異世界を裏から支配する~表舞台は信頼できる仲間に任せて俺は無能を装って陰で暗躍する~

マーラッシュ

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二人目の解放者

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 ボーゲンの襲撃があった二日後の早朝。
 昨日は一昨日と同じ様に多くの客がフローラの店に訪れたが、スタッフ達も少し仕事に慣れてきたこともあり、上手く業務を回すことができた。

 そしてさらに1週間が経った頃、リアから1つの報告が入った。

「ボーゲンですがフローラさんの店に侵入、お墨付きに手を出そうとしたことにより、死罪となりました。持っていた財産は姪であるフローラさんの物になります」
「教えて頂きありがとうございます」

 想定通りの展開だ。ボーゲンには親族が姪であるフローラしかいなかった。従って財産はフローラの物になるのは必然だ。これで次の計画に移れる。

「これで⋯⋯これで

 そう、フローラの目的の1つに、店の名前を取り戻すということがあった。そのため、今フローラの店には正式な名前がない。サレン商店という名前をつけるためにあえて店名をつけなかったのだ。
 フローラからそのことを相談された時、俺の中ではボーゲンの店を潰す手段がいくつもあったため、すぐに国王からお墨付きを貰える策を出した。
 正直もう少し時間はかかるとは思っていたが、ボーゲンが夜の店に襲撃というバカなことをしてくれたため、予想以上に早く店名を取り戻すことができたのだ。

「当初の予定通り店を改築するということでいいか?」
「はい。よろしくお願いします」

 そして何故サレン商店の隣にフローラの店を出したかというと、ボーゲンの店を潰すという理由もあったが、一番の狙いは店を取り返した後に、合併して使えるようにするためだ。
 これから冷蔵庫やお墨付きの件で、多くの客はフローラの店に訪れるだろう。
 それにエルスリア1の商店を目指すには、それなりの広さが必要だからな。

「それと今日からフローラにも鍛練を受けてもらうぞ」

 今後フローラには色々な商品の販売、開発をして店を大きくしてもらう。そうなると必ず嫉妬や妬みで多くの敵を作ることになるだろう。ボーゲンのように力ずくで強硬してくる者もいるかもしれない。
 その時に動くことが出来ず、死にましたという結果にならないように、フローラを鍛える。それにフローラは強くなることによって、相手を恐れることがなく、交渉事に対して精神的に優位に立てるというメリットもあるしな。

「わかりました。お手柔らかにお願いします」
「それはどうかな」
「その不敵な笑み⋯⋯少し怖いです」
「フローラは強くなるために何でもすると誓えるか?」
「誓えます」
「それなら目を閉じてくれ」
「こ、こうですか?」

 純心無垢という言葉が似合うフローラが、俺の言葉に従って目を閉じる。
 そして俺は何でもするという許可を得ているので、斜め上に顔を向けたフローラの唇に向かって、自分の唇を重ねた。

「んっ!」

 するとフローラは予想外のことで驚いたのか目を見開く。
 さすがにいきなりキスされるとは思っていなかったか。だけどそれは一瞬のことで、フローラはキスには意味があると感じてくれたのか目を閉じ受け入れてくれる。
 そしてリアの時と同様に、俺達を中心に風が舞い上がり、そして静まるとゆっくりと唇を離す。
 すると側にあるフローラの頬は紅潮し、俺には熱を帯びているように見えた。

「ユ、ユウトさん⋯⋯ユウトさんは私のことが好⋯⋯あいたっ!」

 フローラは何かを言いかけたが、背後からリアがげんこつを食らわせたため、涙目になっている。

「あなたは何を言っているのですか? まさかキスでユウト様の寵愛を受けられると勘違いしているのでは?」
「ひぃっ!」

 リアは笑顔で話しているけど目が笑ってない。とてつもなく怒っているように見えるけど気のせいか?
 フローラもそれがわかっているから、リアに恐れをなしているようだ。
 それにしても、リアはいつの間に身が凍るような殺気を出せるようになったんだ? まだ鍛練の指導は二回しか行っていないけど、成長の速度が早いな。

「おバカなことを言ってないで、自分の身体の変化に気づきませんか?」
「変化⋯⋯ですか? そういえば何だか身体が軽いような⋯⋯それに頭の中がスッキリしてます」
「それがユウトさんの力です。今あなたの能力は解放されて、身体と知力が強化されているので、通常に鍛練するよりも早く経験値を積むことができるのです」

 全てリアに言われてしまった。
 まあ説明する手間が省けたのでよしとしよう。

「今日は鍛練初日ですし、ユウト様のお手を煩わせるのも申し訳ないので、私が指導して上げましょう」
「リ、リアさんがですか⋯⋯」
「そうです。まずはフローラさんには基礎体力をつけてもらいますので、腕立て伏せを二百回お願いします」
「に、二百回ですか! そんなの無理です!」
「無理かどうかは私が決めます。口を開く余裕があるなら三百回に変更しようかしら」
「ひぃっ! やります! やりますから二百回でお願いします」

 フローラの指導までリアが始めてしまった。
 まあリアの言うとおり、戦うことに関しては素人のフローラは、基礎体力の強化からで間違っていないが。

 それにしても何故リアはあんなに怒っているのだろうか?

「しっかりと肘を曲げて下さい」
「リアさん厳しいです。だ、誰か私を助けて下さい!」

 その理由がわからないまま、フローラは悲鳴を上げながら腕立て伏せをするのだった。
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