辺境に住む元Cランク冒険者である俺の義理の娘達は、剣聖、大魔導師、聖女という特別な称号を持っているのに何歳になっても甘えてくる

マーラッシュ

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別れて即再会

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「それではトアさんのクラスへ案内しますね」

 ルノリアさんはそう言って机の上にあるベルを鳴らすとメイドの服を着た女性が入ってきた。
 この方がトアのクラスまで連れていってくれるのかと思ったが、ルノリアさんに何か言われるとメイドさんは理事長室を出ていってしまう。
 そして数十秒後理事長室のドアがノックされ現れたのは⋯⋯。


 一人の女性がばつが悪そうな顔を浮かべながら俺の隣を歩いている。

「場所を教えてくれれば1人で行くぞ」

 俺は女性に声をかけるが返事がない。それもそのはず⋯⋯なぜなら俺の案内を理事長から頼まれた人物はコトだったからだ。
 もう二度と現れないで! と啖呵を切って別れたが10分後に自分から会いに行く⋯⋯コトには申し訳ないが俺はこの状況が可笑しくて心の中で笑みを浮かべていた。

「トアのいる所は気配を察知すればわかるから案内はなくても大丈夫だぞ」
「いえ、これは私が理事長先生に頼まれた仕事です。どんなに嫌なことでもちゃんと職務を全うします」

 嫌なら別に⋯⋯と言葉が出かけたが何故か俺はそのことを言うのを躊躇ってしまう。さっきコトと会うつもりはないと決めたんだが⋯⋯やはりどうしても一緒に暮らしていた頃のコトを思い出してしまい非情になれない自分がいる。

 神聖教会養成学校の廊下にコツコツと俺達の歩く音だけ響き渡る。
 このまま無言でトアの所まで行くのもなんだから俺は気になったことを聞いてみる。

「コトはルノリア理事長と知り合いなのか?」

 答えが返ってこないことも予測しながらコトからの言葉を待つ。

「そうよ⋯⋯パパの友達の友人で私の面倒を見てくれていますがそれが? まさか理事長が美人だから狙っているの!」
「いや、そんなつもりはない」
「理事長は結婚して30年経った今でも旦那様と仲が良いおしどり夫婦だからあなたが入る余地はないわ」

 コトは俺の言うことを聞かず捲し立てるように言葉を続けた。
 何で知り合いか聞いただけで俺が理事長を狙っていることになるんだ。それにしてもコトは今、理事長は旦那さんと結婚して30年って言っていたよな。そうなると理事長の年齢は若く見積もっても50歳前後というわけか。俺はそのことを聞いて人体の神秘に驚きを隠せない。

「だから狙ってない。見た目に反して落ち着いているように見えたから気になっただけだ」
「そ、そう⋯⋯」

 そして話していた内容が気まずいものだったせいか再び無言の空気が流れる。コトが俺を恨んでいることもあり昔のように会話することは難しいか。
 俺はコトに話しかけるべき迷っていた時、前方から2人の講師らしき男達が歩いてきた。

「おはようございます」

 コトはすれ違い様に挨拶をするが男性2人からは何も言葉が返ってこない。
 聞こえなかったのか? と一瞬思ったがそうではないことがすぐにわかった。講師らしき2人は少し距離が離れた時に陰口を叩いていたからだ。

「何で神聖系の称号も持っていない奴がこの学校の講師をしているんだ」
「早く出ていってくれないかな。あいつがいるだけでこの学校の価値が下がる」

 そして2人の男達はそのままこの場から立ち去るのであった。

「コト⋯⋯」

 今の2人が言っていたことがどういうことなのかコトに視線を向けるが本人は俺から顔を背ける。
 確かにコトが持っている称号は商人だが神聖系の魔法が使えない訳じゃない。昔鍛練で傷ついた俺の怪我を治療したいと言っておやっさんの指導で神聖系の魔法が使えるようになった。
 まさか神聖系の称号を持っていないから虐められているのか? それと理事長からの紹介で神聖教会養成学校の講師をしていることも気にくわないと思われる要因の一つかもしれない。

