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28-19(黒崎視点)
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13時半。
会場に着いた。ホテルの一室を借りているそうだ。バルーンが所々に飾られており、華やかだ。飲食も出来るようで、式典の出席者の後ろ側にテーブルが用意されている。外にした方が開放感があるだろうが、気温が低いため、室内を選んだのだろう。
すでに式典は始まっている。会長であるフェリックス氏の挨拶がされている。俺は決められた席に着き、その挨拶を聞いた。彼の座る席は俺の隣だ。ほんの数時間前の出来事を無かったことに出来るだろうか。社員に気づかれてはいけない。
フェリックス氏が席に戻ってきた。握手は済んだことになっている。ハグでもしておこうか。フェリックス氏が俺の肩を叩いて、ねぎらう仕草をした。俺は軽く頷き、応じる仕草をした。これでいいだろう。
それにしても、華やかな空間だ。おとぎの国のような飾りがいたる場所に飾られている。キャラクターをモチーフにした菓子を提供する会社だ。夢も売っている。いや、扱っているという言い方がいいだろう。
ふと、右側に置いてあるバスケットフラワーに気づいた。アントンによく似た人形が添えられている。夏樹に持って帰れないだろうか。
そこで、自分が必要としていることに気づいた。22歳当時の俺はアントンが消えてしまうことを悲しんだ。涙も流した。素直に認められる。復刻版が発売された後、通常商品に出来ないかと考えた。
(うちで発売できないか?考える余地はある……)
ドイツと日本の両方で発売したい。菓子の形状では、大量生産が難しい。せめてキャラクターだけでも、日本に来させたい。シャルロットとジュリエットの従兄弟というのはどうだろうか。そこまで考えて、口元に笑みが浮かんだ。俺は昔から変わらなかったということに気づけたからだ。冷たい目をした青年だと思っていた。そうでもないだろう。当時の自分に会ったらこう言いたい。ビービー泣くなと。
式典が滞ることなく進んでいる。俺の挨拶の番が来た。壇上に上がり、スピーチを始めた。語った内容は、15年前の会社の合併に関わった者であることと、優良企業大賞受賞の祝い、そして、アントンの復活の祝いの言葉だ。バーテルス氏が言うとおり、俺が入院していることは知れ渡っているようだ。心配そうな顔をして見つめられている。温かな会社だ。不思議と咳が出そうにない。精神的なことも関わっているのだろう。そして、満場の拍手に送られて、席に戻った。迎えてくれたのは、フェリックス氏と社長だ。挨拶を交わし合い、席に着いた。
そして、式典が無事に終了し、出席者に飲食が提供された。俺は軽食をつまみ、飲み込んだ。そして、入れたての紅茶を飲んだ。廊下にはバーテルス氏が待っていた。俺のことを見て、微笑みながら。
「圭一。顔色が良い。さすがだな」
「そうか?お母さんのスイーツショップに行く日を変えても良いか?」
「もちろんだ。母もそうしてくれと言うだろう。今日は良かった。君が出席できたことを、専務が喜んでいる。こっちに来たぞ」
「ああ……」
振り返ると、その専務がそばにいた。懐かしいと言って、ハグをした。アントンを復刻版だけではなく、通常商品として発売できないかと持ちかけると、笑顔が返ってきた。そして、俺の体調を心配した。
「一日入院だと聞いた。立っているのは平気なのか?」
「大丈夫です」
「圭一。無理はいけない。病院に帰ろう」
「ここでもっと話をしていきたい」
「またの機会があるだろう?もう来ないというわけはないだろう?」
「そうだな……」
バーテルス氏の言い方に吹き出して笑った。専務もだ。その後、俺達に写真撮影の申し出があった。もちろんだと答えて、専務と握手をしている姿がカメラに収められた。そして、バーテルス氏が心配する中、数人と話をして、会場を後にした。今日の写真は後日送ってもらえる。
