ジンクス∞漁猫∞～君と僕の物語

04 奏でる音色

05

「川名さんどうしたの？」

　僕が、そう尋ねると川名さんの目には涙が浮かんでいた。

「大学に入ってください。
　今の時代そうしないとあとで苦労しますよ……」

　川名さんが、静かにそういった。

「私たちも結構説得したんだよ？」

　美姫がそう言うと護が言葉を付け足す。

「でも、コイツ頑固でさ。
　もう高卒で働くってさ……」

「働く場所とかもう決めてるの？」

　宮崎さんが僕に尋ねる。

「適当にバイト見つけて、そっから適当に仕事を見つけて就職するよ」

　僕がそう言うと宮崎さんが溜息をつく。

「世の中そんなに甘くないわよ？
　大卒の人だってなかなか就職できない世の中なのよ？」

「うん。
　でも、やりたいこととかないし出来ることもない。
　大学に行ったからといって、世界が変わるとも思えない。
　そんなんだったら、大学に行く費用だって無駄になる」

「やりたいこと……大学で探す……じゃダメなんですか？」

　川名さんの目が心配そうだ。

「……うん」

「そう……ですか……」

　川名さんの表情が暗くなる。

「まぁ、まだまだ時間があるんだしゆっくりと決めたらいいわよ。
　それより、勉強会の話！
　日曜日の朝からにする？昼からにする？
　場所は――」

　宮崎さんが、そう言ったとき美姫が声を出す。

「場所は、一の家！
　時間は、朝の11時でどう？
　昼ごはんは私が作るから」

　美姫がニッコリと笑う。

「お？やっと美姫の手料理が食べれるのか」

　護が嬉しそうに笑う。

「川名さんと宮崎さんは料理は得意？」

　美姫がふたりに尋ねる。

「主婦並程度には……」

　川名さんが、そう言うと宮崎さんがそれを真似て言う。

「シェフ並程度には……」

「……え？
　シェフ？」

　美姫が驚いている。

「ええ。
　私に出来ないことなどないわ！」

　宮崎さんが、胸を張ってそういった。