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夜更かしは辛い
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「皆さん、終わりました」
俺は月夜が照らす暗闇の中で声をあげる。
すると村長を始めとする村の人達が現れた。
「さすがはユートくんじゃ」
「リリアは大丈夫ですか?」
「ああ、眠らないように頑張って起きているぞ」
「もう終わったと伝えてもらってもいいですか? 後、出来ればここには連れて来ないで下さい」
地面には六つの死体が転がっている。心優しいリリアにはこの光景を見せたくない。
「わかった。そのように伝えておこう。それでこ奴らはどうするんじゃ?」
村長さんは失禁して気絶している、三人の盗賊を指差す。
そう⋯⋯この三人は最初から命を奪うつもりはなかったため、あの時は地面を斬りつけただけだった。
リリアを狙った制裁として、少し脅すつもりだったが、予想以上に上手くいったようだ。
「聞きたいことがあるので、別々の場所に監禁してもらってもいいですか?」
「別々の場所に? どうしてじゃ。聞きたいことがあるなら、同じ所にいた方が一度で済むじゃろ」
「確かにそうですが、少し考えがありまして」
「わかった。ユートくんの言うことなら間違いないじゃろ。後のことはわしらがやっておくから、とりあえず一眠りしたらどうじゃ?」
「わかりました。お言葉に甘えさせてもらいます」
盗賊達はいつ目覚めるかわからないから、その方がいいだろう。
こうして盗賊達を倒した俺は、リリアが待っている家屋へと戻るのであった。
「ユート様!」
家屋のドアを開けた瞬間、リリアからの言葉が返ってきた。
「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「大丈夫。傷一つないよ」
「良かったです⋯⋯お疲れ様でした」
リリアはほっと胸を撫で下ろす。
「やっぱり昨日捕まえた盗賊達だったよ」
「そうですか⋯⋯どうしてここに来ることが出来たのでしょうか?」
「それはこれから盗賊達に聞いてみるよ。けど俺としては手紙の方が気になるかな」
サレン公国に来たばかりで、知り合いがいない俺達に手紙を出す人物は誰か。皆目見当がつかない。
「やはりユート様に一目惚れした方が――」
「それはない」
俺はリリアが言葉を言い終わる前に否定する。
「手紙の内容は色恋沙汰ではなかったし」
しかしリリアの考えは俺の考えとは別の所にあった。
「違います。一目惚れと言っても容姿のことではなく、例えば冒険者ギルドで見せた剣技に対してとか⋯⋯」
「それは⋯⋯あり得るかもしれないけど」
むしろそのこと以外で、ロマリオの街の人達との関わりはない。いや、そう考えると、イケメン男の銅貨を受け止めた時というのも考えられるか。
その二つの出来事を見ていた誰かが盗賊達のことを知り、俺達に手紙をくれたのか?