22歳当時の自分が未来を知ることができたなら、どんなに良かっただろう。多くの人と手を振り合い、バーテルス氏の車に乗り、病院に向かった。
会場に着いた。ホテルの一室を借りているそうだ。バルーンが所々に飾られており、華やかだ。飲食も出来るようで、式典の出席者の後ろ側にテーブルが用意されている。外にした方が開放感があるだろうが、気温が低いため、室内を選んだのだろう。
すでに式典は始まっている。会長であるフェリックス氏の挨拶がされている。俺は決められた席に着き、その挨拶を聞いた。彼の座る席は俺の隣だ。ほんの数時間前の出来事を無かったことに出来るだろうか。社員に気づかれてはいけない。
フェリックス氏が席に戻ってきた。握手は済んだことになっている。ハグでもしておこうか。フェリックス氏が俺の肩を叩いて、ねぎらう仕草をした。俺は軽く頷き、応じる仕草をした。これでいいだろう。
それにしても、華やかな空間だ。おとぎの国のような飾りがいたる場所に飾られている。キャラクターをモチーフにした菓子を提供する会社だ。夢も売っている。いや、扱っているという言い方がいいだろう。
ふと、右側に置いてあるバスケットフラワーに気づいた。アントンによく似た人形が添えられている。夏樹に持って帰れないだろうか。
そこで、自分が必要としていることに気づいた。22歳当時の俺はアントンが消えてしまうことを悲しんだ。涙も流した。素直に認められる。復刻版が発売された後、通常商品に出来ないかと考えた。
(うちで発売できないか?考える余地はある……)
ドイツと日本の両方で発売したい。菓子の形状では、大量生産が難しい。せめてキャラクターだけでも、日本に来させたい。シャルロットとジュリエットの従兄弟というのはどうだろうか。そこまで考えて、口元に笑みが浮かんだ。俺は昔から変わらなかったということに気づけたからだ。冷たい目をした青年だと思っていた。そうでもないだろう。当時の自分に会ったらこう言いたい。ビービー泣くなと。
式典が滞ることなく進んでいる。俺の挨拶の番が来た。壇上に上がり、スピーチを始めた。語った内容は、15年前の会社の合併に関わった者であることと、優良企業大賞受賞の祝い、そして、アントンの復活の祝いの言葉だ。バーテルス氏が言うとおり、俺が入院していることは知れ渡っているようだ。心配そうな顔をして見つめられている。温かな会社だ。不思議と咳が出そうにない。精神的なことも関わっているのだろう。そして、満場の拍手に送られて、席に戻った。迎えてくれたのは、フェリックス氏と社長だ。挨拶を交わし合い、席に着いた。
そして、式典が無事に終了し、出席者に飲食が提供された。俺は軽食をつまみ、飲み込んだ。そして、入れたての紅茶を飲んだ。廊下にはバーテルス氏が待っていた。俺のことを見て、微笑みながら。
「圭一。顔色が良い。さすがだな」
「そうか?お母さんのスイーツショップに行く日を変えても良いか?」
「もちろんだ。母もそうしてくれと言うだろう。今日は良かった。君が出席できたことを、専務が喜んでいる。こっちに来たぞ」
「ああ……」
振り返ると、その専務がそばにいた。懐かしいと言って、ハグをした。アントンを復刻版だけではなく、通常商品として発売できないかと持ちかけると、笑顔が返ってきた。そして、俺の体調を心配した。
「一日入院だと聞いた。立っているのは平気なのか?」
「大丈夫です」
「圭一。無理はいけない。病院に帰ろう」
「ここでもっと話をしていきたい」
「またの機会があるだろう?もう来ないというわけはないだろう?」
「そうだな……」
バーテルス氏の言い方に吹き出して笑った。専務もだ。その後、俺達に写真撮影の申し出があった。もちろんだと答えて、専務と握手をしている姿がカメラに収められた。そして、バーテルス氏が心配する中、数人と話をして、会場を後にした。今日の写真は後日送ってもらえる。
22歳当時の自分が未来を知ることができたなら、どんなに良かっただろう。多くの人と手を振り合い、バーテルス氏の車に乗り、病院に向かった。
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