「別にあんなの何でもないわ。あなたは余計なことしないでよね」

 だがコトが学生達や講師達からも蔑まれていると知って見過ごす訳には⋯⋯しかしコトに取ってはおやっさんを兵士につき出した俺の手助けなど耐え難い屈辱なのかもしれない。

「だがあの態度はないだろう。俺から理事長に話をしようか?」
「ううん⋯⋯自分で何とかするから大丈夫。ユクトは私のことなんてどうでもいいと思っているんでしょ⋯⋯だったら何もしないで」

 あっ! 今ユクトって⋯⋯コトと再会してから初めて俺の名前を口にしてくれたことに何だか懐かしい気持ちが沸いてくる。口調こそ昔と比べて他人行儀な感じがするが⋯⋯。

「けど俺はコトのことを⋯⋯」

 助けたいと口にしようとした時、突然右奥にある教室の扉が開きトアが出てきた。

「パパ~」
「えっ? パパぁ!!」

 コトの驚きの声が上がると共にトアが俺の胸へと飛び込んできたので優しく受け止める。

「トアに会いに来てくれたの? 嬉しい~」

 そしてトアは俺の胸に追撃攻撃としてさらに頬ずりしてきた。

「ちょ、ちょっとパパってどういうこと!」

 コトが俺の胸ぐらを掴み息がかかりそうな距離で問い詰めてくる。

「いや、これはだな⋯⋯」
「信じられない! トアさんって今3年生だから15歳でしょ? 私達と別れた後自分はすぐに結婚して子供を作って幸せに暮らしていたってこと!」

 確かに時期的に見てそういう風に捉えられてもおかしくないが⋯⋯それよりコトの俺への憎しみのオーラが再会した時より大きい気がする。むしろこれはもう殺意の念が込められていないか!

「違う⋯⋯トアは養子だ」
「養子!? 嘘をついても無駄よ!」

 昔は嘘でも俺の言うことを信じてくれたのに⋯⋯時の流れは残酷だな。
 だがそんな中、俺に救いの手を差し伸べてくれる者がいた。

「嘘じゃないよ。トアとセレナお姉ちゃんとミリアお姉ちゃんは14年前にパパが拾ってくれたの」

 トアが俺に抱きついたままコトに弁明してくれる。

「そうなの⋯⋯トアさんがいうなら本当のことなのね」

 おい! トアが言うと一発で信じるのか!
 俺は激しく抗議したかったがこれ以上ここで騒ぎを起こす訳には行かないので口を閉じることにする。
 なぜならトアが出てきた教室から学生達と講師らしき中年男性が何の騒ぎだと見ているからだ。

「うるさいと思ったらコト先生ですか⋯⋯育ちが悪いと品性が育たないというのは本当のようだな。理事長もなぜこのような者にSクラスを担当させるのか理解が及ばない」
「す、すみません⋯⋯」

 コトは講師らしき男性に頭を下げる。しかし騒いでいたのは申し訳ないがその言い方はないだろう。

「あなたがトアさんのお父さんですか? 私はSクラス担当のクルガと言います」

 そして中年男性は俺の存在に気づいたのかこちらに視線を向け自己紹介をしてくる。

「トアの父親のユクトと申します。先程は廊下で騒いでしまって申し訳ありません」
「いえ、気になさらなくてけっこうです。授業をしていた訳ではありませんから」

 俺が聖女であるトアの父親だということもあるかもしれないがやはりコトへの対応が悪いのはどうしても気になる。

「この後、Sクラスの2年生と3年生で合同の実戦演習がありますがユクトさんも来られますか?」
「本当ですか? ぜひ見学させて下さい」
「わかりました。ではこのまま生徒達と一緒に校庭まで来て下さい」

 そう言ってクルガ先生がコトの横を通り立ち去る時、クルガ先生がコトの肩に手をおき小声で話していた言葉が聞こえてくる。

「大人しく俺の女になれば守ってやったのに⋯⋯」

 こいつ何を言っているんだ! 
 コトはクルガの言葉を聞いてうつむき震えている。少なくともクルガのことを好ましく思っていないことは明白だ。
 コトに関わるつもりはなかったがさすがにこの学校のコトへの態度は見逃せない。
 俺は怒りに震えながらもトアや学生達と共に校庭へと向かうのであった。
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