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13時半。
チャラララーー、タタタッター。
バレンタインイベントの会場へ到着した。バンドコンテストと同じ施設だだ。さすがはIKUとタッグを組んだイベントだ。完成度の高い仮装行列が通り過ぎた。IKUに勤務する人たちだと聞いている。ここから右へ曲がれば、あのコンテストの会場へ行ける。
ビアノとバイオリンの音色が会場内に流れ始めた。モニター画面では、ベテルギウスの新曲PVが流れ始めた。今日はクラシック楽団のミニコンサートがあり、ステージ機材がセットされている。
「なつきー。ベテルギウスの新曲プロモだよ!」
「わああーー、今回もカッコいいね」
「あれ、向こうだよね?」
「こっちじゃない?」
「クンクン。チョコの匂いがするからこっちだよ」
「そっか。行ってみよう~」
俺達だけだと迷子になるのは仕方がない。方向音痴なりに工夫して目的地にたどり着けるようにしている。一緒にいるのが夏樹だと安心する。間違えようが正しかろうが、いろんなものを見つけては話しかけて来るから、慌てている暇がない。
「なつきー。こっちだよ?」
「うん。あのジュースを買いに来ようよ。わあーー、お菓子の家があるよ!」
「わわわ、そっちへ行くなよ。こっちでお菓子を受け取ってから入るんだよ。入場手続きというものを……」
「そうだね~。悠人は頼りになるね」
「どこから入ろうとしたの?」
「向こうのドアから。ウサギの……。入ろうね」
「ふむふむ。緊張感がないなあ」
今度は率先して受付へ向かった。夏樹の分のお菓子を受け取って入場した。彼の上着も持ってあげているから、まるで早瀬のようだ。昨日は黒崎さんとメールのやり取りをした時、夏樹のことを頼むと言われた。
(夏樹は大学入学するまで、警戒心の塊だった。悠人君が一緒だと安心している……)
(裕理さんからも聞いています。信じられなくって。大学にいるとき、みんなと話していますよ。……いいえ、負担になっていません。俺の方も安心できるので)
こういう会話をした。俺達は補い合う関係だと、遠藤さんから教えてもらった。どっちかがヘコんだら、片方が力を出す。交互になるからバランスが取れる。
高校時代のバンド活動とは反対だ。メンバー同士がぶつかってばかりで、せっかくやっているのに、足の引っ張り合いも起きた。しかしIRON ANGELでは経験しなかった。この先も活動したかった。
「わあーーー。メルヘンの世界だよ~」
「うん」
たしかに、メルヘンの世界が広がっている。右側のエリアはお菓子の家が並び、左側にはシックな雰囲気のエリアになっている。大人同士も楽しめるようにしているのだろう。バルーンアートが並んでいる向こうには、スイーツの出店が見えている。10店舗はありそうだ。
受付カウンターに立っているのは、営業企画部の人達だ。平田さんの姿もある。去年の木馬のことを思い出していると、大きく手を振ってくれた。
「2人ともーー!」
「こんにちは!」
「こんにちはー」
「黒崎常務と早瀬部長代理が来る予定だよ。ゆっくりしていってよ」
「はい、ありがとうございます」
「おおーー!人力メリーゴーランドがあるよ!」
「んんー?」
これが見たかった。大きな輪っかを中心で支えている男性がいる。デコレーションケーキのようだ。台に乗ってクルクル回っている。その周りを馬の着ぐるみが走っている。
「去年のイベントでもやっていたんだよ。輪っかに紐を通してあるだろー?それを木馬メンバーズが持って、くるくる回っている仕組みだよー」
「へえ~。そんなことがあったんだね」
「あれを見に行こうよ」
「うんっ。わああ~、凝っているねえ」
4人の着ぐるみ木馬のうち、一人が男の子を背負って走っていた。社員の家族だろう。そばにスーツ姿の男性が立ち、写真を撮っている。木馬が歌っている歌から佐久弥がソロで歌っているフレーズが出てきて、周りから笑いが起こった。
「クルクルーー、クルクルーー」
「ららら~、メリーゴーランドが止まったー、木馬が逃げ出したーー」
「わーい!遊びに行くんだよね?」
「ららら~、お菓子の家へ行こうーー」
「わーーー!」
「こらー!安西ーー!」
「3人じゃ無理だぞ!」
木馬メンバーの一人が、男の子を背負ったまま走って行った。残された3人が、自分たちだけでは回せないと嘆いている。平田さんが逃亡した木馬を探しに行った。
「去年と同じだよ。平田さんが木馬をやってて、さっきみたいに逃走したんだ」
「だから今年はスーツを着ているんだね……」
3人では大変だろう。俺達は腕力がないが、5人いれば何とかなりそうだ。夏樹がそばへ行き、輪っかに通した紐を見つけて頷いた。
