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ここに俺達がいることを知っているのに、どう思われてもお構いなしだと、朝陽自身が口にした。黒崎から咎められるかな?そういう素振りを一瞬だけ見せた。黒崎は何も言わなかった。相槌も首すら振らない。ただ静かに二人のことを見守っていた。
(あれ……、白くなった……)
どういうことだろう?噴水全体に新しい光が差し込んできた。外灯からは差さないようにしてあるのに、穏やかなし水ぶきが白く輝いている。この辺りを見回して理由を探していると、俺達の斜め後ろに立っている一貴さんが、そばの外灯の向きを変えていることに気づいた。
「カズ兄さーん。綺麗な光になったね……」
「ああ。どうせなら。……足元が暗い。せっかく、朝陽君が溜まっているものを吐き出せている。二葉にぶつけたかったのか。母親じゃなくて……」
朝陽の口から繰り返し出されたのは、烏丸真琴という名前だ。お母さんではない。その理由を知る必要はない。二人の間だけで伝わるもので、自分は立ち入るべきではない。きっと黒崎も同じ考えを持っている。
「お姉ちゃん!分かってくれよ!今はお兄ちゃんって呼びたくない」
「あさひーー。話は分かった。お母さんに話したいのか?違うだろう?恨み言はやめておけ。価値観の違いっていうことだ。その中で愛されただけで、お母さんには悪意がない。何が正しいのかは……、基準なんかない。暴力を振るわれなかった。食べるものに困らなかった。学校も通えた」
「当たり前のことだ!流されるままに子供を作って、その時は産みたかったからって押し通して産んで、結局は育てられない。ひどいことをしなかっただけでもいいって?そうだな。お父さんがいるから育ててもらえる。実際にそうなった!」
「大黒柱はお母さんだった。役割分担ってことだ。侮辱するな。お前の言っている意味はそうだぞ」
「優しいお母さんだと思い込んでいたよな。俺達。他の家のことを知らないから。たまに優しくされて嬉しくて。病気があるから仕方がないって思って育ってきた。支えないといけない。薬も飲んでいた。……実習先で理解できた。いくらでもいるぞ。睡眠薬を飲んで頑張っている人が。仕事を辞めた人もいる。あの烏丸真琴はな、自分の性格が災いして、ボケツを掘っているんだ!今でもそうだ。もうすぐ事務所が潰れるんじゃないか……」
「もう言うな。俺たちには関係ない。……他に何かあったのか?この際だから話してくれ。ううん。吐き出してみろ。こっちに来いよ。髪の毛を拭いてやる……」
朝陽のことを、噴水から離れるように促した。すでに濡れている朝陽の髪の毛を拭こうと、二葉が着ている上着を脱いだ。すると、右腕の傷跡がはっきりと見えた。すでに白くなっている。長い線として跡に残ってしまった。それを見た朝陽がうめき声をあげた。そして、二葉の左腕をつかんだ。
「……これは休みなく働いている手だ。シャーペンの跡がついて、ボコってなっててもいい。お兄ちゃんは漫画を描くのが好きだから、そうなるんだ。何が恥ずかしい?……だからさ、もう自傷に使うな。手がかわいそうだ!どんな思いか想像してみろ。一生懸命に動かしてきたのに。自分の身体だからいいって?勝手なことを言うな!お兄ちゃんの身体であって、自分のものじゃない。生まれた時に貰ったんだ。……俺はそう思っている。実習している間に分かった」
「うん。いけないことをした自覚がある。自分に謝った。まだ……お兄ちゃんたちには謝っていない」
「それは今話すことじゃない!」
「聞かせてくれよ。もっと話を聞きたい」
「今のお兄ちゃんには指がある。動かせる。足もそうだよ。歩けるんだ。どうして閉じこもろうとするだよ?景色が見えているじゃないか。噴水が綺麗だ!本当に見ているのか?外に出て行けよ!」
「うん。最近分かったことだよ。贅沢なことをしていた。こんな庭の中に住んでいるのにって。これは大事な指だ。分かっている。今はもっと……」
