【完結】29歳で「売れ残り」とお見合い勧告されましたが、裏では最強のアルファ部長が「運命だ」と逃がしてくれません

Marine

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 エレベーターを降りて、スイートルームが並ぶ最上階の廊下を歩いた。
 長く広い廊下には上質なカーペット、大理石の壁、美術館にあるようなインテリア。

 突き当たりの重厚なドアにたどり着くと、桐生部長は「案内ご苦労、説明はいい」とベルボーイに告げた。
 彼は受け取ったカードキーをかざした。機械音と共にドアが開く――。

「……うわあっ……!」

​ 思わず声を上げてしまった。
 全面ガラス張りの窓の向こうに、真っ赤に染まった東京タワーがそびえ立ち、無数の高層ビルの灯りが、眼下に広がっている。

 あまりの非現実感に、足がすくみそうになった。
 俺は、とんでもない場所に連れてこられてしまったんじゃないか。

 部屋は間接照明で薄暗く、内装はダークで落ち着いている。
 だからこそ、目の前の夜景が浮き上がっているように見えた。
 
 俺は大きなガラス窓に近付いた。
 見れば見るほど、浮遊感がたまらない。

 このリビングはまるで映画館だった。
 夜景の真ん前に置かれたソファはゆったりとしていて、座り心地がよさそうだった。

 シュッ、と生地がこすれる音がした。
 振り向くと、桐生部長が無造作にジャケットを脱いで、ソファに放っていた。

「気に入ったか?」
「は、はい……凄すぎて……」

 彼は部屋のドアの前まで戻り、俺の目の前でゆっくりと内鍵を回した。
 ガチャリ
 重い金属音が鳴った。

 ――オートロックなのに、わざわざ内鍵まで回した?

「雨で濡れたな……シャワー、先に使わせてもらうぞ」
「は、はい……」

 片手でネクタイを緩めた彼の瞳は、熱を帯びて俺を射抜いた。
 それは腹を減らした肉食の雄、そのものだった。
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