異世界転生者のリトライ~これから起こることは全てわかっている。世界でただ一人の回復術師はとても有能でした~

マーラッシュ

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何のためのパーティーか

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 俺達がパーティー会場に到着すると、周囲がざわつき始めた。
 国交を絶っていた王国側の人間が珍しいということもあるが、多くの人間はリリシアの美しさに目を奪われているのだろう。
 その証拠に周囲からリリシアを称える声が聞こえてきた。

「なんと美しい姫君だ。息をするのも忘れてしまいそうだ」
「しかも美しさだけではなく、剣の腕も一流だとか」
「さすがはフリーデン王国の至宝と呼ばれるだけはあるな」
「噂ではルドルフ皇子との婚姻を結ぶために帝国を訪れたとか」

 どうやら帝国の貴族達は二人の婚姻のことを知っているようだ。ルドルフ皇子はプライドが高いから、リリシアから婚姻を断られたことで、腸が煮え繰り返っているのだろう。
 だからといってそれでリリシアを辱しめる気なら、俺は奴を絶対に許せない。

 会場はリリシアが現れたことでざわついていたが、突如静寂を訪れる。
 何故なら壇上に、帝国の皇帝であるヨシムが上がったからだ。
 そしてヨシム皇帝陛下は壇上の中央に移動すると、パーティーの挨拶を始めた。

「今日は隣国である――」

 そして壇上の横を見ると、ルドルフと第二皇子であるデレック、第三皇子のアルドリックの姿があった。
 アルドリックは俺の視線に気づいたのか、軽く手を振ってくる。手を振り返してやりたい所だが、ヨシム皇帝陛下が話をしているのに、そのような不敬に当たる行為は出来ない。
 本当ならアルドリックもそのような行為は許されないのだが⋯⋯相変わらず自由な奴だ。

「皆もわかっていると思うが、今世界は未曾有の危機に陥っている。疫病、凶作、異常気象、そして魔物の襲来とどの国も国力が低下しているのだ。過去の遺恨はあるが、余は隣国であるフリーデン王国と共に、この危機を乗り越えて行こうと思っている。今日のパーティーは帝国と王国が手を取り合う第一歩となるだろう。両国の未来のために⋯⋯乾杯!」

 皇帝陛下の挨拶が終わると、再び周囲がざわつき初め、歓談の時間となる。
 すると壇上横にいたルドルフが真っ先にこちらへと向かってきた。
 正直こいつの顔を見たくないのだが、皇子であるため無視することは出来ない。

「これはこれはリリシア王女。本日は帝国のパーティーに参加していただきありがとうございます」
「こちらこそ私共のために、このような素敵なパーティーを開いていただき、感謝致します」

 ルドルフが話しかけてくるが、下卑た笑みを浮かべおり、視線はリリシアの首⋯⋯いや、背中に向けられていた。
 やはりこいつはリリシアの火傷について知っているのだろう。
 そうなるとこのパーティーの目的は、リリシアに恥をかかせるためだということは間違いなさそうだ。

「この度は縁がなく婚姻の話が流れてしまったが、皇帝陛下が仰る通り、我が国は王国と友好関係を結びたいと思っている」
「それは私も同じ考えです」
「ではここにいる貴族達にも我々の友好関係を見せつけるために、一曲ダンスでも躍らないか?」
「い、いえ⋯⋯私はその⋯⋯」

 音楽団はルドルフの思いを察したのか、ダンスの曲を演奏し始める。

「さあ参るぞ。私の誘いを断るなど許されぬことだ」
「あっ!」 

 ルドルフはリリシアの手を強引に取ると、問答無用でパーティー会場の中心へと移動させられた。
 帝国の皇子と王国の王女がダンスをするということで、会場の視線が一身に集まる。

「二人が婚姻を結ぶという噂は本当だったのか」
「お似合いの二人ですわ」

 周囲から二人に対して好意的な意見が聞こえる。だが実情は正反対で、婚姻の話は既に決裂している。
 だが今はそんなことよりリリシアが心配だ。

「ダンスを踊るにはそのストールは邪魔だろう」
「今日は少し肌寒いので⋯⋯」
「踊っていれば身体が暖まる。それともそのストールを取れない理由でもあるのか? 例えば⋯⋯醜い火傷とか」

 ルドルフは薄ら笑いを浮かべている。
 確定だな。どうやら振られた腹いせに復讐するつもりのようだ。
 皇族や多くの貴族がいるこの場では何も出来ないが、こいつだけは一発ぶん殴らないと気が済まない。
 そしてルドルフの手がストールに伸びる。

「や、やめて下さい!」
「その汚れた背中を衆人の前で見せるがいい!」

 リリシアの抵抗も虚しく、ストールはルドルフに奪われてしまう。
 するとリリシアの背中は、皆の前に晒されてしまうのであった。
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