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初の実戦
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俺とフローラ、そして店の店員二人は馬車に揺られてガルバトルの街へと向かう。
「ユウトさんが馬車を動かすことが出来て助かりました」
フローラは御者をしている俺の横に座り話しかけてくる。
「こんなこともあろうかと馬車や乗馬は嗜んでいる」
「乗馬もですか? 何だか貴族みたいですね」
鋭い質問をしてくるな。
だがフローラは答えを待っている感じではないので、その問いに対して返答はしない。
「そういえばユウトさんは、何故ガルバトルへ向かうのですか? まさか神武祭に出るつもりでは⋯⋯」
神武祭は闘技場で行う一対一のバトルだ。
武器あり、魔法、魔道具なしで生死は問わないらしい。また、再起不能になるか、舞台から場外に落ちると敗けのようだ。
そして優勝者は多額の賞金を手に入れることが出来る。さらにこの付近の領主達が観戦しに来ており、その場でスカウトされることもあるとのことだ。今までこの大会で優勝することで、王国の親衛隊や将軍になった者もいるみたいだ。
「それもいいかもしれないな」
「でもユウトさんは大人の部には出れませんよ」
神武祭は年齢によって二つに分かれている。12歳以下は少年・少女の部に出なければならないので、フローラが言うよう大人の部に出場することができない。
そしてエキシビションとして最後に、少年・少女の部の優勝者と大人の部の優勝者が戦うようだ。
領主達に情けない姿を見せることが出来ないので、今までの神武祭では当たり前のことながら、大人の部の優勝者が負けたことはないらしい。
「もしユウトさんが少年・少女の部に出場したら反則ですよ」
まあ12歳以下の子供に勝つことなど、赤子の手をひねるようなものだ。
だが。
「冗談だ。出場する気はないよ。神武祭に良い人材がいないか観に行くだけだ」
「安心しました。いたいけな少年少女が、ユウトさんに蹂躙される姿を見ないで済みます」
「心外だな。俺がそんなことをするように見えるか?」
「だってその⋯⋯ユ、ユウトさんは私の唇を蹂躙してきたじゃないですか」
一応強くなるために何でもすると許可は得たんだが。
しかし乙女心は複雑だという言葉があるように、少し配慮が足りなかったかもしれない。
ここは甘んじて批判を受け入れるべきか。
「その件に関しては――」
俺はフローラに謝罪をしようと口を開くが、突如前方から異様な気配を感じて言葉を止める。
「ユウトさん⋯⋯これは」
フローラも何かを感じ取ったようだ。どうやら鍛練の成果が出ているみたいだな。
そして遠目だが何かがこちらに接近しているのが見えた。
「あれはゴブリンだな」
「さ、三匹もいますよ」
緑色の肌を持つ、醜悪な外見の人型生物だ。そして右手には斧、左手には木の盾を装備している。
「少し怖いけどユウトさんがいるなら安心ですね。ここはパパっとやっつけちゃって下さい」
確かにフローラの言う通り、ゴブリンごときなら瞬きをする間に倒すことができるだろう。
だがせっかく現れてくれた魔物を有効活用するには、俺が倒さない方がいい。
「も、もう側まで来ていますよ! 早くお願いします!」
フローラはゴブリンの醜悪な顔がわかるくらい接近されて、焦りの声をあげる。
そのため俺はフローラは落ち着かせるために、ある策を伝えることにした。
「よし。ここはフローラの出番だな」
「えっ? 今なんて言いました?」
「鍛練の成果をみせる時だ。フローラ、頼んだぞ」
俺がゴブリンを何とかする策を伝えると、フローラは顔を真っ青にして、絶望の表情を浮かべていた。
「ななな、何を言ってるんですか! 私みたいなか弱い女の子に、魔物が倒せるはずないがないです!」
自分のことをか弱いと口にするなんて、意外と余裕がありそうだな。
やはりここはフローラに倒してもらおう。
「店長、どうしたんですか? 大きな声をあげて」
フローラが騒いだことで、馬車の中にいた店員のトムとジュリがカーテンをめくり、顔を出してきた。
「どうやらゴブリンが出たみたいです」
「「ゴ、ゴブリン!」」
「すぐにフローラさんが追い払うから、二人は馬車の中で待ってて下さい」
二人が俺の言葉に従ってくれるといいが。下手な正義感を出して子供だけに任せてられない、という展開にならないことを願う。
それにしても子供の振りをするのは本当に疲れるな。
「わ、わかりました」
「店長お気をつけて」
そしてトムとジュリは、怯えた表情を浮かべながら天幕の中へと戻っていく。
良かった。どうやらこちらに全てを任せてくれるようだ。
「そ、そんな⋯⋯」
「さあ、もう時間はないぞ。覚悟を決めろ」
ゴブリンを迎え撃つために俺は馬車を止める。
だがフローラはまだ恐怖が勝っているのか、足が前に進んでいない。
「大丈夫だ。普段俺と鍛練しているフローラなら勝てる」
「で、でも⋯⋯自信がありません」
「もしやられそうになったら必ず俺が助ける」
「それならせめて解放状態にして下さい」
「それはなしだ。今のフローラならそんなことをしなくてもゴブリンに勝てるからな。自分を信じられないなら、勝てると言っている俺を信じろ。俺のことは信じられないか?」
「ユウトさんのことは誰よりも信じています」
フローラは真っ直ぐと俺の目を見据えて言い放つ。
その瞳にはもう怯えた色は見られない。
「良い子だ」
