異世界転生したら『ハンペン』だけど俺は賭博駄女神(母)と追放悪役令嬢(嫁)と異世界をめっちゃ楽しく生きていく!!!!

白井伊詩

文字の大きさ
33 / 44
カニカマ学園編

第33話「終末之火――スルト――」

しおりを挟む
 
 
「良い具合の体になってきたな」
「そりゃああれだけハードなトレーニングしてたらそうなるわ」
 
 クーリーはベーゼの引き締まった体をペチペチと叩きながら満足そうにしていた。
 しかし実際のところはベーゼの体は全体的に細くなっている。クーリーのトレーニングメニューは不要な筋肉を削ぎ落として必要な筋肉だけを残すようにしたからだ。
 
「無駄のない体は見ていて心地よいさね。背の筋肉はもう一声欲しいところだが大目にみるとするさね」
「筋肉は多けりゃいいと思ってたが実際は違うんだな」
「筋肉が多い分、同じ運動させても消費するエネルギーが多い。スポーツマンならそれでもいいが長期間に渡っての移動や作戦となれば携行できる食料も限られるさね。過ぎたるは及ばざるがごとしという言葉もよく言ったものだ」
「言われてみりゃ納得だな」
「さらに言えば鍛えすぎた筋肉ダルマは体の駆動域が減り、動きに支障を来たす。そうなっては本末転倒さね。まぁそこまでの筋肉を付けるのも才能ではあるが」
 
 
「俺もその境地に至れるかな?」
「たわけ。それでは戦士としての面目が立たぬではないか! びっくり人間にでもなりたいのか!?」
「戦士です!」
 
「よし! では今回からの訓練は対人戦だ」
「お! いよいよ技の訓練ですか!?」
「たわけ! 残り一ヶ月もないのに技なぞ覚えさせても実戦には使えん! これからやるのは戦闘時の緊張状態をいかに緩めることができるかの訓練だ」
「緊張を緩める?」
 
「例えば、今回お前は闘技と連隊戦に出る。闘技では会場の緊張感に飲まれるのは目に見えている。加えて連隊戦は、お前が緊張することで周りに緊張が伝搬する。そうすれば士気もパフォーマンスも下がる」
「俺がキーマン?」
「どう踏ん張ってもお前は前衛で的を引きつけるか倒れるまで前に進み続けて道を切り開く役になる」
「とにかく前か……」
 
「お前は一人でも多くの敵を一人でも多く倒し誰よりもダメージを受けろ。隊に見せるのは背中だけだ」
「わかった。やってやる」
 
「いい顔だ。まずは緊張の解き方だ」
 
 クーリーは拳を固め、中段に構える。
 競争心を剥き出しにしてベーゼにプレッシャーをかける。その圧倒的なオーラを受けたベーゼは一歩足を引く。
 
「臆するな! 対峙しろ! 目を逸らすな!」
「はい!」
「そして考えろ、お前が私ならどう動く?」
 
「小細工無しで正面から一撃」
 
 ベーゼが発言した瞬間にはクーリーはベストな距離まで一歩で詰め、浅く呼吸する。剣の切っ先でも突きつけられているような威圧感の中で拳が放たれる。
 
 首を右に振ってギリギリのところで回避するとベーゼは左アッパーをクーリーに入れる。
 
 クーリーの鳩尾に拳が触れた瞬間、ベーゼの首が大きく揺さぶられる。すかしたはずの拳が軌道を変えてベーゼの耳と周囲の髪を掴み、引き寄せていた。
 満足な体勢で放てなかったアッパーの手応えは薄い。それどこれかクーリーの左膝がベーゼの下腹部に直撃する。
 
「ヴッ!」
 
 衝撃が体中の水分を震わせるように伝わる。下腹部への攻撃なのにもかかわらず脳がゆれるような錯覚すらベーゼは覚えた。
 
 しかし、ここで倒れたら考えたくもない攻撃が飛んでくるのは明白、ベーゼは左手でクーリーの顔面を掴むと倒れる勢いのまま彼女を押し倒す。
 
「いい根性さね!」
 
 しかし、クーリーはそれも見越していたのかベーゼの腹に足をあてがい巴投げ、背中から地面に叩き付けられたベーゼは暫時、呼吸すらままらなかった。
 
「ゲホッ! アア! しんどい!」
「受け身無しでいったからな」
 
 地面に蹲っているベーゼをよそ目にクーリーは立ち上がると首を鳴らしながらベーゼに体に馬乗りになる。
 
「さて、ここからが本番だ。蹲ってるお前が悪い」
 
 牙を見せて笑うクーリーは両手の拳を固めて雨霰のようにベーゼの顔、胴、腕に拳を打ち付ける。
 
「顎が砕けようがお構いなし――さね!」
 
 十分以上にわたってクーリーはベーゼを殴りつけると満足したのか馬乗りを解いた。
 
 
「今の気分は?」
「痛い怖い」
「じゃあ、次から地面に寝ないようにするか馬乗りの対策でも考えておくんだな」
「はい……」
 
「まぁ、でも私と相対して一撃入れようとした肝はいい。そしてあれだけ打撃を受けて少し腫れた程度済む、コーニコリスに鍛えてもらった賜だ」
「ただいじめられてたわけじゃねえか」
 
「思いの外ここに時間が掛かると思っていたが、これならもう次のステップにいってもいいな」
「次のステップ?」
「さっさと立て」
「はい!」
 
 ベーゼがすぐに立ち上がると、クーリーは再び同じ構えを取る。
 
「次のステップからはマジで命に関わるさね」
「えっ??」
「その……死んだら……すまん」
「遺書書いた方がいいかな」
「そんな時間は無い!」
 
 クーリーは瞳孔を細めると体から熱気を放つ。
 
「アッツイィ! ウソ!?」
「これが私のスペリオルスキル『終末之火スルト』ッ!」
「俺の肉が焼ける……だと!?」
 
「アタシの炎は一万度近くの高温さね。この温度になると火耐性すら貫通する!」
 
 一万度の炎とは電子レンジにシャーペンの芯をチンしたときの温度大体同じである。
 
「一万度炎……だと! 通りで近くにいる俺も火傷しそうなくらい熱いわけだ」
「その距離でそれだけの熱を感じると言うことは、この拳、お前に打ち込んだらどうなる?」
「……死ぬやんけ!」
「正解!」
「アカアアアアアアアアアン!!!!」
 
 
 この温度でもベーゼの身につけていたアームカバーだけは無事だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...