楽器を弾く指。絵を描く指。料理をつくる。転んだ時に身体を支える。誰かが熱を出した時、どれぐらいの高さだろうかと、指先で触れて知ろうとする。ごめんねと手を繋ぐ。そういう大事な指だと、朝陽が言った。
(あれ……、白くなった……)
どういうことだろう?噴水全体に新しい光が差し込んできた。外灯からは差さないようにしてあるのに、穏やかなし水ぶきが白く輝いている。この辺りを見回して理由を探していると、俺達の斜め後ろに立っている一貴さんが、そばの外灯の向きを変えていることに気づいた。
「カズ兄さーん。綺麗な光になったね……」
「ああ。どうせなら。……足元が暗い。せっかく、朝陽君が溜まっているものを吐き出せている。二葉にぶつけたかったのか。母親じゃなくて……」
朝陽の口から繰り返し出されたのは、烏丸真琴という名前だ。お母さんではない。その理由を知る必要はない。二人の間だけで伝わるもので、自分は立ち入るべきではない。きっと黒崎も同じ考えを持っている。
「お姉ちゃん!分かってくれよ!今はお兄ちゃんって呼びたくない」
「あさひーー。話は分かった。お母さんに話したいのか?違うだろう?恨み言はやめておけ。価値観の違いっていうことだ。その中で愛されただけで、お母さんには悪意がない。何が正しいのかは……、基準なんかない。暴力を振るわれなかった。食べるものに困らなかった。学校も通えた」
「当たり前のことだ!流されるままに子供を作って、その時は産みたかったからって押し通して産んで、結局は育てられない。ひどいことをしなかっただけでもいいって?そうだな。お父さんがいるから育ててもらえる。実際にそうなった!」
「大黒柱はお母さんだった。役割分担ってことだ。侮辱するな。お前の言っている意味はそうだぞ」
「優しいお母さんだと思い込んでいたよな。俺達。他の家のことを知らないから。たまに優しくされて嬉しくて。病気があるから仕方がないって思って育ってきた。支えないといけない。薬も飲んでいた。……実習先で理解できた。いくらでもいるぞ。睡眠薬を飲んで頑張っている人が。仕事を辞めた人もいる。あの烏丸真琴はな、自分の性格が災いして、ボケツを掘っているんだ!今でもそうだ。もうすぐ事務所が潰れるんじゃないか……」
「もう言うな。俺たちには関係ない。……他に何かあったのか?この際だから話してくれ。ううん。吐き出してみろ。こっちに来いよ。髪の毛を拭いてやる……」
朝陽のことを、噴水から離れるように促した。すでに濡れている朝陽の髪の毛を拭こうと、二葉が着ている上着を脱いだ。すると、右腕の傷跡がはっきりと見えた。すでに白くなっている。長い線として跡に残ってしまった。それを見た朝陽がうめき声をあげた。そして、二葉の左腕をつかんだ。
「……これは休みなく働いている手だ。シャーペンの跡がついて、ボコってなっててもいい。お兄ちゃんは漫画を描くのが好きだから、そうなるんだ。何が恥ずかしい?……だからさ、もう自傷に使うな。手がかわいそうだ!どんな思いか想像してみろ。一生懸命に動かしてきたのに。自分の身体だからいいって?勝手なことを言うな!お兄ちゃんの身体であって、自分のものじゃない。生まれた時に貰ったんだ。……俺はそう思っている。実習している間に分かった」
「うん。いけないことをした自覚がある。自分に謝った。まだ……お兄ちゃんたちには謝っていない」
「それは今話すことじゃない!」
「聞かせてくれよ。もっと話を聞きたい」
「今のお兄ちゃんには指がある。動かせる。足もそうだよ。歩けるんだ。どうして閉じこもろうとするだよ?景色が見えているじゃないか。噴水が綺麗だ!本当に見ているのか?外に出て行けよ!」
「うん。最近分かったことだよ。贅沢なことをしていた。こんな庭の中に住んでいるのにって。これは大事な指だ。分かっている。今はもっと……」
楽器を弾く指。絵を描く指。料理をつくる。転んだ時に身体を支える。誰かが熱を出した時、どれぐらいの高さだろうかと、指先で触れて知ろうとする。ごめんねと手を繋ぐ。そういう大事な指だと、朝陽が言った。
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