悪役令嬢に嵌められて婚約を破棄され、国を追放された聖女を救うため、王国一の剣士は旅に出る~もちろんこの後の展開は想像通りです~

マーラッシュ

文字の大きさ
20 / 62

尋問

しおりを挟む
「まず質問をする前に、伝えたいことがあります」
「なんだ?」
「これから同じ質問をあなたと仲間の二人にします」
「別に構わないぜ。おそらく同じ答えが返ってくると思うがな」
「そうですか。安心しました」
「どういうことだ?」
「もし三人の答えが一つでも違えば、処分しようと思っていましたから」
「しょ、処分だと!? どういうことだ!」
「あなたの想像通りですよ。三人の内、答えが違う人がいればその人は嘘をついているとみなし⋯⋯」

 俺は右手で首を切る仕草をする。

「ひぃっ!」

 盗賊は俺の行動を見て悲鳴を上げ、震え始めた。
 昨日仲間が六人殺られている所を見ているんだ。嘘をつけばどうなるか容易に考えることが出来るだろう。

「言葉には注意して下さいね。俺が間違った解釈をしてしまうと大変ですから」
「わ、わかった⋯⋯本当のことを話す。だからもし他の二人と違った答えなら、嘘をついたのは俺じゃねえ」
「それはこちらで判断します。あなたが決めることじゃない」

 そもそもこの縛り付けた状況でも、盗賊達のことは百パーセント信用することは出来ない。だから初めから一人ではなく三人を生かし、情報を精査することを考えていた。

「まずはどうやって脱走したのか答えて下さい」
「そ、それは⋯⋯」

 盗賊の言葉が詰まる。
 これは先程言っていた、牢屋が開いていたからという主張は、嘘だという可能性が高くなったな。

「無言があなたの答えでいいですか?」
「ち、違う! その⋯⋯衛兵が牢屋の鍵を開けて逃げたんだ」
「な、なんじゃと!」

 盗賊の答えに村長さんが声を張り上げる。

「民を守る衛兵が盗賊を逃がしたのか! それにさっきと言ってることが違うぞ!」
「へへ⋯⋯こっちも命が惜しいんで」

 もし本当に盗賊達が逃げたなら大問題だ。おそらくこっそり逃げて、俺達を始末すれば、問題ないと考えたのだろう。

「ただの衛兵が、盗賊を逃がすなんて大それたことをする訳がない。衛兵の裏に潜む人物がいるはず。それが誰か教えて下さい」
「それはわからねえ。俺達は外套で顔を隠した男から金をもらって命令されただけだ。声を聞く限りでは若い印象だった。本当だ! 信じてくれ」
「信じるかどうかは、他の二人の話を聞いてから決めます。それとノアの村の周辺で盗賊をしていたのも、その人の命令ですか?」
「なんじゃと!」

 村長が驚くのも無理はない。盗賊達が誰かの命令で、ノアの村付近で暴れていると聞いたら、平静ではいられないだろう。

「よくわかったな。確かにその通りだ」

 やはりか。盗賊を逃がすことが出来る権力者など限られている。そしてその権力者はノアの村を自分の物にしようとしていたから、自ずと答えは出てくる。

「き、貴様⋯⋯誰じゃ! 誰の命令か吐け!」
「く、苦しい⋯⋯やめろじじい!」

 村長さんが怒りのあまり盗賊の首を締める。

「気持ちはわかりますが落ち着いて下さい」

 俺は村長を羽交い締めにして、盗賊から離す。このままだと盗賊が窒息して死んでしまいそうだ。

「ぜはぜは⋯⋯ゆ、許せん。こいつらだけは絶対に許せん!」

 まずいな。村長さんの怒りが限界突破している。このままだと話を聞くとごろじゃなくなってしまう。

「村長のわしが、天誅を食らわしてやるわ!」
「村長さん落ち着いて下さい! これ以上騒ぐならここから出ていってもらいます」

 この村の問題で、リリアに害が及んでいるだ。仕方ないけど邪魔するなら、村長さんと言えど実力行使で行かせてもらう。

 しかし俺の言葉が効いたのか、村長さんから力が抜けていく。

「ユートくんすまんな。暴れないから離してくれんか。わしは村長としてこの話を最後まで聞く義務がある」

 どうやら平常心が戻ってきたようなので、俺は村長から手を離す。
 よかった。これで話の続きが聞けそうだ。

「それで? どういうことだ?」
「最初は村の奴らに嫌がらせをする仕事だった。だがあんた達が村を出ていかないから、雇い主の命令も過激になってな。そしてとうとう今回は殺せという命令だったのさ」
「ノアの村の鉱石が目的だったのかな?」
「そこまでは知らねえ。俺達は怪しい奴から金をもらって命令通り動いていただけさ」
「そして今回また捕まったとしても、逃がしてくれることになっていたと」
「その通りだ。まあそれも今知られたからおじゃんになったけどな」

 そうなると盗賊達をこのままロマリオの衛兵に渡すわけにはいかない。

「ユ、ユートくん⋯⋯今までの話から推測するに、まさかこの盗賊達に金を払っていたのは⋯⋯バーカルなのか?」
「おそらくは⋯⋯証拠は何もないありませんが」

 外套の男もバーカルではないだろう。奴の部下といったところか。

「人の命を殺めてまで村を手に入れたいのか」

 権力者という者は、自分さえ良ければいいと考えている者が大半だ。
 恐ろしいのは、権力を得るために例え犯罪だろうが己が正しいと思い込んでいることだ。
 こうなってしまったら余程のことがない限り、真人間になることは難しい。

「最後に一つ⋯⋯あんた達に恨みを持っている奴はいるのか」
「さあ? 俺達が奪い、殺した奴の知り合いならそう思っているかもな」

 ひょっとしたら、盗賊達に恨みを持つ者が手紙をくれたのではと聞いてみたが、これではわからないな。

「後は残りの二人に聞いてみて、あんたの沙汰を下す」

 とりあえず今聞いた情報が正しいか、他の二人に聞いてみないとな。

「俺は嘘をついてねえ! もし食い違いがあっても嘘をついたのはあいつらだ!」

 そして俺は盗賊の叫び声を背に、捕らわれた残り二名の元へ向かうのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

処理中です...