そして俺はフローラの頭を撫でる。
するとフローラは剣を片手に、ゴブリンへと立ち向かうのであった。
「ユウトさんが馬車を動かすことが出来て助かりました」
フローラは御者をしている俺の横に座り話しかけてくる。
「こんなこともあろうかと馬車や乗馬は嗜んでいる」
「乗馬もですか? 何だか貴族みたいですね」
鋭い質問をしてくるな。
だがフローラは答えを待っている感じではないので、その問いに対して返答はしない。
「そういえばユウトさんは、何故ガルバトルへ向かうのですか? まさか神武祭に出るつもりでは⋯⋯」
神武祭は闘技場で行う一対一のバトルだ。
武器あり、魔法、魔道具なしで生死は問わないらしい。また、再起不能になるか、舞台から場外に落ちると敗けのようだ。
そして優勝者は多額の賞金を手に入れることが出来る。さらにこの付近の領主達が観戦しに来ており、その場でスカウトされることもあるとのことだ。今までこの大会で優勝することで、王国の親衛隊や将軍になった者もいるみたいだ。
「それもいいかもしれないな」
「でもユウトさんは大人の部には出れませんよ」
神武祭は年齢によって二つに分かれている。12歳以下は少年・少女の部に出なければならないので、フローラが言うよう大人の部に出場することができない。
そしてエキシビションとして最後に、少年・少女の部の優勝者と大人の部の優勝者が戦うようだ。
領主達に情けない姿を見せることが出来ないので、今までの神武祭では当たり前のことながら、大人の部の優勝者が負けたことはないらしい。
「もしユウトさんが少年・少女の部に出場したら反則ですよ」
まあ12歳以下の子供に勝つことなど、赤子の手をひねるようなものだ。
だが。
「冗談だ。出場する気はないよ。神武祭に良い人材がいないか観に行くだけだ」
「安心しました。いたいけな少年少女が、ユウトさんに蹂躙される姿を見ないで済みます」
「心外だな。俺がそんなことをするように見えるか?」
「だってその⋯⋯ユ、ユウトさんは私の唇を蹂躙してきたじゃないですか」
一応強くなるために何でもすると許可は得たんだが。
しかし乙女心は複雑だという言葉があるように、少し配慮が足りなかったかもしれない。
ここは甘んじて批判を受け入れるべきか。
「その件に関しては――」
俺はフローラに謝罪をしようと口を開くが、突如前方から異様な気配を感じて言葉を止める。
「ユウトさん⋯⋯これは」
フローラも何かを感じ取ったようだ。どうやら鍛練の成果が出ているみたいだな。
そして遠目だが何かがこちらに接近しているのが見えた。
「あれはゴブリンだな」
「さ、三匹もいますよ」
緑色の肌を持つ、醜悪な外見の人型生物だ。そして右手には斧、左手には木の盾を装備している。
「少し怖いけどユウトさんがいるなら安心ですね。ここはパパっとやっつけちゃって下さい」
確かにフローラの言う通り、ゴブリンごときなら瞬きをする間に倒すことができるだろう。
だがせっかく現れてくれた魔物を有効活用するには、俺が倒さない方がいい。
「も、もう側まで来ていますよ! 早くお願いします!」
フローラはゴブリンの醜悪な顔がわかるくらい接近されて、焦りの声をあげる。
そのため俺はフローラは落ち着かせるために、ある策を伝えることにした。
「よし。ここはフローラの出番だな」
「えっ? 今なんて言いました?」
「鍛練の成果をみせる時だ。フローラ、頼んだぞ」
俺がゴブリンを何とかする策を伝えると、フローラは顔を真っ青にして、絶望の表情を浮かべていた。
「ななな、何を言ってるんですか! 私みたいなか弱い女の子に、魔物が倒せるはずないがないです!」
自分のことをか弱いと口にするなんて、意外と余裕がありそうだな。
やはりここはフローラに倒してもらおう。
「店長、どうしたんですか? 大きな声をあげて」
フローラが騒いだことで、馬車の中にいた店員のトムとジュリがカーテンをめくり、顔を出してきた。
「どうやらゴブリンが出たみたいです」
「「ゴ、ゴブリン!」」
「すぐにフローラさんが追い払うから、二人は馬車の中で待ってて下さい」
二人が俺の言葉に従ってくれるといいが。下手な正義感を出して子供だけに任せてられない、という展開にならないことを願う。
それにしても子供の振りをするのは本当に疲れるな。
「わ、わかりました」
「店長お気をつけて」
そしてトムとジュリは、怯えた表情を浮かべながら天幕の中へと戻っていく。
良かった。どうやらこちらに全てを任せてくれるようだ。
「そ、そんな⋯⋯」
「さあ、もう時間はないぞ。覚悟を決めろ」
ゴブリンを迎え撃つために俺は馬車を止める。
だがフローラはまだ恐怖が勝っているのか、足が前に進んでいない。
「大丈夫だ。普段俺と鍛練しているフローラなら勝てる」
「で、でも⋯⋯自信がありません」
「もしやられそうになったら必ず俺が助ける」
「それならせめて解放状態にして下さい」
「それはなしだ。今のフローラならそんなことをしなくてもゴブリンに勝てるからな。自分を信じられないなら、勝てると言っている俺を信じろ。俺のことは信じられないか?」
「ユウトさんのことは誰よりも信じています」
フローラは真っ直ぐと俺の目を見据えて言い放つ。
その瞳にはもう怯えた色は見られない。
「良い子だ」
そして俺はフローラの頭を撫でる。
するとフローラは剣を片手に、ゴブリンへと立ち向かうのであった。
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