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ユートVSトール
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「ユート様がんばってくださ~い」
リリアの声援が俺の耳に入る。
これは例え訓練でも負けられないな。
しかしトールさんとの手合わせは初めてだ。油断はできない。
「あんなに可愛い子に応援されるなんて、羨ましい限りだぜ」
「応援ならトールさんもあるじゃないですか」
「隊長! ユートに勝って下さい」
「一撃くらい食らわせて下さいよ。弱った所を俺が倒しますから」
俺は外野に目を向けると野太い声が辺りに響き渡っていた。
「部下達の前で簡単に負ける訳にはいかん」
トールさんは大剣を上段に構え魔力を溜めている。
ちなみにこの訓練では魔力を使うのはありだ。
だが実際に剣に魔力を乗せることが出来るのは、トールさんを含めて二人しかいない。
だからこの二人と戦う時は特に注意が必要だ。
「我が渾身の一撃で、ユートの身体を切り裂いてやろう」
そんなことをされたら確実に死ぬぞ。
もしかしたらトールさんは、これが訓練だと言うことを忘れているのだろうか。
「逃げたいなら逃げてもいいぞ」
見たところトールさんの売りはおそらく重い一撃だ。
かわした隙に斬りつけるのが最善だが、ここは敢えて挑発に乗って迎え撃つ。
俺は剣に魔力を込めて構える。
「受けて立ちますよ」
「良い度胸だ」
張り詰めた空気がこの場に流れる。
互いに一撃で相手を仕留めると考えているため、勝負は一瞬で終わるだろう。
「行くぞ! はあっ!」
「ふっ!」
トールさんは魔力もさながら剣の腕もいい。
重い剣がぶれることなく真っ直ぐ脳天に迫ってくる。
これはかわすか防がないと本当にやばいな。
俺は死を意識させる剣に対して、下段から剣を繰り出す。
キィンっ!
すると高い金属音が辺りに響くと共に、一本の剣が真っ二つに折れ、上空へと舞う。
「勝負あったな」
「ええ」
一対一の戦いが終わり、周囲の張り詰めた空気は四散していった。
「剣が折れてしまったぞ」
「まさか隊長の大剣が⋯⋯」
兵士の人達は先程とは違い、呆然と結果を見つめている。
「さすがユート様です」
ふう⋯⋯何とかリリアの期待に応えることができたな。
「これは完全に俺の負けだな」
「隊長⋯⋯」
「まさか隊長が負けるなんて⋯⋯」
「魔力、剣技、力、全て俺の方が劣っていた。勝っていたのは剣の重さくらいだ」
兵士の人達とは違い、トールさんは冷静に結果を分析していた。
「魔力、剣技はわかるとしても力もですか!?」
「どう見ても筋肉バカ⋯⋯いえ、筋肉質の隊長の方が力は上だと思いますが」
「何か言ったか?」
「何も言ってません!」
兵士の一人が思わず失言をしてしまうが、その気持ちはわからないでもない。トールさんは鍛練が大好きで、時間さえあれば筋肉を鍛えているからな。
「本当ですか? トールさんの方が身体も大きいし、力があるように見えますが⋯⋯触って確認してもいいですか?」
「いいよ」
「では失礼します」
リリアが俺の正面に来て身体を触り始める。
「うわぁ⋯⋯すごいです。腕がとても硬いです」
手から始まり、腕、肩へとリリアの手が移動していく。
ちょっと距離が近くないか? リリアの甘い匂いがわかるぞ。
何だかちょっと恥ずかしくなってきた。リリアを意識しないようにするため、目を閉じよう。
「剣を振るには広背筋も大切なんだ」
「広背筋ですか? それはどこでしょうか?」
「背中だよ。ユートは筋肉も凄いが力の入れ方も上手い⋯⋯」
隊長さんの言葉が止まってしまった。
そして俺の背中にリリアの手の温もりを感じる。しかし何故かリリアの温もりが胸の部分にも感じた。
俺は何が起きたのかわからず目を開けると、吐息がわかる距離にリリアの姿があった。
「リ、リリア?」
どうやら背中の筋肉を確かめるために、リリアは俺を抱きして確認していたようだ。
一緒のベッドで寝たり、朝の淫らな格好をしたリリアを見ているから少しは耐性が出来たが、さすがにこれは俺も恥ずかしい。
