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月明かりの夜
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もしかしたらダグラス公爵がルルに冷たい態度を取っていたのは、才能がないからなのか? それなら酷い話だ。
それに公爵令嬢という立場なら、周りからの視線も人一倍注がれていたのだろう。そのような中で、兄姉と比べられて無能のレッテルを張られるのは相当きついな。
ルルが帝国に戻りたくない気持ちもわからないでもない。
「ルル、無理して帝国に戻らなくてもいいぞ。ゲオルクさんには俺から⋯⋯」
「大丈夫です⋯⋯いつまでも逃げる訳にはいかないので」
「逃げる?」
「いえ、何でもないです」
やはり父親や家族から逃げているということか。ルルのことを考えるなら、ローレリアに置いてきた方がいいかもしれない。でも本人が行くと言ったんだ。ここは見守るべきなのか?
「⋯⋯ルルさんの気持ち⋯⋯わかります」
「えっ?」
ルルが驚きの表情を浮かべてノアへと視線を向けた。
そういえば俺もマシロから少しだけノアのことを聞いたことがある。確かに二人の境遇は少し似た所があるかもしれない。
「僕も毛が白のフェンリル族で一匹だけ黒だから敬遠されていました。それに皆より弱いから⋯⋯」
初めて話を聞いた時、多少見た目が違い、弱いから仲間外れにするなんて、フェンリル族も人間みたいに陰湿だなと思った。
だからノアはフェンリル族を見返すために、天界から地上に降りて鍛練をしているのだ。
「ノアさん⋯⋯も⋯⋯」
「はい。僕は強くなるために人間界に来ました」
ルルはノアを見つめ、ノアはルルを見つめる。
そしてゆっくりとルルはノアを抱きしめた。
「天界から一人で⋯⋯ノアさんはすごいですね」
「いえ、僕はユートさんや⋯⋯仲間に恵まれていましたから」
信頼出来る仲間から認められるなんて、これ程嬉しいことはないな。
「仲間ですか⋯⋯でも私は⋯⋯」
「ルルには俺達がいるじゃないか」
「ユートさん⋯⋯ありがとうございます」
お礼の言葉を伸べているが、ルルの顔は晴れてはいない。
やはりそう簡単には消化できる問題じゃないようだ。
「ルルさんには召喚士の才能があるじゃないですか。ぼ、ぼくで良ければいつ喚び出してくれても大丈夫ですよ」
ノアもルルが空元気だと悟ったのか、とんでもないことを口にしてしまう。
ルルもリズやフィーナと同じ猫や犬が好きだからな。いつ召喚されるかわからないぞ。
「ありがとうございます。その時が来たらお願いしますね」
ルルは笑顔で応える。
ルルと同じ様な境遇であるノアにいてもらって良かった。
俺だけではこの笑顔を引き出すことは出来なかっただろう。
安堵のため息をつき、前方の海を眺める。
月の光が射し込み、とても幻想的な風景だ。
前回船に乗った時は魔物の影響ですぐに船を降りてしまったから、ゆっくりしている暇はなかった。
ルルとの話は終わったけど、もう少しここで海を眺めるか。
「綺麗事ですね」
「そうだな」
「こういうのを幻想的な風景って言うのでしょうか。初めてです。こんなに素敵な海を見るのは」
どうやらルルも俺と同じ感想を持っているようだ。だがこの時、ふと疑問に思ったことがあったのでルルに問いかける。
「でもルルは二度目じゃないのか? もしかして帝国からムーンガーデン王国に行くために陸路を使ったのか?」
帝国からローレリアに行くためには、海路を使うことが一般的だ。陸路も使えないこともないが、どちらかというと海路の方が早く行けるはず。
「確かに二度目ですね。でも前は一人だったから、夜に景色を見ようなんて思いませんでした。だから今日この景色を見れて良かったです」
まあ確かに暗がりの中、船の上とはいえ女の子が一人で出歩くのは良くないよな。
ルルは満足そうに海を眺めている。悩みを打ち明けたことが影響しているのか、周囲の重苦しい空気はなくなっていた。
この雰囲気なら聞けるんじゃないか。
俺はルルに関して、一つだけ疑問に思っていることがあった。最初に会った時も感じたが、盗賊から助けた時と比べて性格が違いすぎるのだ。大人しいイメージだったがあれは演技していたのか?
