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週末の代償①
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ハイヤーで本社前に横づけ、という悪夢からは逃れたものの、俺と桐生部長は、お揃いのおしゃれなカフェの紙コップを片手に出社することになった。
――何であなたも降りるんですか。
心のなかで呟いたが、口に出す勇気はなかった。
まあ、大丈夫だろう。
受付のオメガたちは俺なんて眼中にない。
彼が出社したら、自然とそっちに群がるから、俺はこっそりその隙にエレベーターに……。
広いエントランスに入ると、早速、ソファーに腰かけておしゃべりをしていたオメガたちが寄ってきた。
「桐生部長、おはようございます」
「わぁ、今日も素敵なスーツですね」
「そうか? 金曜日と同じなんだが。なあ、牧田?」
俺はビクッと立ち止まってしまった。
だって、あまりにも心臓に悪い台詞を堂々と言うから。
「なにそれ、意味深~」
「きゃぁ」
「ははは、ほら行くぞ、もうすぐ営業部の朝礼だ」
桐生部長は突っ立っている俺の背をぽんと叩いた。
「……!!」
頭上から彼の手が降りて来て、うっかりこぼしそうになった紙コップを支えてくれた。
桐生部長と一緒にエレベーターに乗り込んで、俺ははっとした。
朝のエレベーターは混雑していて、中には社員がたくさんいる。
こんな中で、もし……彼が、悪戯をしかけてきたらどうしよう。
たとえば、こっそり指を絡ませるとか……?
思わず桐生部長の顔を見る。
彼はエレベーターの階数表示を目で追っていたが、俺の視線に気付いたのかこちらを見た。
その口角が、少しだけ上がった。
心臓が音を立てる。
ホテルのエレベーターでの会話が、耳の中で再生された。
『何を考えている?』
『部屋で、俺に抱かれることか?』
指先が緊張して冷たくなっていって――彼の身動き一つで、手がぴくりと反応した。
チンッ
エレベーターのドアが開き、パーカーや、ゆる可愛いデザインの服を着こなしたオメガたちが、最新のマックブックを片手に入ってきた。
オメガにはクリエイターが多い。彼らはデザインセンスの塊のような、エリート集団だ。
それゆえに、勤務形態はわりと自由になっている。
「桐生部長、おはようございます」
「おはよう」
容姿、才能、性格。
俺が彼らに敵うものなんて、何一つない。
同じオメガなのに、こうも違うものかと、エレベーターの隅に視線を落とした。
そのとき、指先に何かが触れた。
彼の指だった。
それは、俺の指先を一本一本確かめるように触れていき、ふわりと離れた。
まるで『俺のものがここにあるな』と点検しているようだ。
オメガたちは15階の福利厚生フロアで降りていった。
専用のリラックスラウンジもここにある。
しかし、俺たちスーツの営業が目指すのは、38階のエンタープライズ事業本部だ。
人がだんだん少なくなっていく中、彼との距離が近くなっていく。
心臓が早鐘を打つ中、エレベーターが到着を告げた。
「……行くぞ」
桐生部長は何事もなかったような顔で降りていく。
俺は熱を持った右手を、ぎゅっと握りしめてから彼の背中を追った。
――何であなたも降りるんですか。
心のなかで呟いたが、口に出す勇気はなかった。
まあ、大丈夫だろう。
受付のオメガたちは俺なんて眼中にない。
彼が出社したら、自然とそっちに群がるから、俺はこっそりその隙にエレベーターに……。
広いエントランスに入ると、早速、ソファーに腰かけておしゃべりをしていたオメガたちが寄ってきた。
「桐生部長、おはようございます」
「わぁ、今日も素敵なスーツですね」
「そうか? 金曜日と同じなんだが。なあ、牧田?」
俺はビクッと立ち止まってしまった。
だって、あまりにも心臓に悪い台詞を堂々と言うから。
「なにそれ、意味深~」
「きゃぁ」
「ははは、ほら行くぞ、もうすぐ営業部の朝礼だ」
桐生部長は突っ立っている俺の背をぽんと叩いた。
「……!!」
頭上から彼の手が降りて来て、うっかりこぼしそうになった紙コップを支えてくれた。
桐生部長と一緒にエレベーターに乗り込んで、俺ははっとした。
朝のエレベーターは混雑していて、中には社員がたくさんいる。
こんな中で、もし……彼が、悪戯をしかけてきたらどうしよう。
たとえば、こっそり指を絡ませるとか……?
思わず桐生部長の顔を見る。
彼はエレベーターの階数表示を目で追っていたが、俺の視線に気付いたのかこちらを見た。
その口角が、少しだけ上がった。
心臓が音を立てる。
ホテルのエレベーターでの会話が、耳の中で再生された。
『何を考えている?』
『部屋で、俺に抱かれることか?』
指先が緊張して冷たくなっていって――彼の身動き一つで、手がぴくりと反応した。
チンッ
エレベーターのドアが開き、パーカーや、ゆる可愛いデザインの服を着こなしたオメガたちが、最新のマックブックを片手に入ってきた。
オメガにはクリエイターが多い。彼らはデザインセンスの塊のような、エリート集団だ。
それゆえに、勤務形態はわりと自由になっている。
「桐生部長、おはようございます」
「おはよう」
容姿、才能、性格。
俺が彼らに敵うものなんて、何一つない。
同じオメガなのに、こうも違うものかと、エレベーターの隅に視線を落とした。
そのとき、指先に何かが触れた。
彼の指だった。
それは、俺の指先を一本一本確かめるように触れていき、ふわりと離れた。
まるで『俺のものがここにあるな』と点検しているようだ。
オメガたちは15階の福利厚生フロアで降りていった。
専用のリラックスラウンジもここにある。
しかし、俺たちスーツの営業が目指すのは、38階のエンタープライズ事業本部だ。
人がだんだん少なくなっていく中、彼との距離が近くなっていく。
心臓が早鐘を打つ中、エレベーターが到着を告げた。
「……行くぞ」
桐生部長は何事もなかったような顔で降りていく。
俺は熱を持った右手を、ぎゅっと握りしめてから彼の背中を追った。
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