回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 カタカタ……。

 テーブルの上を片付けていると、すぐ近くから声を掛けられた。ジューススタンドの方で、藤沢が手を振っていた。その後ろからは、理久と如月も歩いて来た。理久の方を見て安心した。楽しそうにしているからだ。

「藤沢たちも来ていたんだねー。いつから?」
「ついさっきだよ。ライブの最後の方だけ観られたよ。一緒にやりたかったよ」
「3人が揃っているのを初めて見たよ」
「最近だよ。理久君と如月がインターンシップで知り合って、俺も仲間入りして集まっているんだよ」
「おおーー。藤沢は人気者だねー」
「どうしたの?ああ……。こんにちは!」

 藤沢を見て悲鳴をあげた女性グループがいた。モデルとして顔が知られているから、どこでも人気者だ。藤沢の方は全く動じることなく、挨拶をしながら手を振っている。条件反射だと言っていた。俺達も一緒に回ろうと言われたが、黒崎さんと早瀬が迎えに来るから断った。また今度、集まろうと声を掛け合った。


「5人で回らない?……あ、そろそろ帰るのか。黒崎さんとデートなんだね。悠人は早瀨さんと。いいなあ……」
「ふじさわー。君こそモテるだろー?」
「ううん。好きな子には振り向いてもらえない。……夏樹、どうしたの?」
「紹介したい子がいるんだ。そろそろ着くんだけどね」


 そういえば、まだ黒崎さんの妹を紹介してもらっていない。夏樹が出入口の方を向いて、さっと手を振った。ぞくぞくと入場してきた人の中に、女の子の2人連れを見つけた。

 どっちの子が妹さんだろう?と眺めた瞬間、びっくりして声が出なくなった。背の高い女の子の方が、黒崎さんと見分けがつかない顔立ちをしているからだ。性格も兄貴と似ているのだろうか?あの迫力のあるオーラが羨ましい。

「なつきー。見分けが付かないよ。似ているねーー」
「186センチと170センチ。体格差もあるのに?」
「ド迫力だからだよー」
「本人は好きで迫力を出していないよ~。悩んでいるんだ。うんうん。……ごめん。謝らなくて構わないよ。イジってあげてよ。そんなに人付き合いが上手じゃないそうなんだ……。だから俺と気が合っているんだ」
「ふむふむ……」

 たしかにそうかも知れない。一緒にいる女の子から背中に手を添えられて、行きましょうねと促されている。何かを諦めたような目をしている。ああいう事が起きてしまい、住み慣れた場所から引っ越してきたばかりだ。少しでも力になりたい。

「おーい。二葉ちゃん!こっちだよーー」
「夏樹君、遅くなってごめん!こんにちはー」
「はじめまして!」
「黒崎さんの妹だよ。大学3年生。都内に引っ越してきたんだ」
「初めまして。倉口二葉です。彼女は北岡志乃。中学からの友達なの」
「はじめまして!久田悠人です。お兄さんにはお世話になっています」
「こちらこそ、よろしくお願いします。……ええ。……ご丁寧に」

 女性には優しくすると決めている。さっそく夏樹から紹介されてあいさつした。ここでカッコ悪い面を見せたくない。初対面が肝心だ。その後の印象は変わらない。なるべく丁寧にと心がけて話していると、夏樹と藤沢が笑っていた。失礼だぞと、ブルーキックをした後、笑いが起こってしまった。

「もうーー、カッコ悪いだろーー」
「うへへ、ごめんね~。はいはい。この子は佐伯理久君だよ。藤沢修輔と如月涼介。俺と同じ一年生なんだ」

 二葉と藤沢たちが話を始めた。その間に北岡さんと話した。二葉は人見知りの面があるそうで、ハラハラしている様子だ。こういう風に心配してくれる友達がいてよかった。これが自然と口から出てしまい、あたふたした。すると、二葉が理久の方を見て表情を輝かせた。顔見知りだろうか。すると今度は、如月が2人の間に割って入った。

「倉口さんって、黒崎製菓のコンテストで入賞されませんでしたか?俺は如月涼介です。……千尋製菓にも出していたよね。入賞したよね?」
「はい。如月さんも入賞されていましたよね?」
「うん!そうなんだ!よかったら話さない?」
「でも、みんなと回った方が……。あの、佐伯君は……」
「……2つに分かれよう。30分後に合流はどう?」

 藤沢が気を利かせて、俺達を2つのグループに分けた。そして、如月が二葉を連れて向こうへ行った。夏樹が声をかけると笑っていた。大丈夫よと。藤沢は理久達と会場を回る。理久と二葉は顔見知りだろうか。理久に聞いてみると、初めて会うと言っていた。

「倉口さんとは後で話すよ!……あのメリーゴーランドが面白そうだね?」
「もうすぐ店じまいだよ。今のうちに見てきたら?」
「そうだね!みんな、行こうよ」

 理久がぱっと顔を明るくさせて、メリーゴーランドへと走って行った。夏樹と、そろそろ俺達に迎えが来るだろうと話していると、向かいから早瀬が歩いて来た。黒崎さんが枝川さんへ声をかけている。

「悠人君。楽しめたのか?」
「もちろんだよ!帰った後でゆっくり感想を聞かせてねー」
「……挨拶しなさい。あの魔法の言葉で」
「うん。……なつきー!ばいばい。またね。明日電話するよ!」
「ばいばーい。おやすみなさーい」

 さあ帰ろうかと微笑み合い、夏樹達と手を振って別れた。明日は運命の扉が待っている。絶対に夏樹の手を離さない。今日のステージを胸に刻んで、夢の世界である、この会場の扉を出た。現実と夢が混ざった世界へ進んで行くために。
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