異世界を裏から支配する~表舞台は信頼できる仲間に任せて俺は無能を装って陰で暗躍する~

マーラッシュ

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オルタンシアVSアーホ

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 オルタンシアside

 まさかキスをされると思わなかったけど、力を授けてくれるというのは本当だった。

 私は剣を拾いアーホと対峙する。

「別れの挨拶は済んだか?」
「そのようなことをする必要はありません。あなたには絶対に負けませんから。父の仇を取らせて頂きます」

 先程のアーホの力は脅威でしたが、今の私なら⋯⋯

「クックック⋯⋯お前は家を再興するために剣の腕を磨いていたんだよなあ。それは本当か?」
「どういう意味ですか?」
「いや、本当は男をたらしこむ技術を学んでいたんじゃないかと思ってな」
「何を言って――」
「自分の力じゃ不可能だと感じ、男にすり寄るとは。どうやら娼婦の才能はあったようだな」
「ふざけないで下さい!」
「俺がお前を買ってやろうか? ただし奴隷としてな」

 もうこれ以上この人と話すことはない。ただ不快になるだけです。
 私はアーホの言葉を無視して斬りかかる。
 しかし私の攻撃は、アーホの剣によって受け止められてしまう。

 それなら!

 私はアーホに向かって連続で斬りつける。
 しかしアーホは私の攻撃を全てかわしてしまう。

「くっ! さっきよりマシになったがまだまだな」
「これは⋯⋯」

 まさかこんなことって⋯⋯

「どんな手を使ったかわからないが強化されても力、スピード、全て俺の方が上だ! 今度はこちらから行かせてもらうぞ」

 アーホは先程の私と同じ様に剣で斬りつけてくる。
 だけどその剣速はとても遅く感じた。
 さっきまではアーホの剣についていくので精一杯だったけど、今はハッキリとその攻撃がわかる。
 強化されたのは力とスピードの二つだと思っていたけど、動体視力も向上していることがわかる。

 あのユウトという少年は底がしれない。
 剣技の腕も尋常ではないし、この強化の力⋯⋯このような力は聞いたことがありません。
 もしかして魔法かと考えたけど、魔法は手から発動するもの。でもキスをされた時にユウトの手は光っていなかった。だから魔法じゃない。
 いったいあの力は⋯⋯はっ!
 そそそ、そういえば私⋯⋯キキキ、キスをされてしまいました! しかも二度も!
 初めてでしたのに無理やりされて。ファーストキスはレモンの味というけど全然わかりませんでした。あの時はいきなりでしたから⋯⋯もう一度すればわかるかもしれません。
 はっ! わ、私は何を考えて! 
 今はそのようなことよりアーホを倒すことが先決です。

 私はアーホの攻撃をかわし、剣で受け止め、全て防ぐことに成功する。

「な、何故だ! 何故私の攻撃を防ぐことが出来る! 剣による強化がされていないのか!」

 そしてアーホは再度剣で攻撃をしてくる。
 しかし先程私に攻撃をかわされたことが原因なのか、その剣には焦りが見えた。
 剣筋が単調になっており、これなら簡単にかわすことが出来る。

「バカなバカなバカな! 何故当たらない! これがオルタンシアの本当の実力だというのか!」
「残念ですが私はまだ本気を出していませんよ」

 アーホは私の言葉を聞いて絶望の表情を浮かべる。

「つ、強がりを言うのはよせ。い、今までは手加減していたとでもいうのか」
「それはこれから身を持って体験して下さい」

 先程までは強化の力が強すぎて、加減がわからなかったので力を抑えていた。でも何度か剣を振るい、防御することで段々と慣れてきました。
 さあ、ここからは全力でやらせて頂きます!

 私はアーホに向かって一直線に向かっていく。

「返り討ちにしてくれるわ!」

 アーホは上段から剣を振り下ろしてきたので、私はさらにスピードを上げ、左にかわして横から斬りつける。

「ぐわっ!」
「まだまだ終わりませんよ」
「小癪な! これ以上はやらせん!」

 アーホは再び剣を振り回してくるが、私はその度にかわし、何度も斬りつける。するとアーホは、剣を振るイコール攻撃を食らうという意識を刷り込まれ手を出せずにいた。

「どうしました? もう終わりですか?」
「こ、こんなはずは⋯⋯信じられん」
「信じる信じないはあなたの勝手ですがこれが現実です」
「ふざけるな! 俺は子爵家の者だぞ! お前のような下民に負けるというのか!」
「ここは戦場です。地位など関係ありません。それでは父の仇を取らせて頂きます!」
「や、やめろ!」

 私は喚くアーホを無視して剣を振る。

「ぎゃあぁぁぁっ!」

 するとアーホの右腕の切断に成功した。

「う、腕が! 腕が腕が! は、はやく私の腕をぉぉぉ!」

 私は腕を斬られた激痛で泣き叫び、地面をのたうち回るアーホを見下ろす。

「わ、悪かった! お前の父親を陥れたのも兄の命令だったんだ! 俺は仕方なく従っただけだ!」

 そして私とこれ以上戦っても敵わないと感じたのか、アーホが命乞いを始めた。
 これが父の仇?
 あれだけ偉そうにしていたのに、今は見苦しくて情けなくて斬る気もおきません。
 おそらくこのまま放っておけば、出血多量で死ぬはず。
 せいぜいそれまでの時間、これまで好き勝手生きてきた人生を悔いるといいです。

 私はアーホに背を向けて、ユウトさんに頼まれた剣を拾いに行く。
 とにかく早くユウトさんに剣を渡さないと。
 アーホと戦っている時も、ユウトさんが見知らぬ魔物と戦っていることが把握出来た。
 おそらくあの魔物を倒すためには、この剣が必要だということが想像出来る。

 私は斬り落としたアーホの腕から剣を取った。

「死ね!」

 そして私が背後を見せた隙をついて、アーホが隠し持った短剣で斬りつけてきた。
 だけど私にはわかっていた。
 アーホがこちらを恨めしそうに見ていたことも、短剣を取り出したことも、襲いかかってくることも。

 私はヒラリと身を捻って短剣をかわし、そして隙だらけになった首に向かって剣を振り下ろすのであった。
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