異世界を裏から支配する~表舞台は信頼できる仲間に任せて俺は無能を装って陰で暗躍する~

マーラッシュ

文字の大きさ
17 / 54

初の実戦

しおりを挟む
 俺とフローラ、そして店の店員二人は馬車に揺られてガルバトルの街へと向かう。

「ユウトさんが馬車を動かすことが出来て助かりました」

 フローラは御者をしている俺の横に座り話しかけてくる。

「こんなこともあろうかと馬車や乗馬は嗜んでいる」
「乗馬もですか? 何だか貴族みたいですね」

 鋭い質問をしてくるな。
 だがフローラは答えを待っている感じではないので、その問いに対して返答はしない。

「そういえばユウトさんは、何故ガルバトルへ向かうのですか? まさか神武祭に出るつもりでは⋯⋯」

 神武祭は闘技場で行う一対一のバトルだ。
 武器あり、魔法、魔道具なしで生死は問わないらしい。また、再起不能になるか、舞台から場外に落ちると敗けのようだ。
 そして優勝者は多額の賞金を手に入れることが出来る。さらにこの付近の領主達が観戦しに来ており、その場でスカウトされることもあるとのことだ。今までこの大会で優勝することで、王国の親衛隊や将軍になった者もいるみたいだ。

「それもいいかもしれないな」
「でもユウトさんは大人の部には出れませんよ」

 神武祭は年齢によって二つに分かれている。12歳以下は少年・少女の部に出なければならないので、フローラが言うよう大人の部に出場することができない。
 そしてエキシビションとして最後に、少年・少女の部の優勝者と大人の部の優勝者が戦うようだ。
 領主達に情けない姿を見せることが出来ないので、今までの神武祭では当たり前のことながら、大人の部の優勝者が負けたことはないらしい。

「もしユウトさんが少年・少女の部に出場したら反則ですよ」

 まあ12歳以下の子供に勝つことなど、赤子の手をひねるようなものだ。
 だが。

「冗談だ。出場する気はないよ。神武祭に良い人材がいないか観に行くだけだ」
「安心しました。いたいけな少年少女が、ユウトさんに蹂躙される姿を見ないで済みます」
「心外だな。俺がそんなことをするように見えるか?」
「だってその⋯⋯ユ、ユウトさんは私の唇を蹂躙してきたじゃないですか」

 一応強くなるために何でもすると許可は得たんだが。
 しかし乙女心は複雑だという言葉があるように、少し配慮が足りなかったかもしれない。
 ここは甘んじて批判を受け入れるべきか。

「その件に関しては――」

 俺はフローラに謝罪をしようと口を開くが、突如前方から異様な気配を感じて言葉を止める。

「ユウトさん⋯⋯これは」

 フローラも何かを感じ取ったようだ。どうやら鍛練の成果が出ているみたいだな。
 そして遠目だが何かがこちらに接近しているのが見えた。

「あれはゴブリンだな」
「さ、三匹もいますよ」

 緑色の肌を持つ、醜悪な外見の人型生物だ。そして右手には斧、左手には木の盾を装備している。

「少し怖いけどユウトさんがいるなら安心ですね。ここはパパっとやっつけちゃって下さい」

 確かにフローラの言う通り、ゴブリンごときなら瞬きをする間に倒すことができるだろう。
 だがせっかく現れてくれた魔物を有効活用するには、俺が倒さない方がいい。

「も、もう側まで来ていますよ! 早くお願いします!」

 フローラはゴブリンの醜悪な顔がわかるくらい接近されて、焦りの声をあげる。
 そのため俺はフローラは落ち着かせるために、ある策を伝えることにした。

「よし。ここはフローラの出番だな」
「えっ? 今なんて言いました?」
「鍛練の成果をみせる時だ。フローラ、頼んだぞ」

 俺がゴブリンを何とかする策を伝えると、フローラは顔を真っ青にして、絶望の表情を浮かべていた。

「ななな、何を言ってるんですか! 私みたいなか弱い女の子に、魔物が倒せるはずないがないです!」

 自分のことをか弱いと口にするなんて、意外と余裕がありそうだな。
 やはりここはフローラに倒してもらおう。

「店長、どうしたんですか? 大きな声をあげて」

 フローラが騒いだことで、馬車の中にいた店員のトムとジュリがカーテンをめくり、顔を出してきた。

「どうやらゴブリンが出たみたいです」
「「ゴ、ゴブリン!」」
「すぐにフローラさんが追い払うから、二人は馬車の中で待ってて下さい」

 二人が俺の言葉に従ってくれるといいが。下手な正義感を出して子供だけに任せてられない、という展開にならないことを願う。
 それにしても子供の振りをするのは本当に疲れるな。

「わ、わかりました」
「店長お気をつけて」

 そしてトムとジュリは、怯えた表情を浮かべながら天幕の中へと戻っていく。
 良かった。どうやらこちらに全てを任せてくれるようだ。

「そ、そんな⋯⋯」
「さあ、もう時間はないぞ。覚悟を決めろ」

 ゴブリンを迎え撃つために俺は馬車を止める。
 だがフローラはまだ恐怖が勝っているのか、足が前に進んでいない。

「大丈夫だ。普段俺と鍛練しているフローラなら勝てる」
「で、でも⋯⋯自信がありません」
「もしやられそうになったら必ず俺が助ける」
「それならせめて解放状態にして下さい」
「それはなしだ。今のフローラならそんなことをしなくてもゴブリンに勝てるからな。自分を信じられないなら、勝てると言っている俺を信じろ。俺のことは信じられないか?」
「ユウトさんのことは誰よりも信じています」

 フローラは真っ直ぐと俺の目を見据えて言い放つ。
 その瞳にはもう怯えた色は見られない。

「良い子だ」

 そして俺はフローラの頭を撫でる。
 するとフローラは剣を片手に、ゴブリンへと立ち向かうのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...