34 / 44
カニカマ学園編
第34話「ディザーム」
しおりを挟む「ふーむ、母に手紙か」
「はい……そろそろ届くと思うけど。元気してるかな」
ベーゼは地面に座ったまま脂汗を流している。
「お前の母か、一度会ってみたいものだな」
「普通の母親だよ」
「本当か?」
「……うん」
「嘘くさいな」
「……ホントダヨー?」
「正直に言わないと火力を上げる」
クーリーは体から発している熱を徐々に上げていく。既に彼女の足下の土は溶け始めている。
「もう上がってるじゃねえか!」
「吐け」
「俺も知らねえ。むかーし町一つくらいぶっ壊すくらいワケねえって言ってたくらいだ」
「町を……」
「師匠でもそれくらいできんだろ!」
「まぁ可能さね」
「だろ?」
「だが、どのぐらいのリソースでそれを行えるかは知りたいさね」
「おいおい、こっちは村人だぞ?」
「お前みたいな村人がいてたまるものか」
「そうなのか? ケルブスだって優秀だ」
「お前ら二人が異常だ」
「特別か、なんか嬉しいな」
「だが、お前より強い奴は大勢いる」
「だよなー」
「もっと具体的に言うと、お前より才能がある奴、強力なユニークスキルを持つ奴、お前より努力している奴は大勢いるし、努力していない奴だからこそ学びを得られることがある。我以外全員師のように敬意を持て」
「聖人君子かよ」
「そうだ。そして自分の一分に合わねえ奴とは徹底的にやる!」
「シンプルだなぁ……」
「バーカ、複雑に考えてるんだよ」
「え? そう?」
「例えば、リンゴとオレンジが一つずつあるとする。全部でいくつだ?」
「二だな」
「だが、これは問題が定義されているからだ。果物は二種類あると言う奴もいれば、二個あるという奴もいる。一個ずつあるという奴、一個しかないと言う奴だっている。聞いているのは果物の数なのにこうも複雑に考えたがる。問題が出されないというシンプルなものさね」
「う……指示と実際やったことに差があるのは良く聞く話だ」
「心当たりがあったようだな」
「耳が痛てえや」
「教訓を得たな。さて、そろそろいいだろう」
クーリーはユニークスキルを解除する。
「ハァ……クソ暑い! 水飲みてえ……めまいする……」
「水は飲むな」
「まじっすか?」
「脱水症状が出ているのだろう?」
「脱水症状はヤバイって!?」
「だからだ。極限まで自分を追い込め。肉体には負担が掛かるしメリットはあまりないが気持ちが強くなる。むしろそれしかない!」
「命と強化の天秤が強化に振り切ってやがる!」
「大丈夫だ! 最悪あの蜘蛛女が冷やしてくれるさね」
「急熱急冷とか鉄でも鍛えてんのか!?」
「ふむ? それ良いかもしれ――」
「やめましょう」
「強情なやつめ」
「何とでも言え!」
「まぁそこが良いところでもあるか。しかし対抗戦とはいつだ?」
「えーっと、三日後?」
「なっ――! どうして言わぬたわけ!」
「毎日あと何日だって言ってたじゃねえか!」
「そうだったか?」
「はい」
「……長命になると時間の感覚が鈍る。三日も三年も同じように感じる。落ち度は私にあるがこれもまた私自身の学びにする」
「いや、俺にとっては学園人生が掛かったイベントだが??」
「案ずるな。お前はもう十分強いさね」
「お、珍しく師匠が褒めてる」
「……仕方ない詫びついでにひとつ教えよう。特別にな」
「それって技っすか!? きたーーー! 待ってました!」
「技ってほどじゃないさね。ある種、技以前にこれが出来ないと闘龍術は会得できない」
「それって一体?」
「ディザームだ」
「でぃ……?」
「武器取りだ。前にも言ったとおり闘龍術は武器を持たない素手の武術、だが相手は殺し合いの場で我々に合わせてくれる奴はまずいない。それでも龍たる我らが最強である証明をせねばならないさね」
クーリーは地面に手を着けると地面に熱を放ち溶かす。それから溶解した地面を引き抜き剣の形に成形された石が作られる。
「今日は児戯だ。本当なら剃刀のように研いだ武器を使うさね」
「いや、それで殴られたら死ぬんじゃ?」
「当たらなければいいさね」
「そうですねー」
「さて、基本的に人は剣を両手で構える。右が柄前方、左が柄後方を握る。中段に構えれば攻防どっちにも転がせる。そして手よりも長く鋭く厄介だ」
「どうやって奪うんです?」
「まずこちらが仕掛ける場合、正中線をずらしながら間合いに入る。相手の左手と右手の間に手を差し込み、間合いを詰めた側の奥側の手首を掴む。そして一回転、この時、手首を掴んでロックする。あわよくば脱臼できる」
「思った以上にガチなやつじゃねえか」
「今回は剣を主軸に置くが本来なら剣、刀、槍、弓、銃、斧と数えたら切りが無いほど対策せねばならないさね」
「先は長いな」
「では、やってみろ――」
この後、ディザームしようとしたベーゼの手首を粉砕する反撃をうっかりクーリーはやってしまい、夏に鳴く蝉のように悲鳴が木霊した。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
限界勇者のスローライフ~追放気味に田舎暮らしに突入したけど、元魔王やら魔族の子と出会って何だか幸せに暮らせています~
みなかみしょう
ファンタジー
現代日本から転生し、魔王を倒した勇者クウト。
なんとか平和な世界を取り戻したはずが、彼だけは戦い続けていた。
その期間、120年。しかも年中無休、24時間営業である。
「さすがにこれは、ちょっとおかしくないか?」
戦いに疲れ果て、クウトはようやくそのことに気づいた。
自分を道具としてしか見ていない、かつての仲間の子孫にも飽き飽きだった。
会議の場で引退を宣言し、勇者の証も放棄。清々しく立場を強引に捨てることに成功。
遂に手に入れた自由な日々。
そんなクウトの前に、転生にも関わった女神が現れる。
想像よりも酷い状況を見て、女神は新たな力を授け言う。
「とりあえず、スローライフでもしてなさい」
そんな言葉と共に送り出された元勇者は、田舎でのんびり暮らすべく新生活を開始した。
しかし、そんな彼の前に現れたのは別世界に行ったはずの二代目魔王。
似たような事情を抱えた彼女の話を聞き、クウトは同居生活を提案する。
こうして、元勇者と元魔王の田舎暮らしが始まった。
無理のない範囲での畑仕事。
冒険者としての活動。
町の人々との触れ合い。
慣れない普通の生活に苦戦しつつも、二人は穏やかな日々を少しずつ手に入れていく。
たまに起きるトラブルは、その有り余るパワーで粉砕しながら……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる