異世界転生したら『ハンペン』だけど俺は賭博駄女神(母)と追放悪役令嬢(嫁)と異世界をめっちゃ楽しく生きていく!!!!

白井伊詩

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ウメヤキ村編

第1話「転生先はハンペンって女神様はふざけていらっしゃる?」

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「どこここ……?」
 
 黒髪に黒目、筋肉質な体を持つ日本人男性が呟く。
 まるで宇宙空間にでもいるようなそんな景色に包まれて男は立っていた。
 
「こんにちは、まずは意識が正常かどうかチェックさせてください」
「え? あ、はい」
 
 そしてこれまた珍妙なことに目の前には黒檀のような艶やかな髪に紅玉のような瞳、整った顔が男を覗いている。男はその顔というよりその下にあるものの方が気になったが失礼にあたると思い数秒見て直ぐに目を逸らした。
 
「どうぞ」
「えっと、まずお名前は?」
「ベーゼンベルグ」
「……冗談ですか?」
「冗談です」
「そうですか……ベーゼンベルグ……っと」
「いやそこそれでいいの!?」
「まぁ、名無しの権兵衛が困るだけですので」
「はぁ……じゃあベーゼで」
「随分情熱的なお名前ですこと?」
「フランス語ではなくて、ドイツ語の方で……」
「一気に中二病になりましたね」
「仲間内にはそう呼ばれていましたので……そっちはなんとお呼びすれば?」
 
「女神様なんてそんな畏まらなくていいですよー、もっと気楽に話して結構ですよ。あと私の名前はアトラ=ナトです。アトラでもナトでもママでもどうぞご自由に!」
「最後のはおかしいだろ!」
「現代日本では女性のことをママと呼ぶ風習があると伺ったのですが?」
「大いなる誤解……え? 女神?」
「はい、毒蜘蛛に噛まれて死んでしまったベーゼさんを転生させるためにここへお連れしました」
 
「女神様……ナトさん今なんて?」
「あなたを転生させるために――」
「そっちじゃない!」
「あなたは毒蜘蛛に噛まれて死にました?」
「そうそこ!」
「やっぱり、はじめは受け入れられないものです。自身の死というのは」
「そんなことはどうでもいい」
「どうでも良くないでしょ! 命に関わっているのですよ!? 死んでますけど!!」
「自分の命が惜しくてブラジルなんか行くかよ! 俺が聞きたいのはその毒蜘蛛が何という名前の毒蜘蛛だったのかだよ!」
「えーっと……資料によりますと……ブラジリアンワンダリングスパイダーという蜘蛛だそうです」
 
 
「ブラジリアン……ワンダリング……スパイダー……だと!?」
「あの……ここ重要……なんですか?」
「重要ですよ! 自分を死に追いやった毒蜘蛛が新種だったら――」
「だったら?」
 
「滅茶苦茶光栄じゃないですか! 初の事例ですよ! ま、ブラジリアンワンダリングスパイダーは既に見つかっている種ですけど、いやー、蜘蛛好きなので最後まで蜘蛛だったのはちょっと嬉しいですね!」
 
 ベーゼは気前よく言い放った。
 
「あの、ホントに未練とかないのですか?」
「未練……未提出の博士論文くらいっすね。でも死んだのに気にすることはないっすね!」
「家族とか! ご友人とか! ハードディスクの中身とか!」
「あ、エッチな動画保存しっぱなしだ……まぁいっか」
「いいんですか!?」
 
「だって蘇れないんですよね?」
「それはそうですが……潔すぎます」
「はいはい、じゃあ、その転生とやらをやってください」
 
「わかりました。いくつかの説明をさせてください」
「はいはい、つっても異世界転生ってあれだろ最近流行ってるやつだろ?」
「話が早くて助かります。あなたには私がまーじゃ……コホン、厳正なる審査の結果――」
「今、麻雀って言わなかったか? 言ったよな? なぁ?」
「……えーっと」
「言ったよな?」
「それは……」
「言ったよな?」
「あのー……」
「言 っ た よ な ?」
「ごめんなさい」
 
「顛末を聞かせてくれ、怒るから」
「えーーー! そこは嘘でも怒らないって言ってくださいよ!」
「うるせえ! ギャンブルで人の能力を決めやがって!」
「正論は止めてください! 正論で死罪なった人間は数多いるのですよ!」
「正論で死ぬよりギャンブルで破滅した人間の方が圧倒的に多いだろうがよぉ!」
「良いじゃないですか人の子など生まれたときからギャンブルみたいなものでしょ! 出生ガチャですよ!」
「ソーシャルゲームみたいに言うな! というか女神のくせに割と人間の流行に意外と鋭いな!」
「それは……まぁ……」
「ソーシャルゲーム……ガチャ……あっお前まさか!」
「断じて!! 断じて課金はしていませぬ!!」
 
「本当か?」
 
 数秒の沈黙の後、ナトは目を逸らした。
 
「やっぱやってんじゃねえか! この駄女神! 雑魚賭博女神!」
「すみません! 三度の飯よりギャンブルが好きなんです! 悪気はないです!」
「三度の飯抜いてる時点で不健全の極地じゃねえか!」
「ごめんなさい!! しばらくはソシャゲ断ちしますから!!」
 
 ひとしきりナトを罵倒したところでベーゼは落ち着きを取り戻した。深呼吸をしてからナトに再度話を聞く。
 
「それで、俺はこれから転生して何をすればいいんだ? 魔王討伐か? スローライフか? 冒険者になって旅でもするのか?」
 
 ベーゼは昔なんとなくテレビをつけていたら勝手に流れていたアニメを思い出しながら女神に尋ねる。
 
「自由です。好きに生きてください」
「そっか、わかった」
「不安ではなそうですね。現地で私もサポートしますので」
「いいね寂しかったところだ」
「全然寂しくなさそうに見えますが?」
「どうだかな」
 
 ベーゼは楽しそうに笑った。
 
「では、早速、異世界は人族達が統治する国『ハンペン』に転生して頂きます」
「ちょっと待って駄女神様、今ハンペンって」
「ハンペンです」
「あの白くて四角い……あの?」
「国名です」
「あー、たまたまですか」
「ちなみに特産品は魚のすり身と山芋をすりおろしたものを蒸した料理だそうです」
「やっぱハンペンじゃねえか!」
「では! またお会いしましょう!」
 
 
「このクソ駄女神いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
 
 
 
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