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22時。
病院のベッドの上で寝返りを打った。眠れないでいる。俺の左手の甲には点滴の針が刺されている。子供の頃と同じ場所だ。これを懐かしいと思った。夕方、秘書から連絡が入った。23日の帰国の翌日は、俺に休みを取らせるそうだ。家に帰れば夏樹からベッドに入れられるだろう。今のうちに出来る仕事を片付け、病室のベッドに横になって一時間が経つ。普段なら眠気が起きるところだ。そこで、時計を見た。まだ22時だ。眠いはずがない。
ベッドの傍らには、式典の会場に飾られたあの人形が置かれている。社長に頼んだところ、あっさりとOKの返事がもらえた。さらに、日本には今日の土産を送るそうだ。社員向けに、バーテルスビスケット会社の人形だ。オフィスに飾るためだ。
(今日は出席して良かった……)
不思議なことに、この病室に入った直後、咳が出た。夏樹と電話をしている間もだ。随分と心配を掛けている。珍しく、父とも話した。どうだ?やっているか。ああ。まるで秘書時代のようだ。しかし、受け止め方は違う。口数の少ない人だ。そう思った。俺も同じだ。
夏樹は俺のことをどう思っているだろうか。俺は父と似ている。口数が少ない上に、言葉が足らないところもあると自覚している。離れた土地に来て、寂しいという感情も生まれた。しかし、素直に口に出来ない。電話でも強がった。電話の向こうは騒がしかった。一貴が原因だ。彼の作る料理を二葉が嫌がっている会話だった。それを夏樹が諫めていた。彼にはこの人形を渡して、機嫌を直してもらうことにしよう。
枕元のアントンを手に取った。凜々しい顔立ちの男の子ウサギだ。しかし、わずかに笑っているような気がする。今にも動き出して、喋りそうだ。そして、過去の思い出が昇華されていくようだ。
窓の外の空は真っ暗だ。怖いとは思わない。初めて黒崎家の部屋で寝たときは怖かった。今でも覚えている。人形は無くて、贈られた図鑑が机の上に置いてあった。飛行機のオモチャもあった。そして、初めて入院をしたときは悲しかった。誰も来てくれないと思っていた。朝になると拓海兄さんがスーツ姿で椅子に座り、俺のことを見ていた。どんなに心強いと思ったことか。これらの思い出も昇華されていった。
ベッドから出て、窓のそばに立った。ふと、父の家のリビングのドアが思い浮かんだ。重厚さをやめて、ガラスのドアに変えたことで、開放感が生まれた。あのリビングで、俺は菓子を食べていた。すると、拓海兄さんが来て、夕食が入らないぞと言われたことも思い出した。しかし、兄さんも一緒に菓子を食べた。内緒だぞと言いながら。
もう一度、父の家のリビングを思い浮かべた。今日はどんな話をするだろう。どんなことで笑い声が立つだろう。
(おやすみ……)
ベッドに戻った。ここにはいないが、そばにいる夏樹に声をかけるようにして、もう一度、目を閉じた。さらに昔の光景が思い浮かびながら、眠りの中に入っていった。
病院のベッドの上で寝返りを打った。眠れないでいる。俺の左手の甲には点滴の針が刺されている。子供の頃と同じ場所だ。これを懐かしいと思った。夕方、秘書から連絡が入った。23日の帰国の翌日は、俺に休みを取らせるそうだ。家に帰れば夏樹からベッドに入れられるだろう。今のうちに出来る仕事を片付け、病室のベッドに横になって一時間が経つ。普段なら眠気が起きるところだ。そこで、時計を見た。まだ22時だ。眠いはずがない。
ベッドの傍らには、式典の会場に飾られたあの人形が置かれている。社長に頼んだところ、あっさりとOKの返事がもらえた。さらに、日本には今日の土産を送るそうだ。社員向けに、バーテルスビスケット会社の人形だ。オフィスに飾るためだ。
(今日は出席して良かった……)
不思議なことに、この病室に入った直後、咳が出た。夏樹と電話をしている間もだ。随分と心配を掛けている。珍しく、父とも話した。どうだ?やっているか。ああ。まるで秘書時代のようだ。しかし、受け止め方は違う。口数の少ない人だ。そう思った。俺も同じだ。
夏樹は俺のことをどう思っているだろうか。俺は父と似ている。口数が少ない上に、言葉が足らないところもあると自覚している。離れた土地に来て、寂しいという感情も生まれた。しかし、素直に口に出来ない。電話でも強がった。電話の向こうは騒がしかった。一貴が原因だ。彼の作る料理を二葉が嫌がっている会話だった。それを夏樹が諫めていた。彼にはこの人形を渡して、機嫌を直してもらうことにしよう。
枕元のアントンを手に取った。凜々しい顔立ちの男の子ウサギだ。しかし、わずかに笑っているような気がする。今にも動き出して、喋りそうだ。そして、過去の思い出が昇華されていくようだ。
窓の外の空は真っ暗だ。怖いとは思わない。初めて黒崎家の部屋で寝たときは怖かった。今でも覚えている。人形は無くて、贈られた図鑑が机の上に置いてあった。飛行機のオモチャもあった。そして、初めて入院をしたときは悲しかった。誰も来てくれないと思っていた。朝になると拓海兄さんがスーツ姿で椅子に座り、俺のことを見ていた。どんなに心強いと思ったことか。これらの思い出も昇華されていった。
ベッドから出て、窓のそばに立った。ふと、父の家のリビングのドアが思い浮かんだ。重厚さをやめて、ガラスのドアに変えたことで、開放感が生まれた。あのリビングで、俺は菓子を食べていた。すると、拓海兄さんが来て、夕食が入らないぞと言われたことも思い出した。しかし、兄さんも一緒に菓子を食べた。内緒だぞと言いながら。
もう一度、父の家のリビングを思い浮かべた。今日はどんな話をするだろう。どんなことで笑い声が立つだろう。
(おやすみ……)
ベッドに戻った。ここにはいないが、そばにいる夏樹に声をかけるようにして、もう一度、目を閉じた。さらに昔の光景が思い浮かびながら、眠りの中に入っていった。
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