上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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 その一週間後のことだ。一貴さんから3つの試作を見せてもらい、メンバーとIKU関係者一同が驚いてしまった。ジュエリーショップの店頭に出すぐらいのクオリティーだったからだ。長谷部さんが個人的に買いたいと言い出して、久弥が頷いていた。そして、契約などの細かいことを進めて、ちょうど今、生産段階に入っている。

 一貴さんにとっては、普段の社長業に加えて、新しい仕事が追加した。家に帰った後、徹夜で取り組んでいたことを知っている。関連企業や、材料の仕入れ先を当たって頭を下げたことも。すべて黒崎から聞いた。そして、この間は楽しい作業だったと話していたことも。こう言っていたそうだ。

(……プラセルを立ち上げた頃のようだった。すぐにクライアントがついてくれた。レベルの高さをかってもらった。いい条件の発注を受けて、期待以上のものを仕上げないと意味がない。繊維工場や宝石店のツテを頼った。その頃の人に会いたくなった。お礼を言えていない。大企業に成長させて、高いビルの最上階から下を眺めていた。それじゃ、求めていた場所が見つかるわけがない。自分で居場所を作り出すものだ。それにも気づけた。……僕が相手に頭を下げたのは、10年ぶりだぞ!また業績悪化かと疑われた。たった2日後にだぞ?うちの社外取締役から内緒話で問い合わせてきたし、黒崎製菓グループに入るのか?とも聞かれた。散々だった。……でも、いじってくる程度だ。その中の数人と飲みに行く約束をした。また今度っていう社交辞令なんかじゃない。その場でスケジュールを出し合ったよ)

 その3日後にプラセルの株価が下がったものだから、一貴さんと取締役メンバーが大慌てになったそうだ。”社長が珍しいことをするから、反動があったじゃないか”と、ぶつぶつ文句を言われたそうだ。今までなら考えられないことだそうだ。

 株価が下がったのは偶然だった。流れている川の流れの一部だ。日常茶飯事のことだった。それも分かった上で、イジられたわけだ。その時の一貴さんは輝いていた。

 ただし、理久を泣かせたリバウントを恐れている状況だ。それには、久弥が一手を打ってくれた。悪いことの先払いという形を取るプランだ。

 理久が発明に使うための、牛乳パックを50個用意することにした。水洗いして乾かすという作業もある。理久が参加予定のボランティアグループにて、身近なものでできる発明教室を開くために。俺たちも手伝っている。どうやっても、一人で50本の牛乳を使いきれない。

「うーーん。シチューを作った。まだ使いきれないな~。グラタンを作ろうっと。黒崎さんに差し入れを持って行こう」

 理久への納品期日は5日後だ。うちが利用している”セイキュー自然派マーケット”で、沢山の牛乳を頼んだから、宅配担当の人が驚いていた。事情を話すと笑ってもらえた。これなら気が楽だ。久弥のアイデアが好きだと実感した。
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