悪役令嬢に嵌められて婚約を破棄され、国を追放された聖女を救うため、王国一の剣士は旅に出る~もちろんこの後の展開は想像通りです~

マーラッシュ

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ユートVSボーゲン(3)

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 ◇◇◇

 まさか魔族が現れるなんて。
 リリアは魔族の出現に驚きを隠せないでいた。

 お母様から魔族について話は聞いていました。魔族は世界を滅ぼす存在、魔族が現れたら倒すのが聖女の使命だと。
 ですが魔族はもう何百年、何千年と姿を見せていなかったので、夢物語だと思っていました。
 その夢物語の生物が今、私の目の前にいて、ユート様と戦っている。
 でも魔力が減っていることと、魔族の特性と再生能力によってユート様は窮地に立たされてしまった。
 本当は私が聖女の一族として魔族を倒さなければならないのに⋯⋯
 ユート様はどれだけ傷つこうが私のために戦って下さっている。でも私には傷ついたユート様に回復魔法をつかうことしか出来ない。
 私が使える魔法は光魔法だけ。聖女の魔法は一つも使えないし、どのような魔法かわからない。
 いえ⋯⋯そういえばお母様が一度だけ聖女の魔法について語っていました。

 聖女の魔法は想いの力だと

 幼い私にはまだ少し早かったかなと微笑んでいましたが、今の私なら少しだけわかる気がします。想いの力⋯⋯自分の大切なものそれは⋯⋯

 ◇◇◇

 俺はボーゲンの蹴りを食らい、後方へと吹き飛ばされた。

「くっ! 防御無視で攻撃してくるなんて⋯⋯」

 このままだとボーゲンの攻撃でいずれ動けなくなってしまう。そして剣には常に魔力を込めているため、魔力切れも起こしてしまいそうだ。
 このままだと殺られる。

 俺は最悪のシナリオが頭の中で過る。

「ユート様!」

 ボーゲンの攻撃を食らい、地面に片膝をついている俺の所にリリアが駆け寄ってきた。

「だ、大丈夫だ。リリアは下がっててくれ」

 リリアの魔力にも限りがあるため、致命傷を負わない限り回復魔法は自粛してもらっている。

「いえ、ユート様に魔法をかけます。これは回復魔法ではありません」
「回復魔法じゃない?」

 いったいリリアは何をしようとしているんだ。だけど今の俺にはボーゲンを倒す方法が思いつかない。この窮地を打開する策があるならリリアに賭けたい。

 リリアは両手をこちらに向け、何か力を入れているように見える。しかし特に何か変化している様子はない。

「くっくっく⋯⋯何が始まるかと思えば、何も起こらないじゃないですか」
「黙れ! これからすごいものを見せてやるからそのまま待ってろ」

 俺は剣を構え、ボーゲンを牽制する。だが以外にもボーゲンは俺達を攻撃するような素振りはなく、リリアがすることをその場で待っているように見えた。

「我が主も恐れた聖女の力⋯⋯どれ程のものか一度見せてもらいたいものです」

 どうやらボーゲンは聖女の力に興味があるようだ。こちらとしてもその展開は望む所なので、俺もリリアがやろうとしていることを信じて待つ。

「どうしました? やはり聖女の力というものはまやかしで、時が流れるにつれて過大評価されているだけのものでしたか」
「そんなことはない」
「だがその小娘は何やら呟くだけで、何も変化がないではありませんか」

 聖女の力が発動しないためか、ボーゲンから苛立ちを感じる。このままでは襲いかかってくる可能性があるな。

「もういいです。あなた達にはこのまま死んでもらいます」

 我慢の限界が来たのか、ボーゲンが右に左にと剣を斬りつけてきた。
 リリアはこの場を動かず、魔法を唱えようとしているので、ここは引くわけにはいかない。

「くっ!」

 俺はボーゲンの攻撃を防ぎつつ、一瞬の隙をついて胴体目掛けて横一閃に斬り払う。

「ふふ⋯⋯無駄なことを」

 ボーゲンは斬られたというのに苦痛の表情を出さず、笑みを見せる。
 そして剣を食らったまま、俺の左肩を斬り払う。

「ぐあっ!」

 俺はボーゲンの攻撃を受け、思わず声を上げてしまう。
 そしてさらに二撃目がこちらに迫っていた。

「このやろう!」

 もう一撃食らう訳にはいかない。剣で攻撃しても効かないため、俺はボーゲンの胸部をおもいっきり蹴り飛ばし、後方へと吹き飛ばす。

「しぶといですね。そのまま楽にしてればいいものを。絶望する時間が長引くだけですよ」
「俺はリリアを信じている。このまま諦めてたまるかよ」

 例え何が起きようと俺はリリアがやることを待つだけだ。
 あの日、命を救われた時から俺はリリアのために生きると決めたのだから。

「バカな男ですねえ。あなただけなら逃げることも可能でしょうに」
「リリアを置いて逃げることが賢いなら、俺はバカでけっこう」
「それならバカなままあの世に行くといい」

 強がって見せたが今の俺にはボーゲンを倒す手段はないため、ここは防御に徹するしかない。

 俺は迫ってくるボーゲンの攻撃に対応しようとするが、ここで予想外の出来事が起きた。

「え、えい」

 突如リリアから可愛らしい声が聞こえると同時に、俺の背中が温もりに包まれるのであった。

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