う~ん⋯⋯でも何かしっくり来ないなあ。明日盗賊達に聞いてみるか。
「とりあえず今は手紙のことを考えても仕方ないから、今日はもう寝ようか」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
しかしリリア俯いており返事がない。
「ん? 何か様子がおかしいぞ」
俺は下からリリアの顔を覗き込む。するとリリアの瞳は閉じられていた。
「寝てる⋯⋯だと⋯⋯」
既に時刻は深夜なため、眠いのは理解出来る。
「まさか立ったまま寝るとは。器用なことをするなあ」
「すうすう」
しかしこのままだと床に倒れる可能性があるし、疲れも取れないだろう。
俺はリリアの脇と膝裏に手を添えて、お姫様だっこをする。
そしてベッドへと運び、起こさないように優しく置いた。
「さて、俺も寝るとするか」
それにしてもレガーリア王国に来てからトラブルの連続だな。一昨日は盗賊に襲われ、今日も盗賊に襲われた。
明日は何も起きないといいな。
俺は平穏な日々が来ることを願いながら、目を閉じるのであった。
そして夜が明けた
目が覚めると太陽は高い位置まで昇っており、昼食に近い時間となっていた。
しかし昨日は盗賊退治で深夜まで働いていたから、仕方のないことだ。
「すうすう」
隣を見るとリリアはまだ寝ていた。
リリアは俺が戻るまで起きていてくれたから、疲れているのだろう。もう少し寝かせてあげよう。
俺は静かにベッドから脱出し、外に出る。
するとちょうど村長さんも自宅から出てきた所で、視線が合う。
「ユートくんおはよう」
「村長さんおはようございます」
「昨日は村を守るために遅くまでありがとう」
「いえ。それで盗賊達は目が覚めましたか?」
「ああ、じゃが二回連続で捕まったことがショックなのか、おとなしくしておるよ」
「それなら盗賊達と少し話してもいいですか?」
「かまわんよ。実はわしもさっきまで話を聞いていたが、言ってることがバラバラで何を信じればいいのか⋯⋯」
「大丈夫ですよ」
やはり素直に応える気はないということか。
だけどそれは想定内だ。正しい情報を得るための仕込みは既に済んでいる。
俺は村長さんの案内で納屋へと向かうと、そこには縛られた盗賊の一人がいた。
「も、もう俺が知っていることは全て話したぞ。牢屋の鍵が開いてたから脱走した。それで捕まった恨みを晴らすために、ここに来ただけだ。もう二度とこんなことはしねえ。だからとっとと衛兵にでも突き出しやがれ」
口調は悪いが、一応は反省しているように見えるが。
「この通り、特に逆らうことはなく、聞いたことに対して全て答えておる」
だけど人は容易く高慢になり、反省することが難しい生き物だ。そう簡単に、盗賊達の言葉を鵜呑みにするわけにはいかない。
だから真実を知るために俺は三人だけ生かしておいたのだ。
「では、俺からも聞きたいことがあるので答えて下さい」
「ああ、わかった」
こちらの言うことに素直に応対している。
だがこの後俺が放った言葉を聞いて先程とは裏腹に、盗賊は恐怖に震えるのであった。
俺は月夜が照らす暗闇の中で声をあげる。
すると村長を始めとする村の人達が現れた。
「さすがはユートくんじゃ」
「リリアは大丈夫ですか?」
「ああ、眠らないように頑張って起きているぞ」
「もう終わったと伝えてもらってもいいですか? 後、出来ればここには連れて来ないで下さい」
地面には六つの死体が転がっている。心優しいリリアにはこの光景を見せたくない。
「わかった。そのように伝えておこう。それでこ奴らはどうするんじゃ?」
村長さんは失禁して気絶している、三人の盗賊を指差す。
そう⋯⋯この三人は最初から命を奪うつもりはなかったため、あの時は地面を斬りつけただけだった。
リリアを狙った制裁として、少し脅すつもりだったが、予想以上に上手くいったようだ。
「聞きたいことがあるので、別々の場所に監禁してもらってもいいですか?」
「別々の場所に? どうしてじゃ。聞きたいことがあるなら、同じ所にいた方が一度で済むじゃろ」
「確かにそうですが、少し考えがありまして」
「わかった。ユートくんの言うことなら間違いないじゃろ。後のことはわしらがやっておくから、とりあえず一眠りしたらどうじゃ?」
「わかりました。お言葉に甘えさせてもらいます」
盗賊達はいつ目覚めるかわからないから、その方がいいだろう。
こうして盗賊達を倒した俺は、リリアが待っている家屋へと戻るのであった。
「ユート様!」
家屋のドアを開けた瞬間、リリアからの言葉が返ってきた。
「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「大丈夫。傷一つないよ」
「良かったです⋯⋯お疲れ様でした」
リリアはほっと胸を撫で下ろす。
「やっぱり昨日捕まえた盗賊達だったよ」
「そうですか⋯⋯どうしてここに来ることが出来たのでしょうか?」
「それはこれから盗賊達に聞いてみるよ。けど俺としては手紙の方が気になるかな」
サレン公国に来たばかりで、知り合いがいない俺達に手紙を出す人物は誰か。皆目見当がつかない。
「やはりユート様に一目惚れした方が――」
「それはない」
俺はリリアが言葉を言い終わる前に否定する。
「手紙の内容は色恋沙汰ではなかったし」
しかしリリアの考えは俺の考えとは別の所にあった。
「違います。一目惚れと言っても容姿のことではなく、例えば冒険者ギルドで見せた剣技に対してとか⋯⋯」
「それは⋯⋯あり得るかもしれないけど」
むしろそのこと以外で、ロマリオの街の人達との関わりはない。いや、そう考えると、イケメン男の銅貨を受け止めた時というのも考えられるか。
その二つの出来事を見ていた誰かが盗賊達のことを知り、俺達に手紙をくれたのか?
