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28-23(夏樹視点)
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10月23日、水曜日。午前10時半。
今日、黒崎がドイツから帰国する。もちろん空港に迎えに来た。俺のそばには早瀬さんと悠人がいる。一貴さんは留守番だ。お義父さんの体調が少し悪くて、付き添ってもらっている。黒崎がこう言うだろう。一貴さんに頼むのは心配だと。しかし、いざとなれば、頼りになる人だ。早瀬さんに会いたがっていたから、来られなくてかわいそうではあった。
「まだかな~」
「混雑しているかも知れないよ。圭一さんの乗っている飛行機は着いたから、安心だね」
「あの人は人相が悪い時があるんだ。怪しまれて、入国できないかも」
「なつきーー。大丈夫だってば。喘息の発作が落ち着いて良かったね」
「うん。でも、帰ったら、すぐに寝てもらうんだから」
明日、黒崎は仕事の休みを取った。今日と明日では疲れが取れないかも知れない。病院にも連れて行かなくてはならない。俺のいないところで、どんな表情をしていただろう。安らかだっただろうか。それとも、威圧感満載の笑顔だっただろうか。いずれにせよ、ゆっくり休んでもらいたい。
「あ、来たよ!」
「黒崎さん……」
向こうの方から、背の高い男性が歩いてきた。ここを出発するときよりも荷物が増えている。お土産に違いない。さっそく駆け寄っていった。
「黒崎さーーん!おかえり!」
「ただいま」
抱きつくと、荷物を下ろして、背中に両腕を回してくれた。俺はぎゅうぎゅうと抱きつき、どんなに寂しかったことかと言った。黒崎が笑っている。そして、俺の後ろにいる2人に声をかけた。フェリックスさんとのことは知っている。
今回は悲しい思い出ができた。そして、黒崎はアントン君に再会することができた。バーテルスさんとは絵本のフェアに出かけて、色んなアントン君を見たそうだ。笑顔が物語っている。楽しかったのだと。スイーツショップではバーテルスさんのお母さん達に挨拶が出来て、焼きたてのクッキーを食べさせてもらったそうだ。そんな黒崎を独占すること無く、2人に譲り、再会を楽しんだ。
「圭一さん。ごめんね。俺が楽譜を預けたことで……」
「いや、かまわない。お兄ちゃんが突き返してやった気分になれた」
黒崎が何でもないと言った。もしかすると、早瀬さんは黒崎のことを”お兄ちゃん“と呼んでいたかも知れないと思うと、胸が痛んだ。バーテルスさんはお兄さんだが、兄弟だという名乗りはしていないそうだ。しかし、本人達は知っている。その上で、親しく付き合いをしたいと、両方が言った。
「ゆうとーー。何か食べてから帰るだろ?俺達もそうしようって言っているんだ。一緒にどう?」
「うん。黒崎さん、お腹が空いているんですか?どうですか?体調は」
「ありがとう。随分と良くなった。食べて帰ろう」
「どこにする?せっかくだから、空港の中がいいよね~」
「第二ターミナルに、カツ丼とざるそばのセットがあるよ」
「げええええっ。ざるそばは食べたくないよーー」
早瀬さんの提案に、悠人が声を上げた。一貴さんと遊びに行くと、必ずざるそばを食べるからだ。俺達も、しばらくざるそばは見なくても良いと思った。こういうやりとりは安心する。黒崎も同じなようだ。俺の手を握った。
「おかえりなさい」
「ただいま」
もう一度、挨拶を交わし合った。しばらく黒崎の手に触れていなくて、寂しかった。毎日のように電話で話した。近くにいるみたいになっていた。しかし、ベッドで寝返りを打っても、黒崎はいなくて、その度に留守なんだと思った。そして今、黒崎がここにいる。握った手の体温を大事に思いながら、お店へ歩いて行った。
今日、黒崎がドイツから帰国する。もちろん空港に迎えに来た。俺のそばには早瀬さんと悠人がいる。一貴さんは留守番だ。お義父さんの体調が少し悪くて、付き添ってもらっている。黒崎がこう言うだろう。一貴さんに頼むのは心配だと。しかし、いざとなれば、頼りになる人だ。早瀬さんに会いたがっていたから、来られなくてかわいそうではあった。
「まだかな~」
「混雑しているかも知れないよ。圭一さんの乗っている飛行機は着いたから、安心だね」
「あの人は人相が悪い時があるんだ。怪しまれて、入国できないかも」
「なつきーー。大丈夫だってば。喘息の発作が落ち着いて良かったね」
「うん。でも、帰ったら、すぐに寝てもらうんだから」
明日、黒崎は仕事の休みを取った。今日と明日では疲れが取れないかも知れない。病院にも連れて行かなくてはならない。俺のいないところで、どんな表情をしていただろう。安らかだっただろうか。それとも、威圧感満載の笑顔だっただろうか。いずれにせよ、ゆっくり休んでもらいたい。
「あ、来たよ!」
「黒崎さん……」
向こうの方から、背の高い男性が歩いてきた。ここを出発するときよりも荷物が増えている。お土産に違いない。さっそく駆け寄っていった。
「黒崎さーーん!おかえり!」
「ただいま」
抱きつくと、荷物を下ろして、背中に両腕を回してくれた。俺はぎゅうぎゅうと抱きつき、どんなに寂しかったことかと言った。黒崎が笑っている。そして、俺の後ろにいる2人に声をかけた。フェリックスさんとのことは知っている。
今回は悲しい思い出ができた。そして、黒崎はアントン君に再会することができた。バーテルスさんとは絵本のフェアに出かけて、色んなアントン君を見たそうだ。笑顔が物語っている。楽しかったのだと。スイーツショップではバーテルスさんのお母さん達に挨拶が出来て、焼きたてのクッキーを食べさせてもらったそうだ。そんな黒崎を独占すること無く、2人に譲り、再会を楽しんだ。
「圭一さん。ごめんね。俺が楽譜を預けたことで……」
「いや、かまわない。お兄ちゃんが突き返してやった気分になれた」
黒崎が何でもないと言った。もしかすると、早瀬さんは黒崎のことを”お兄ちゃん“と呼んでいたかも知れないと思うと、胸が痛んだ。バーテルスさんはお兄さんだが、兄弟だという名乗りはしていないそうだ。しかし、本人達は知っている。その上で、親しく付き合いをしたいと、両方が言った。
「ゆうとーー。何か食べてから帰るだろ?俺達もそうしようって言っているんだ。一緒にどう?」
「うん。黒崎さん、お腹が空いているんですか?どうですか?体調は」
「ありがとう。随分と良くなった。食べて帰ろう」
「どこにする?せっかくだから、空港の中がいいよね~」
「第二ターミナルに、カツ丼とざるそばのセットがあるよ」
「げええええっ。ざるそばは食べたくないよーー」
早瀬さんの提案に、悠人が声を上げた。一貴さんと遊びに行くと、必ずざるそばを食べるからだ。俺達も、しばらくざるそばは見なくても良いと思った。こういうやりとりは安心する。黒崎も同じなようだ。俺の手を握った。
「おかえりなさい」
「ただいま」
もう一度、挨拶を交わし合った。しばらく黒崎の手に触れていなくて、寂しかった。毎日のように電話で話した。近くにいるみたいになっていた。しかし、ベッドで寝返りを打っても、黒崎はいなくて、その度に留守なんだと思った。そして今、黒崎がここにいる。握った手の体温を大事に思いながら、お店へ歩いて行った。
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