「ユート様は毎日鍛えていますから、この硬い筋肉も納得です」
だが当の本人はこの状況に気づいていないのか、平然としていた。
「リリアちゃん大胆だな」
「えっ? それはどういうことでしょうか?」
「俺達の前でユートとイチャついてるじゃねえか」
トールさんに指摘され、俺はリリアと視線が合う。
「ももも、申し訳ありません!」
するとリリアは顔を赤くして、叫ぶような声を上げながら一瞬で俺から離れて行くのだった。
「ついユート様の筋肉を触るのに夢中になってしまって!」
「いや、大丈夫だから気にしないでくれ」
気にされるとこっちも恥ずかしくなってしまう。
「くそっ! ユートの奴羨ましいぜ!」
「リリアちゃんに抱きついてもらえるなんて」
「でも二人は恋人同士で同じ家に住んでるんだろ? 夜はもっと激しいことをしているんじゃないか?」
そういえばそういう設定だったな。
ここはなんて答えればいいのか考えていると、その前にリリアがとんでもないことを口にし始めた。
「そ、そのとおりです! 夜のユート様はとっても激しいです! 私はいつも朝寝不足になっています!」
「えっ!」
俺はリリアのぶっ飛んだ答えに思わず声を上げてしまう。
異性と同じベッドで寝て、何も感じないリリアのことだ。絶対夜の激しいの意味がわかっていないだろう。しかも朝は眠くていつもボケボケなことを俺のせいにしたな。
「だからいつもリリアちゃんは朝眠そうにしているのか」
「そ、そうですね」
兵士の人達と殺気が一段と強くなり、俺を睨み付けてくる。
これはどうしたらいいんだ。否定したいところだけど、否定したら俺とリリアが恋人ではないことがバレるかもしれない。
「こうなったら俺達がユートを倒して、リリアちゃんを魔の手から解放してやる!」
「ユート! 貴様の血は何色だ!」
「勝負だユート! 最近身体の調子がいいんだ。負ける気がしないぜ!」
「凄まじい闘志だな。皆やる気があってけっこうけっこう!」
いや、トールさん。そうなに嬉しそうに言わないで下さい。この人達は人を殺す勢いですよ。
ここにいる人は皆、リリアにデレデレだから今の発言に怒りを感じてるのだろう。
このままだと本当に命を奪われかねない。
「いいですよ。ただ俺は殺られるつもりはありませんけどね」
こうなったら実力で黙らせるしかないな。
「行くぞ!」
「「「うおぉぉぉぉっ!」」」
そして俺は向かってくる兵士達を全て返り討ちにして、何とかこの殺気に満ちた空気を静めることに成功するのであった。
リリアの声援が俺の耳に入る。
これは例え訓練でも負けられないな。
しかしトールさんとの手合わせは初めてだ。油断はできない。
「あんなに可愛い子に応援されるなんて、羨ましい限りだぜ」
「応援ならトールさんもあるじゃないですか」
「隊長! ユートに勝って下さい」
「一撃くらい食らわせて下さいよ。弱った所を俺が倒しますから」
俺は外野に目を向けると野太い声が辺りに響き渡っていた。
「部下達の前で簡単に負ける訳にはいかん」
トールさんは大剣を上段に構え魔力を溜めている。
ちなみにこの訓練では魔力を使うのはありだ。
だが実際に剣に魔力を乗せることが出来るのは、トールさんを含めて二人しかいない。
だからこの二人と戦う時は特に注意が必要だ。
「我が渾身の一撃で、ユートの身体を切り裂いてやろう」
そんなことをされたら確実に死ぬぞ。
もしかしたらトールさんは、これが訓練だと言うことを忘れているのだろうか。
「逃げたいなら逃げてもいいぞ」
見たところトールさんの売りはおそらく重い一撃だ。
かわした隙に斬りつけるのが最善だが、ここは敢えて挑発に乗って迎え撃つ。
俺は剣に魔力を込めて構える。
「受けて立ちますよ」
「良い度胸だ」
張り詰めた空気がこの場に流れる。
互いに一撃で相手を仕留めると考えているため、勝負は一瞬で終わるだろう。
「行くぞ! はあっ!」
「ふっ!」
トールさんは魔力もさながら剣の腕もいい。
重い剣がぶれることなく真っ直ぐ脳天に迫ってくる。
これはかわすか防がないと本当にやばいな。
俺は死を意識させる剣に対して、下段から剣を繰り出す。
キィンっ!
