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22話 男同士の会話 その3
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「で、ファリーナちゃん? 話は全部聞いとったんか?」
「……はい、ごめんなさい……」
「いや、まあ俺も尾行してたしな~」
私は曖昧に返事をしたけれど、お父様の目は誤魔化せていなかったみたい。流石は元冒険者ってところなのかしら? メイサとシルも含めて見つからないように観察していたはずなのに……気配のようなものを察知したお父様は、すぐに私達の存在を看破していたらしい。
「オルスト伯爵にこのような能力があるとは……」
「これでも、元々は獣と命のやり取りしてましたからね。偶に盗賊団とかも……」
「なるほど……有事の際にしか本格的な始動をしない騎士団よりも、冒険者の方が感覚が研ぎ澄まされるのでしょうね」
「毎日が金稼ぎでしたからね~」
そう言いながら、お父様は私が生まれる前の冒険者時代を懐かしんでいるようだった。もう、20年近く前の話になるのかしら?
「しかし……お父上がこれほどでは。私もオルスト嬢に粗相をしてしまわないように、気を付けないと」
「いやいや、公爵様に武力行使なんて出来ませんて。それに、現役を引退して大分経つ身では……勝てるかもわかりませんからね」
「ご謙遜を」
「そっちがですやん」
ライジング公爵って相当に強いのかしら? 確かに立ち振る舞いには隙はないし……鍛えている感じだけれど。現役を引退しているお父様とはいえ、ここまで言わせるなんて……かなり凄い気がする。
「まあ、ここらで俺はホンマに帰りますわ。流石にこれ以上邪魔するのは、失礼ですし」
ライジング公爵の前でその話し方は十分に失礼だけれど、そこはお父様の持ち味なのかしらね……公爵も気にしている素振りはない。
「メイサ、シル。お前らも帰るで」
「は~~い」
「そんな、娘みたいに……」
「メイサもシルも、俺にとっては大切な娘みたいなもんやで?」
お父様は何気なく言っているだけだろうけど、メイサもシルも照れている様子を見せていた。二人が本気にしたらどうするのよ……雰囲気的にはお持ち帰りされそうだし。
-----------------------------------
「本当に楽しい方だったよ、伯爵殿は」
「も、申し訳ありません……。そのように言っていただければ、父も喜ぶと思います」
お父様たち3人は本当に帰って行った。残された私達は寿司店の前に居るけれど。
「昼食がまだだったな。その続きと行こうか」
「はい」
そうだ、私達のデートはまだ始まったばかり……今日はそれを楽しむ為に、貴族街まで来ているんだから。私達が寿司店に戻ろうとした時、店の入り口には店主の方が立っていた。
「……先ほどのお方、オルスト伯爵たちなのですが……」
「どうかしたのか?」
店主は非常に言いにくそうな表情をしている。なにかあったの……?
「お代を払っていません……ライジング公爵、どうしましょうか……?」
あのまま帰ったからか……。私とライジング公爵は揃って苦笑いになってしまった。結局は、公爵様が立て替えることになったけれど……お父様……。
「……はい、ごめんなさい……」
「いや、まあ俺も尾行してたしな~」
私は曖昧に返事をしたけれど、お父様の目は誤魔化せていなかったみたい。流石は元冒険者ってところなのかしら? メイサとシルも含めて見つからないように観察していたはずなのに……気配のようなものを察知したお父様は、すぐに私達の存在を看破していたらしい。
「オルスト伯爵にこのような能力があるとは……」
「これでも、元々は獣と命のやり取りしてましたからね。偶に盗賊団とかも……」
「なるほど……有事の際にしか本格的な始動をしない騎士団よりも、冒険者の方が感覚が研ぎ澄まされるのでしょうね」
「毎日が金稼ぎでしたからね~」
そう言いながら、お父様は私が生まれる前の冒険者時代を懐かしんでいるようだった。もう、20年近く前の話になるのかしら?
「しかし……お父上がこれほどでは。私もオルスト嬢に粗相をしてしまわないように、気を付けないと」
「いやいや、公爵様に武力行使なんて出来ませんて。それに、現役を引退して大分経つ身では……勝てるかもわかりませんからね」
「ご謙遜を」
「そっちがですやん」
ライジング公爵って相当に強いのかしら? 確かに立ち振る舞いには隙はないし……鍛えている感じだけれど。現役を引退しているお父様とはいえ、ここまで言わせるなんて……かなり凄い気がする。
「まあ、ここらで俺はホンマに帰りますわ。流石にこれ以上邪魔するのは、失礼ですし」
ライジング公爵の前でその話し方は十分に失礼だけれど、そこはお父様の持ち味なのかしらね……公爵も気にしている素振りはない。
「メイサ、シル。お前らも帰るで」
「は~~い」
「そんな、娘みたいに……」
「メイサもシルも、俺にとっては大切な娘みたいなもんやで?」
お父様は何気なく言っているだけだろうけど、メイサもシルも照れている様子を見せていた。二人が本気にしたらどうするのよ……雰囲気的にはお持ち帰りされそうだし。
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「本当に楽しい方だったよ、伯爵殿は」
「も、申し訳ありません……。そのように言っていただければ、父も喜ぶと思います」
お父様たち3人は本当に帰って行った。残された私達は寿司店の前に居るけれど。
「昼食がまだだったな。その続きと行こうか」
「はい」
そうだ、私達のデートはまだ始まったばかり……今日はそれを楽しむ為に、貴族街まで来ているんだから。私達が寿司店に戻ろうとした時、店の入り口には店主の方が立っていた。
「……先ほどのお方、オルスト伯爵たちなのですが……」
「どうかしたのか?」
店主は非常に言いにくそうな表情をしている。なにかあったの……?
「お代を払っていません……ライジング公爵、どうしましょうか……?」
あのまま帰ったからか……。私とライジング公爵は揃って苦笑いになってしまった。結局は、公爵様が立て替えることになったけれど……お父様……。
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