せっかくの機会だし聞いてみるか。
「ルルは⋯⋯」
「スースー」
俺はルルに問いかけようと思ったが、地面から寝息が聞こえてきた。
視線を下に向けるとノアが丸くなって寝ていた。
「夜ですからね」
「そうだな」
寝ている所をリズに抱きしめられて逃げてきたんだ。眠気が襲って来てもおかしくない。ここはもう話を切り上げた方がいいな。
「それじゃあノアは⋯⋯」
「私の部屋で寝かせますね。ユートさんおやすみなさい」
ルルが有無を言わさずノアを連れていってしまった。
本当にノアも⋯⋯それにマシロも大人気だな。
俺は一人、自分の船室に戻りベッドに横になる。そして夜が明けた。
それに公爵令嬢という立場なら、周りからの視線も人一倍注がれていたのだろう。そのような中で、兄姉と比べられて無能のレッテルを張られるのは相当きついな。
ルルが帝国に戻りたくない気持ちもわからないでもない。
「ルル、無理して帝国に戻らなくてもいいぞ。ゲオルクさんには俺から⋯⋯」
「大丈夫です⋯⋯いつまでも逃げる訳にはいかないので」
「逃げる?」
「いえ、何でもないです」
やはり父親や家族から逃げているということか。ルルのことを考えるなら、ローレリアに置いてきた方がいいかもしれない。でも本人が行くと言ったんだ。ここは見守るべきなのか?
「⋯⋯ルルさんの気持ち⋯⋯わかります」
「えっ?」
ルルが驚きの表情を浮かべてノアへと視線を向けた。
そういえば俺もマシロから少しだけノアのことを聞いたことがある。確かに二人の境遇は少し似た所があるかもしれない。
「僕も毛が白のフェンリル族で一匹だけ黒だから敬遠されていました。それに皆より弱いから⋯⋯」
初めて話を聞いた時、多少見た目が違い、弱いから仲間外れにするなんて、フェンリル族も人間みたいに陰湿だなと思った。
だからノアはフェンリル族を見返すために、天界から地上に降りて鍛練をしているのだ。
「ノアさん⋯⋯も⋯⋯」
「はい。僕は強くなるために人間界に来ました」
ルルはノアを見つめ、ノアはルルを見つめる。
そしてゆっくりとルルはノアを抱きしめた。
「天界から一人で⋯⋯ノアさんはすごいですね」
「いえ、僕はユートさんや⋯⋯仲間に恵まれていましたから」
信頼出来る仲間から認められるなんて、これ程嬉しいことはないな。
「仲間ですか⋯⋯でも私は⋯⋯」
「ルルには俺達がいるじゃないか」
「ユートさん⋯⋯ありがとうございます」
お礼の言葉を伸べているが、ルルの顔は晴れてはいない。
やはりそう簡単には消化できる問題じゃないようだ。
「ルルさんには召喚士の才能があるじゃないですか。ぼ、ぼくで良ければいつ喚び出してくれても大丈夫ですよ」
ノアもルルが空元気だと悟ったのか、とんでもないことを口にしてしまう。
ルルもリズやフィーナと同じ猫や犬が好きだからな。いつ召喚されるかわからないぞ。
「ありがとうございます。その時が来たらお願いしますね」
ルルは笑顔で応える。
ルルと同じ様な境遇であるノアにいてもらって良かった。
俺だけではこの笑顔を引き出すことは出来なかっただろう。
安堵のため息をつき、前方の海を眺める。
月の光が射し込み、とても幻想的な風景だ。
前回船に乗った時は魔物の影響ですぐに船を降りてしまったから、ゆっくりしている暇はなかった。
ルルとの話は終わったけど、もう少しここで海を眺めるか。
「綺麗事ですね」
「そうだな」
「こういうのを幻想的な風景って言うのでしょうか。初めてです。こんなに素敵な海を見るのは」
どうやらルルも俺と同じ感想を持っているようだ。だがこの時、ふと疑問に思ったことがあったのでルルに問いかける。
「でもルルは二度目じゃないのか? もしかして帝国からムーンガーデン王国に行くために陸路を使ったのか?」
帝国からローレリアに行くためには、海路を使うことが一般的だ。陸路も使えないこともないが、どちらかというと海路の方が早く行けるはず。
「確かに二度目ですね。でも前は一人だったから、夜に景色を見ようなんて思いませんでした。だから今日この景色を見れて良かったです」
まあ確かに暗がりの中、船の上とはいえ女の子が一人で出歩くのは良くないよな。
ルルは満足そうに海を眺めている。悩みを打ち明けたことが影響しているのか、周囲の重苦しい空気はなくなっていた。
この雰囲気なら聞けるんじゃないか。
俺はルルに関して、一つだけ疑問に思っていることがあった。最初に会った時も感じたが、盗賊から助けた時と比べて性格が違いすぎるのだ。大人しいイメージだったがあれは演技していたのか?
せっかくの機会だし聞いてみるか。
「ルルは⋯⋯」
「スースー」
俺はルルに問いかけようと思ったが、地面から寝息が聞こえてきた。
視線を下に向けるとノアが丸くなって寝ていた。
「夜ですからね」
「そうだな」
寝ている所をリズに抱きしめられて逃げてきたんだ。眠気が襲って来てもおかしくない。ここはもう話を切り上げた方がいいな。
「それじゃあノアは⋯⋯」
「私の部屋で寝かせますね。ユートさんおやすみなさい」
ルルが有無を言わさずノアを連れていってしまった。
本当にノアも⋯⋯それにマシロも大人気だな。
俺は一人、自分の船室に戻りベッドに横になる。そして夜が明けた。
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