すると高い金属音が辺りに響くと共に、一本の剣が真っ二つに折れ、上空へと舞う。
「勝負あったな」
「ええ」
一対一の戦いが終わり、周囲の張り詰めた空気は四散していった。
「剣が折れてしまったぞ」
「まさか隊長の大剣が⋯⋯」
兵士の人達は先程とは違い、呆然と結果を見つめている。
「さすがユート様です」
ふう⋯⋯何とかリリアの期待に応えることができたな。
「これは完全に俺の負けだな」
「隊長⋯⋯」
「まさか隊長が負けるなんて⋯⋯」
「魔力、剣技、力、全て俺の方が劣っていた。勝っていたのは剣の重さくらいだ」
兵士の人達とは違い、トールさんは冷静に結果を分析していた。
「魔力、剣技はわかるとしても力もですか!?」
「どう見ても筋肉バカ⋯⋯いえ、筋肉質の隊長の方が力は上だと思いますが」
「何か言ったか?」
「何も言ってません!」
兵士の一人が思わず失言をしてしまうが、その気持ちはわからないでもない。トールさんは鍛練が大好きで、時間さえあれば筋肉を鍛えているからな。
「本当ですか? トールさんの方が身体も大きいし、力があるように見えますが⋯⋯触って確認してもいいですか?」
「いいよ」
「では失礼します」
リリアが俺の正面に来て身体を触り始める。
「うわぁ⋯⋯すごいです。腕がとても硬いです」
手から始まり、腕、肩へとリリアの手が移動していく。
ちょっと距離が近くないか? リリアの甘い匂いがわかるぞ。
何だかちょっと恥ずかしくなってきた。リリアを意識しないようにするため、目を閉じよう。
「剣を振るには広背筋も大切なんだ」
「広背筋ですか? それはどこでしょうか?」
「背中だよ。ユートは筋肉も凄いが力の入れ方も上手い⋯⋯」
隊長さんの言葉が止まってしまった。
そして俺の背中にリリアの手の温もりを感じる。しかし何故かリリアの温もりが胸の部分にも感じた。
俺は何が起きたのかわからず目を開けると、吐息がわかる距離にリリアの姿があった。
「リ、リリア?」
どうやら背中の筋肉を確かめるために、リリアは俺を抱きして確認していたようだ。
一緒のベッドで寝たり、朝の淫らな格好をしたリリアを見ているから少しは耐性が出来たが、さすがにこれは俺も恥ずかしい。
「ユート様は毎日鍛えていますから、この硬い筋肉も納得です」
だが当の本人はこの状況に気づいていないのか、平然としていた。
「リリアちゃん大胆だな」
「えっ? それはどういうことでしょうか?」
「俺達の前でユートとイチャついてるじゃねえか」
トールさんに指摘され、俺はリリアと視線が合う。
「ももも、申し訳ありません!」
するとリリアは顔を赤くして、叫ぶような声を上げながら一瞬で俺から離れて行くのだった。
「ついユート様の筋肉を触るのに夢中になってしまって!」
「いや、大丈夫だから気にしないでくれ」
気にされるとこっちも恥ずかしくなってしまう。
「くそっ! ユートの奴羨ましいぜ!」
「リリアちゃんに抱きついてもらえるなんて」
「でも二人は恋人同士で同じ家に住んでるんだろ? 夜はもっと激しいことをしているんじゃないか?」
そういえばそういう設定だったな。
ここはなんて答えればいいのか考えていると、その前にリリアがとんでもないことを口にし始めた。
「そ、そのとおりです! 夜のユート様はとっても激しいです! 私はいつも朝寝不足になっています!」
「えっ!」
俺はリリアのぶっ飛んだ答えに思わず声を上げてしまう。
異性と同じベッドで寝て、何も感じないリリアのことだ。絶対夜の激しいの意味がわかっていないだろう。しかも朝は眠くていつもボケボケなことを俺のせいにしたな。
「だからいつもリリアちゃんは朝眠そうにしているのか」
「そ、そうですね」
兵士の人達と殺気が一段と強くなり、俺を睨み付けてくる。
これはどうしたらいいんだ。否定したいところだけど、否定したら俺とリリアが恋人ではないことがバレるかもしれない。
「こうなったら俺達がユートを倒して、リリアちゃんを魔の手から解放してやる!」
「ユート! 貴様の血は何色だ!」
「勝負だユート! 最近身体の調子がいいんだ。負ける気がしないぜ!」
「凄まじい闘志だな。皆やる気があってけっこうけっこう!」
いや、トールさん。そうなに嬉しそうに言わないで下さい。この人達は人を殺す勢いですよ。
ここにいる人は皆、リリアにデレデレだから今の発言に怒りを感じてるのだろう。
このままだと本当に命を奪われかねない。
「いいですよ。ただ俺は殺られるつもりはありませんけどね」
こうなったら実力で黙らせるしかないな。
「行くぞ!」
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