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やっと朝陽が泣き止んだ。何かを囁きかけるような仕草を見せたから、二葉が顔を近づけて聞き取り始めた。そして、さっと顔を上げて、朝陽の肩を押した。ママのことを言ったのだろうか?黒崎が足を踏み出したが、すぐに止まった。俺がバリケードになったようだ。
「朝陽……、何を言った?お母さんがって……」
「大事なことを否定したのが、俺達のお母さんだよ。二葉兄ちゃんは賢い人だ。圭一兄ちゃんは凄い。俺は真面目じゃないけど……。本当に、あの女が俺達を産んだのかな?反面教師にも度が過ぎる。……叱ってくれよ!」
「朝陽。そんなことを言わないでいいのよ」
「……お兄ちゃん?」
「……はい。一瞬だけ戻ってあげたぞ。二葉ちゃんに伝えたかったんだろう?だから、そうなってみた。……この空には天国は存在しないよ。お母さんが地獄に落ちるって言いたいんだろー?それも存在しない。でも、俺達はお母さんを選んで生まれてきた。不思議だな。……そう突き詰めて考えるな!俺達はここにいる。生活している。今日はお前から怒られた。ギャラリーが息を忘れている。でも、俺は恥ずかしいとは思っていない。お前のこともだ。誇らしい。それでいい。喧嘩じゃないぞ。価値観のすり合わせだ。泣けよ!ビービー泣け!」
「お兄ちゃん……っ」
「いいから……っ」
二葉が朝陽の身体を押して、紅葉したナツツバキの葉っぱが落ちた地面に寝転がした。そして、覆いかぶさって動きを阻み、朝陽の頬をつねって、頭をグリグリと刺激した。不意を突かれた朝陽は抵抗できなくて、せめて両足をばたつかせることで、形勢を保とうとしている。
それだけしかしていない。二葉の身体を少しも蹴ろうとしない。うまく離れようとしている。それに気づいた二葉が顔をしかめた。そして、初めて声を荒げたのを見た。
「お前なあ!女の身体を気にしているのか?」
「当たり前だ!俺は医者になる。どれだけ力の差があるのか知っている。アスリートじゃない、日常生活動作のみ。力の差が歴然だ。……悔しいだとーー?生まれた時にもらった身体に失礼だ。……俺は心も体も同性だ。気持ちなんか分からない。分かるわけがない。でも、大事な体だってことは、自信を持って言える!」
「いたたたた……。今度は倒したのか……。女の身体なのに」
「我慢しろよ」
「言っていることが……。ええ?」
朝陽が二葉の身体を抱きしめた。いくらたくさんの葉っぱの上に寝転がっているとはいえ、冷たい地面の硬さは感じる。さらに、二葉の身体を守る態勢をとった。今度は嫌そうな声があがっている。二人の声質が似ているから、ここからだと聞き分けづらい。外見は似ていないのに。
「あさひーー、気色悪いことをするな……」
「腕枕じゃないぞ。ボールから守ってやっている。兄ちゃんはそそっかしいからな、つまづいて転びそうだ」
「だったらなーー、向こうに転がせばいい。ほーーら!」
ガサ……ダン……トン……。
そばにあったボールを取り、二葉が噴水の方に転がした。そのボールが跳ねる音が遠ざかり、2人の息遣いも消えた時、地面からドタ!という音が立った。今度は二葉が朝陽の身体を押し倒して、小突き合い始めた。
「黒崎さん……。笑っているの?」
「ああ……、初めて見た」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。一貴さんは淡々としたままで、こっちに歩いて来た羽音さんを招き入れた。とっさに俺が動こうとすると、羽音さんの方から止められた。数枚のバスタオルと、厚手のブランケットを抱えているのに。
「夏樹君。気にしないで。可愛いね!」
「うん。ありがとう。俺の分ですか……」
「黒崎さんに嫉妬されるかな?これでぐらいいでしょう?ははは」
温かいブランケットを羽織らせてもらった。薄いグレー色のものだ。あの2人が疲れ切る前に止めようと話していると、また動き出しそうな勢いになり始めた。
「朝陽……、何を言った?お母さんがって……」
「大事なことを否定したのが、俺達のお母さんだよ。二葉兄ちゃんは賢い人だ。圭一兄ちゃんは凄い。俺は真面目じゃないけど……。本当に、あの女が俺達を産んだのかな?反面教師にも度が過ぎる。……叱ってくれよ!」
「朝陽。そんなことを言わないでいいのよ」
「……お兄ちゃん?」
「……はい。一瞬だけ戻ってあげたぞ。二葉ちゃんに伝えたかったんだろう?だから、そうなってみた。……この空には天国は存在しないよ。お母さんが地獄に落ちるって言いたいんだろー?それも存在しない。でも、俺達はお母さんを選んで生まれてきた。不思議だな。……そう突き詰めて考えるな!俺達はここにいる。生活している。今日はお前から怒られた。ギャラリーが息を忘れている。でも、俺は恥ずかしいとは思っていない。お前のこともだ。誇らしい。それでいい。喧嘩じゃないぞ。価値観のすり合わせだ。泣けよ!ビービー泣け!」
「お兄ちゃん……っ」
「いいから……っ」
二葉が朝陽の身体を押して、紅葉したナツツバキの葉っぱが落ちた地面に寝転がした。そして、覆いかぶさって動きを阻み、朝陽の頬をつねって、頭をグリグリと刺激した。不意を突かれた朝陽は抵抗できなくて、せめて両足をばたつかせることで、形勢を保とうとしている。
それだけしかしていない。二葉の身体を少しも蹴ろうとしない。うまく離れようとしている。それに気づいた二葉が顔をしかめた。そして、初めて声を荒げたのを見た。
「お前なあ!女の身体を気にしているのか?」
「当たり前だ!俺は医者になる。どれだけ力の差があるのか知っている。アスリートじゃない、日常生活動作のみ。力の差が歴然だ。……悔しいだとーー?生まれた時にもらった身体に失礼だ。……俺は心も体も同性だ。気持ちなんか分からない。分かるわけがない。でも、大事な体だってことは、自信を持って言える!」
「いたたたた……。今度は倒したのか……。女の身体なのに」
「我慢しろよ」
「言っていることが……。ええ?」
朝陽が二葉の身体を抱きしめた。いくらたくさんの葉っぱの上に寝転がっているとはいえ、冷たい地面の硬さは感じる。さらに、二葉の身体を守る態勢をとった。今度は嫌そうな声があがっている。二人の声質が似ているから、ここからだと聞き分けづらい。外見は似ていないのに。
「あさひーー、気色悪いことをするな……」
「腕枕じゃないぞ。ボールから守ってやっている。兄ちゃんはそそっかしいからな、つまづいて転びそうだ」
「だったらなーー、向こうに転がせばいい。ほーーら!」
ガサ……ダン……トン……。
そばにあったボールを取り、二葉が噴水の方に転がした。そのボールが跳ねる音が遠ざかり、2人の息遣いも消えた時、地面からドタ!という音が立った。今度は二葉が朝陽の身体を押し倒して、小突き合い始めた。
「黒崎さん……。笑っているの?」
「ああ……、初めて見た」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。一貴さんは淡々としたままで、こっちに歩いて来た羽音さんを招き入れた。とっさに俺が動こうとすると、羽音さんの方から止められた。数枚のバスタオルと、厚手のブランケットを抱えているのに。
「夏樹君。気にしないで。可愛いね!」
「うん。ありがとう。俺の分ですか……」
「黒崎さんに嫉妬されるかな?これでぐらいいでしょう?ははは」
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