う~ん⋯⋯でも何かしっくり来ないなあ。明日盗賊達に聞いてみるか。
「とりあえず今は手紙のことを考えても仕方ないから、今日はもう寝ようか」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
しかしリリア俯いており返事がない。
「ん? 何か様子がおかしいぞ」
俺は下からリリアの顔を覗き込む。するとリリアの瞳は閉じられていた。
「寝てる⋯⋯だと⋯⋯」
既に時刻は深夜なため、眠いのは理解出来る。
「まさか立ったまま寝るとは。器用なことをするなあ」
「すうすう」
しかしこのままだと床に倒れる可能性があるし、疲れも取れないだろう。
俺はリリアの脇と膝裏に手を添えて、お姫様だっこをする。
そしてベッドへと運び、起こさないように優しく置いた。
「さて、俺も寝るとするか」
それにしてもレガーリア王国に来てからトラブルの連続だな。一昨日は盗賊に襲われ、今日も盗賊に襲われた。
明日は何も起きないといいな。
俺は平穏な日々が来ることを願いながら、目を閉じるのであった。
そして夜が明けた
目が覚めると太陽は高い位置まで昇っており、昼食に近い時間となっていた。
しかし昨日は盗賊退治で深夜まで働いていたから、仕方のないことだ。
「すうすう」
隣を見るとリリアはまだ寝ていた。
リリアは俺が戻るまで起きていてくれたから、疲れているのだろう。もう少し寝かせてあげよう。
俺は静かにベッドから脱出し、外に出る。
するとちょうど村長さんも自宅から出てきた所で、視線が合う。
「ユートくんおはよう」
「村長さんおはようございます」
「昨日は村を守るために遅くまでありがとう」
「いえ。それで盗賊達は目が覚めましたか?」
「ああ、じゃが二回連続で捕まったことがショックなのか、おとなしくしておるよ」
「それなら盗賊達と少し話してもいいですか?」
「かまわんよ。実はわしもさっきまで話を聞いていたが、言ってることがバラバラで何を信じればいいのか⋯⋯」
「大丈夫ですよ」
やはり素直に応える気はないということか。
だけどそれは想定内だ。正しい情報を得るための仕込みは既に済んでいる。
俺は村長さんの案内で納屋へと向かうと、そこには縛られた盗賊の一人がいた。
「も、もう俺が知っていることは全て話したぞ。牢屋の鍵が開いてたから脱走した。それで捕まった恨みを晴らすために、ここに来ただけだ。もう二度とこんなことはしねえ。だからとっとと衛兵にでも突き出しやがれ」
口調は悪いが、一応は反省しているように見えるが。
「この通り、特に逆らうことはなく、聞いたことに対して全て答えておる」
だけど人は容易く高慢になり、反省することが難しい生き物だ。そう簡単に、盗賊達の言葉を鵜呑みにするわけにはいかない。
だから真実を知るために俺は三人だけ生かしておいたのだ。
「では、俺からも聞きたいことがあるので答えて下さい」
「ああ、わかった」
こちらの言うことに素直に応対している。
だがこの後俺が放った言葉を聞いて先程とは裏腹に、盗賊は恐怖に震えるのであった。
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