恋のおまじない ~好奇心で自分に淫紋つけたら合法ショタになってた~

なきいち

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続・三章 新術式

1 閑話、懐旧の熊

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高く上った太陽。
窓の外には若人たちが校庭を駆け、組み手をし、魔術の実践訓練に励む姿が見える。
彼らに向けて手を伸ばすと、薬指にきらりと金色の光が日光を反射した。
(未練かなぁ)
彼はしみじみと、左手のリングを眺める。
普段は付けていないが、今日この日だけは、毎年つけるように決めていた。
彼が生涯で一度、最初で最後の誓いをした日。
手のひら越しにその目に映るのは、一人の女性の姿。
遠い昔、この人と一生を共に歩むのだと思っていた一人の白熊。
冗談が好きな人だったと思う。
家に帰るといつも笑って迎えてくれた。
熱中するとついつい一人の世界に入ってしまう自分の癖を、微笑みながら見ていてくれていた。
いつから、変わってしまったのだろう。何がいけなかったのだろう。
少なくなる会話。粗末になる料理。散らかったままの家。
ずっと何かにいらついている、不機嫌な彼女。
良く笑っていたはずの彼女の笑顔を、思い出せなくなって久しい。
思い出は、美しくあるはずなのに。
あるいはもしかしたら。
それに思い至るたび、思考を止めたくなる。でも、止まってくれない。
彼女は、そんなに優しくなかったんじゃないか?
彼女は、そんなに自分を見ていなかったんじゃないか?
別れを切り出されたとき、彼女の手に指輪はなかった。
そっくりの指輪を露天商が売っているのを見つけたのは、いつだっただろうか。
そして別れて一年も経たずに、彼女の再婚の話が彼の耳にも届いた。
(惨め、だねぇ)
ふう、と息をついて、左手を下ろす。
彼女が悪い人だったのか、彼女を悪く思わなければ自分が耐えられないのか。
遠い思い出は、答えてくれない。
だが真実がどちらにせよ、思い出から離れられない自分は、惨めだ。
右手で机に頬杖をついて、体重を預ける。
(真理に至る呪印、か)
窓の外は、彼の心を嗤うかのように透き通った青空だ。

彼の生きがいを、金にもならない道楽と切り捨てて彼女は去っていった。
その道楽が今、認められようとしている。
今の自分を、彼女はどう思うだろうか。
そんなことをぼんやり考えながら、熊はただ窓の外を眺めていた。
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