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「立てるか?」
「大丈夫です」
差し出された手を横目に見つつ、普通に立とうとして――ガクンと腰が抜けた。
予期していたように、彼の腕が俊敏に伸びてきて、からだを支えてくれる。
「うそ……」
彼の腕の中で、産まれたての小鹿のように震える足を踏ん張った。
ショックだったのに、彼はなんだか嬉しそうに言った。
「これは帰りも抱えて行かないとな。とりあえず、湯に入るぞ」
ホテルのバスタブは大きくて、二人で入っても余裕だった。
その中でも、やはり彼は抱きかかえていてくれた。
彼の上に座っていることがどうしても落ち着かなくて、もぞりと動いたときに、自分の胸に真っ赤な痕がちりばめられていることに気づいた。
「わあっ、胸をしつこく舐めてると思ってたら……」
「徹底的にマーキングした。これで他の雄の前に胸を晒せないだろう」
「もともとそんなことしませんから」
――ん? なんかここ、サラッと流していい部分だったのだろうか。
彼を見ると、「お前も俺に付けるか? いいぞ」なんて言いながら笑っている。
あれ? 彼の瞳はもう普通のダークブラウンに戻っている。
今って混乱しているのか?
戸惑っているうちに、風呂からベッドまでも、抱っこで連れていかれてしまった。
そして、彼が出してきた予備のシーツにくるまって、ベッドに二人で転がった。
その後、夜景を見ながらルームサービスを食べた。
コンビニで350円のサンドイッチを買う予定だったのだが、届いたのは4800円のクラブハウスサンドイッチだった。
それをあーんされて……完全に子供扱いされている。
もちろん、どきどきしてしまって、味なんてよく分からなかった。
食事が終わると、彼は当然のように抱き込んできた。
なんでこんなに、片時も放したがらないんだろう。
こんなに当たり前のように抱きしめられて、キスされて……彼が混乱から解けたら、俺はどうすればいいんだ。
この熱を知ってしまって……一人の夜に……耐えられるのだろうか。
「今日はよく頑張ったな……その、腰は大丈夫か?」
「部長のせいじゃないですか……」
思わずそう返したら、彼は指を絡めて握り込んできた。
タクシーでした恋人繋ぎだ。
「……お前な、俺がここまでどれだけ手順を踏んだと思っている。それを一歩でも後戻りすることは許さない」
まるで、この先もこの関係が続くみたいな言い方だ。
今、彼は……混乱しているのか? それとも?
「呼び方は『晃』だ。今後二人でいる時に役職で呼んだら、拗ねるからな。覚えておけ」
当たり前みたいに未来を話す彼に、胸が熱くなった。
裸で彼の筋肉質な腕の中にいて、紡がれる甘い言葉を聞いている。
薄い高級シーツは、まるで繭みたいに二人を丸ごと包んでいた。
「……あきら……さんが拗ねたら、どうやってご機嫌を取ればいいんですか?」
「とりあえず、今はキスだな」
恥ずかしさに耐えきれず、俺はくるまっていたシーツの端を頭まで被って、繭の中に逃げ込んだ。
薄い布越しに、部長の気配が近づく。
彼は笑みを含んだ吐息を漏らすと、俺の顔を覆う白いシーツの端を、指先でゆっくりと持ち上げた。
まるで、教会の祭壇で花嫁のベールを捲り上げるような、厳かで、拒絶を許さない手つきで。
シーツの繭から引きずり出された俺の視界に、闇に沈んでいく夜景と、彼の色濃い瞳が映り込む。
二人の唇が重なった瞬間、逃げ場なんてどこにもないのだと、体中の細胞が理解させられてしまった。
「大丈夫です」
差し出された手を横目に見つつ、普通に立とうとして――ガクンと腰が抜けた。
予期していたように、彼の腕が俊敏に伸びてきて、からだを支えてくれる。
「うそ……」
彼の腕の中で、産まれたての小鹿のように震える足を踏ん張った。
ショックだったのに、彼はなんだか嬉しそうに言った。
「これは帰りも抱えて行かないとな。とりあえず、湯に入るぞ」
ホテルのバスタブは大きくて、二人で入っても余裕だった。
その中でも、やはり彼は抱きかかえていてくれた。
彼の上に座っていることがどうしても落ち着かなくて、もぞりと動いたときに、自分の胸に真っ赤な痕がちりばめられていることに気づいた。
「わあっ、胸をしつこく舐めてると思ってたら……」
「徹底的にマーキングした。これで他の雄の前に胸を晒せないだろう」
「もともとそんなことしませんから」
――ん? なんかここ、サラッと流していい部分だったのだろうか。
彼を見ると、「お前も俺に付けるか? いいぞ」なんて言いながら笑っている。
あれ? 彼の瞳はもう普通のダークブラウンに戻っている。
今って混乱しているのか?
戸惑っているうちに、風呂からベッドまでも、抱っこで連れていかれてしまった。
そして、彼が出してきた予備のシーツにくるまって、ベッドに二人で転がった。
その後、夜景を見ながらルームサービスを食べた。
コンビニで350円のサンドイッチを買う予定だったのだが、届いたのは4800円のクラブハウスサンドイッチだった。
それをあーんされて……完全に子供扱いされている。
もちろん、どきどきしてしまって、味なんてよく分からなかった。
食事が終わると、彼は当然のように抱き込んできた。
なんでこんなに、片時も放したがらないんだろう。
こんなに当たり前のように抱きしめられて、キスされて……彼が混乱から解けたら、俺はどうすればいいんだ。
この熱を知ってしまって……一人の夜に……耐えられるのだろうか。
「今日はよく頑張ったな……その、腰は大丈夫か?」
「部長のせいじゃないですか……」
思わずそう返したら、彼は指を絡めて握り込んできた。
タクシーでした恋人繋ぎだ。
「……お前な、俺がここまでどれだけ手順を踏んだと思っている。それを一歩でも後戻りすることは許さない」
まるで、この先もこの関係が続くみたいな言い方だ。
今、彼は……混乱しているのか? それとも?
「呼び方は『晃』だ。今後二人でいる時に役職で呼んだら、拗ねるからな。覚えておけ」
当たり前みたいに未来を話す彼に、胸が熱くなった。
裸で彼の筋肉質な腕の中にいて、紡がれる甘い言葉を聞いている。
薄い高級シーツは、まるで繭みたいに二人を丸ごと包んでいた。
「……あきら……さんが拗ねたら、どうやってご機嫌を取ればいいんですか?」
「とりあえず、今はキスだな」
恥ずかしさに耐えきれず、俺はくるまっていたシーツの端を頭まで被って、繭の中に逃げ込んだ。
薄い布越しに、部長の気配が近づく。
彼は笑みを含んだ吐息を漏らすと、俺の顔を覆う白いシーツの端を、指先でゆっくりと持ち上げた。
まるで、教会の祭壇で花嫁のベールを捲り上げるような、厳かで、拒絶を許さない手つきで。
シーツの繭から引きずり出された俺の視界に、闇に沈んでいく夜景と、彼の色濃い瞳が映り込む。
二人の唇が重なった瞬間、逃げ場なんてどこにもないのだと、体中の細胞が理解させられてしまった。
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