婚約破棄されたけど、妹と幼馴染が優しすぎる件

安奈

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13話 ウイングVSセドル その1

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「で、殿下……! このような場所にお出でとは……!」


 言葉が出て来ないセドルに代わるように、シャズナ伯爵令嬢がウイング王太子殿下に話しかけている。とても焦っている様子で、顔中汗だらけだ。


「おお、シャズナやんけ、久しぶりやな~」

「お久しぶりでございます、殿下……しかし、殿下ともあろうお方がなぜ、このような小さな舞踏会に……?」


 いけすかないイメージがあったシャズナだけれど、なんだかその場の空気に合わせるのが得意な感じが嫌。それなら、最初から婚約破棄の加担とかやめてよね。


「なんでって……なあ、ラーナ?」


 シャズナの問いかけに、王太子殿下はすぐには答えなかった。代わりに妹のラーナが返答する。


「はい。この舞踏会そのものが、実はウイング王太子殿下の主催なんですよ」

「えっ……!」

「な、なんと……!」


 シャズナ、セドル共に驚きの表情に言葉がついて行っていない。でも、二人ともとても面白い顔になっていた。記録しておきたいくらいだったわ。

「セドル様はお仕置きはしないのですか? そちらのメイドが、とても粗相をしたみたいですけれど……」

「うぇ、ウェルナ……いや、なんというかだな、はははは……」


 ウイング王太子殿下が主催者だと聞いて、セドルの態度は180度変わってしまっている。流石の私も驚いたくらいに。それもそうよね、そっちの「うっかり」スープを零してしまったメイドだって、王太子殿下が用意したのと同義なんだし……。


「あ、ユイファ。ご苦労さん、後片づけはこっちでしとくから、もう行っていいで」

「ウイング王太子殿下……! あ、ありがとうございます……!」


 ユイファと呼ばれたメイドは涙目になりながら笑っていた。よっぽど、セドルの仕打ちが怖かったんでしょうね、可哀想に。そのまま、頭を深く下げて去って行った。


「さてさて、セドル君」

「は、はい……!」

「俺の選りすぐりのメイドが迷惑かけたみたいやなぁ?」


 ウイング王太子殿下は悪びれる様子もなく、セドルに詰め寄っている。態度だけで見たら、どっちが悪なのか分からないレベルね……ウイング王太子殿下は、並みのマフィアよりも怖い雰囲気を醸し出していた。王国のトップになる人はそのくらい迫力が必要なのかしら?


「恐れながら申し上げます。私は、大切な礼装をスープで汚されてしまいまして……」


 ここに来て、セドルは冷静さを取り戻したのか、自らの正当性を主張し始めた。どうなるのか見物だわ……ところで、ルークは何処に行ったのかしら? 私は姿が見えなくなった婚約者の身を案じていた。まさか、浮気とかしていないわよね?
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