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カタカタ、ジャーーー。
早瀬がキッチンで晩ご飯を作っている。いつもよりよりずっと遅めの時間だ。さっきまでベッドで寝ていたからだ。自分だけだ。疲れているだろうから、少し寝ておけと言われた。こうして支度をしてくれている間に、目が覚めて起きてきた。
「俺も手伝うよーー」
「今夜はゆっくりしておけ」
一緒に居たいからだ。たった一言が口に出せない。何かきっかけがあればいいのに。思いつかないから、背後から抱きついた。
規則正しいリズムを刻んでいる鼓動、ボールで卵を溶いてるリズム、頬に当たる方の感触。じっと感じていると、左右に動き始めた。いつもの調子が始まった。やっと口実ができた。
「ゆうとーー、動くぞ」
「はーーい。右かな?」
「右、右、後ろだ」
「おーー」
「右、右、後ろー」
「みぎ、みぎ、うしろー」
「ポテト、ポテト、ポテト」
「サラダ、サラダ、サラダーー!」
ズルズルと引きずられるようにして、後ろへ下がった。行き先はダイニングテーブルだ。テイクアウトのポテトサラを運んだ。俺が作った、きんぴらごぼうもある。密着した状態で歩いているから、あちこちに身体をぶつけそうになった。それでも離れる気は起こらない。
ひと通り運んだ後、いよいよオムレツ焼きタイムだ。出来たてを食べたいから、一番最後にやっている。今夜はデミグラスソースを使う。市販のものを鍋でグツグツ温める。
「デミグラスを混ぜていようかー?」
「今のままでいい。抱きついてくれ」
「早く食べたいもん。温めるよーー」
「危ないからだめだ。デミグラスソースは逃げないぞ。俺は逃げるぞ?」
「だめだだめだーー!」
エプロンを掴んだ。お互いに笑いっぱなしだ。オムレツを焼いてテーブルへ運び終わっても抱きついたままだ。普段なら恥ずかしいが、今夜は特別だ。
親愛なる雫を贈られて、思い出の可視光線でデビューする。こんなに素敵な機会を与えられた。ネガティブになってどうする?
(やばい。涙がでた。どうしよう?)
この涙はうれし涙だ。自分でいいのか?そんな意味も込められている。すると、このままの体制で回転を始めた。抱きついている腕をホールドされているから、全く逃げ出せない。親が子供をすがりつかせて遊んでいる図式だ。前に同じことをされて、怖くてやめてもらった。今だって怖い。物に当たりそうだ。
「ゆうとー、怖いか?」
「ひいいいいいっ。あああ……」
「おっと……」
「わわわ……」
もう少しでカウンターの角に当たるところだった。立ち止まって踏み留まれた。ずっと笑い続けている早瀬へと、足を振り上げた。ブルーキックをするためだ。
「裕理さん!トリャーー!」
「こら、あぶない」
「わわわ……っ。ひいいいいいっ」
ゴン!
足を振り上げたことで、思い切りヨロけてしまった。その結果、テーブルに頭をぶつけてしまった。早瀬に抱き留めてもらえたから、落っこちずに済んだ。それでも痛いものは痛い。ぶつけて転んで泣いている。いいことでも悪いことでも。どんな自分でもOKだ。
「たくさん食べて、0時を待とう」
「へへへ。うん!」
気を取り直して椅子に座った。そして、ホカホカのオムレツを前にして、幸せを先に噛みしめた。
早瀬がキッチンで晩ご飯を作っている。いつもよりよりずっと遅めの時間だ。さっきまでベッドで寝ていたからだ。自分だけだ。疲れているだろうから、少し寝ておけと言われた。こうして支度をしてくれている間に、目が覚めて起きてきた。
「俺も手伝うよーー」
「今夜はゆっくりしておけ」
一緒に居たいからだ。たった一言が口に出せない。何かきっかけがあればいいのに。思いつかないから、背後から抱きついた。
規則正しいリズムを刻んでいる鼓動、ボールで卵を溶いてるリズム、頬に当たる方の感触。じっと感じていると、左右に動き始めた。いつもの調子が始まった。やっと口実ができた。
「ゆうとーー、動くぞ」
「はーーい。右かな?」
「右、右、後ろだ」
「おーー」
「右、右、後ろー」
「みぎ、みぎ、うしろー」
「ポテト、ポテト、ポテト」
「サラダ、サラダ、サラダーー!」
ズルズルと引きずられるようにして、後ろへ下がった。行き先はダイニングテーブルだ。テイクアウトのポテトサラを運んだ。俺が作った、きんぴらごぼうもある。密着した状態で歩いているから、あちこちに身体をぶつけそうになった。それでも離れる気は起こらない。
ひと通り運んだ後、いよいよオムレツ焼きタイムだ。出来たてを食べたいから、一番最後にやっている。今夜はデミグラスソースを使う。市販のものを鍋でグツグツ温める。
「デミグラスを混ぜていようかー?」
「今のままでいい。抱きついてくれ」
「早く食べたいもん。温めるよーー」
「危ないからだめだ。デミグラスソースは逃げないぞ。俺は逃げるぞ?」
「だめだだめだーー!」
エプロンを掴んだ。お互いに笑いっぱなしだ。オムレツを焼いてテーブルへ運び終わっても抱きついたままだ。普段なら恥ずかしいが、今夜は特別だ。
親愛なる雫を贈られて、思い出の可視光線でデビューする。こんなに素敵な機会を与えられた。ネガティブになってどうする?
(やばい。涙がでた。どうしよう?)
この涙はうれし涙だ。自分でいいのか?そんな意味も込められている。すると、このままの体制で回転を始めた。抱きついている腕をホールドされているから、全く逃げ出せない。親が子供をすがりつかせて遊んでいる図式だ。前に同じことをされて、怖くてやめてもらった。今だって怖い。物に当たりそうだ。
「ゆうとー、怖いか?」
「ひいいいいいっ。あああ……」
「おっと……」
「わわわ……」
もう少しでカウンターの角に当たるところだった。立ち止まって踏み留まれた。ずっと笑い続けている早瀬へと、足を振り上げた。ブルーキックをするためだ。
「裕理さん!トリャーー!」
「こら、あぶない」
「わわわ……っ。ひいいいいいっ」
ゴン!
足を振り上げたことで、思い切りヨロけてしまった。その結果、テーブルに頭をぶつけてしまった。早瀬に抱き留めてもらえたから、落っこちずに済んだ。それでも痛いものは痛い。ぶつけて転んで泣いている。いいことでも悪いことでも。どんな自分でもOKだ。
「たくさん食べて、0時を待とう」
「へへへ。うん!」
気を取り直して椅子に座った。そして、ホカホカのオムレツを前にして、幸せを先に噛みしめた。
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