チャラララーー、タタタッター。
バレンタインイベントの会場へ到着した。バンドコンテストと同じ施設だだ。さすがはIKUとタッグを組んだイベントだ。完成度の高い仮装行列が通り過ぎた。IKUに勤務する人たちだと聞いている。ここから右へ曲がれば、あのコンテストの会場へ行ける。
ビアノとバイオリンの音色が会場内に流れ始めた。モニター画面では、ベテルギウスの新曲PVが流れ始めた。今日はクラシック楽団のミニコンサートがあり、ステージ機材がセットされている。
「なつきー。ベテルギウスの新曲プロモだよ!」
「わああーー、今回もカッコいいね」
「あれ、向こうだよね?」
「こっちじゃない?」
「クンクン。チョコの匂いがするからこっちだよ」
「そっか。行ってみよう~」
俺達だけだと迷子になるのは仕方がない。方向音痴なりに工夫して目的地にたどり着けるようにしている。一緒にいるのが夏樹だと安心する。間違えようが正しかろうが、いろんなものを見つけては話しかけて来るから、慌てている暇がない。
「なつきー。こっちだよ?」
「うん。あのジュースを買いに来ようよ。わあーー、お菓子の家があるよ!」
「わわわ、そっちへ行くなよ。こっちでお菓子を受け取ってから入るんだよ。入場手続きというものを……」
「そうだね~。悠人は頼りになるね」
「どこから入ろうとしたの?」
「向こうのドアから。ウサギの……。入ろうね」
「ふむふむ。緊張感がないなあ」
今度は率先して受付へ向かった。夏樹の分のお菓子を受け取って入場した。彼の上着も持ってあげているから、まるで早瀬のようだ。昨日は黒崎さんとメールのやり取りをした時、夏樹のことを頼むと言われた。
(夏樹は大学入学するまで、警戒心の塊だった。悠人君が一緒だと安心している……)
(裕理さんからも聞いています。信じられなくって。大学にいるとき、みんなと話していますよ。……いいえ、負担になっていません。俺の方も安心できるので)
こういう会話をした。俺達は補い合う関係だと、遠藤さんから教えてもらった。どっちかがヘコんだら、片方が力を出す。交互になるからバランスが取れる。
高校時代のバンド活動とは反対だ。メンバー同士がぶつかってばかりで、せっかくやっているのに、足の引っ張り合いも起きた。しかしIRON ANGELでは経験しなかった。この先も活動したかった。
「わあーーー。メルヘンの世界だよ~」
「うん」
たしかに、メルヘンの世界が広がっている。右側のエリアはお菓子の家が並び、左側にはシックな雰囲気のエリアになっている。大人同士も楽しめるようにしているのだろう。バルーンアートが並んでいる向こうには、スイーツの出店が見えている。10店舗はありそうだ。
受付カウンターに立っているのは、営業企画部の人達だ。平田さんの姿もある。去年の木馬のことを思い出していると、大きく手を振ってくれた。
「2人ともーー!」
「こんにちは!」
「こんにちはー」
「黒崎常務と早瀬部長代理が来る予定だよ。ゆっくりしていってよ」
「はい、ありがとうございます」
「おおーー!人力メリーゴーランドがあるよ!」
「んんー?」
これが見たかった。大きな輪っかを中心で支えている男性がいる。デコレーションケーキのようだ。台に乗ってクルクル回っている。その周りを馬の着ぐるみが走っている。
「去年のイベントでもやっていたんだよ。輪っかに紐を通してあるだろー?それを木馬メンバーズが持って、くるくる回っている仕組みだよー」
「へえ~。そんなことがあったんだね」
「あれを見に行こうよ」
「うんっ。わああ~、凝っているねえ」
4人の着ぐるみ木馬のうち、一人が男の子を背負って走っていた。社員の家族だろう。そばにスーツ姿の男性が立ち、写真を撮っている。木馬が歌っている歌から佐久弥がソロで歌っているフレーズが出てきて、周りから笑いが起こった。
「クルクルーー、クルクルーー」
「ららら~、メリーゴーランドが止まったー、木馬が逃げ出したーー」
「わーい!遊びに行くんだよね?」
「ららら~、お菓子の家へ行こうーー」
「わーーー!」
「こらー!安西ーー!」
「3人じゃ無理だぞ!」
木馬メンバーの一人が、男の子を背負ったまま走って行った。残された3人が、自分たちだけでは回せないと嘆いている。平田さんが逃亡した木馬を探しに行った。
「去年と同じだよ。平田さんが木馬をやってて、さっきみたいに逃走したんだ」
「だから今年はスーツを着ているんだね……」
3人では大変だろう。俺達は腕力がないが、5人いれば何とかなりそうだ。夏樹がそばへ行き、輪っかに通した紐を見つけて頷いた。
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