の前に飛び込んで行ったのも、静久さんの選択だ。それを大事に思わないのか?……君が感情を爆発するのはOKだ。同じ意見だろう。でもな、守ったことを否定されたくないはずだ。そうやって悔やむことだ。同情するな!ここで謝れ!」
「俺が謝る相手はここにいない!」
「……本当に馬鹿だな。面倒くさい子だ」
「だからあんたに話せなかったんだ。最初から諦める考え方を持ってる」
「君のことを考えて言った。精神的なものにリバウンドするぞ。うちの社員のケースがある。どれだけの数がいるのか知っているか?部下が3人も患った。今も通院している」
「よく知らないくせに!」
「そのままの言葉を返してやる。俺のことを知っているのか?どういう思いで君のことを見ていたのかを。……君が言ったことは失礼だぞ。馬鹿にしているとまでは言わない。静久さんは自分の意思で、プロの道に進むことを選んだ。だからこそ、早瀬専務の頼みを聞けた。久弥さんを支えてくれ。自分には勇気がないって。あの人がプライドを崩してまで……」
「幸也君……」
「りくーー。戻ってこーーい!」
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