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Scene01 やさしい世界
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こうしてハヤトとアイは、ファルシオン本部があるスラッグ王国に行くことになりました。
そして、ここはとある名もなき村。
ドックン。
ドックン。
ドックン。
小さな心音が響きます。
「妻も子どももいないおっさんさ。
バット(武器)を持たないおっさんは。
マントを持たないおっさんさ。
空は飛べないおっさんさ。
なのにクビはすぐとぶのよ、おっさんは。
かなしみのおっさん」
中年の男がそう言って歌います。
男にはかつて家族がいました。
しかし、魔王ベルゼブブ軍が現れ全てを奪い去りました。
魔王ベルゼブブ。
それは漆黒の王と恐れられている魔王のひとりです。
男はもう妻も子もいません。
無残にもベルゼブブ軍に殺されたのです。
復讐を誓いました。
ベルゼブブ軍を倒すと誓いました。
でも、誓うだけでは何も産まれません。
復讐をしたところで家族は戻ってこない。
それが死ぬってことなのです。
そしてなによりかなしいことは男には力がありません。
だから歌うしかありませんでした。
「妻も子どももいらいおっさんさ
バット(武器)も持てないおっさんが。
マントを持たないおっさんは。
空は飛べないおっさんよ
なのにクビはすぐとぶおっさんじゃ。
ぜつぼうのおっさん」
「やー」
その男に近づいてきた青年がいました。
青年の名前は鰤谷 ブリ男。
鰤谷王国のサラリーマンです。
「なんだい?おじさんは今。
疲れているんだ」
「知っているよ。
おじさん、僕と契約して魔人にならないかい?」
「魔人?」
「そう、ベルゼブブ軍を倒すために……」
それを聞いた男の目が濁ります。
「今は、そういう冗談に付き合える気分じゃないのさ。
そうだね、僕はただの村人Aさ」
中年の男は、力なくそう答えました。
「大丈夫。
魔王会は今、人手不足なんだ。
猫の手も欲しいくらいさ」
それを聞いた中年の男はブリ男に孫の手を差し出します。
「これは?」
「孫の手さ。
しかも猫の手の形をしているだろう?
娘と一緒に作ったんだ。
使ったらちゃんと返してくれよ。
大事なものなんだ」
ブリ男は小さく笑います。
「いえ、今孫の手は必要ありません。
貴方の力が必要なのです」
「僕はそんなに強くないよ」
「そうかい?ベルゼブブ軍の襲撃に合いひとり生き残った。
それどころかベルゼブブ軍の幹部イシュタムを撤退にまで追い込みました。
それだけでも凄いですよ」
「そうだね」
男の心には何も響きません。
「大丈夫。
失敗すれば死ぬだけ。
でも成功すれば最高の力を手に入れることができるだろう」
「いいですよ。
死ぬのもいい。
死んでもいい。
失ったものはたくさんある。
これから失うものなんてなにもない」
男はそういってブリ男の目を見ました。
「では、契約完了でよろしいですね」
ブリ男の言葉とともに男の身体が熱くなります。
憎しみでもない、苦しみでもない。
優しさでもない、愛でもない。
それは、まさに太陽。
天が平等に照らす温もり……
「これは……?」
男の鼓動が早くなります。
「もしかしてこれは」
ブリ男が驚きます。
「なんだ?なにをしたんだい?
この感情。この感覚。
まさに太陽、まさに太陽」
男の心に歌が溢れてきます。
「さぁ、歌うのです。
そして力を開放してください!」
「妻も子どももいないサラリーマン。
バットを持たないサラリーマン。
マントを持たないサラリーマン。
空を飛べないサラリーマン」
男の心に涙が溢れます。
「思い出してください。
貴方の名前を……」
「僕の名前かい?
リーさ……
ただのリーさ」
するとブリ男がいいます。
「貴方のヒーロー名。
『高貴な女性の優しさを持った男』という願いを込めて『サラリーマン』というのはどうでしょう?」
そして、男の名前がヒーロー名が決まりました。
名前はリー。
ヒーロー名は、サラリーマン。
「ああ、僕はなんにでもなるよ」
リーはそういって空を見上げました。
そして、ここはとある名もなき村。
ドックン。
ドックン。
ドックン。
小さな心音が響きます。
「妻も子どももいないおっさんさ。
バット(武器)を持たないおっさんは。
マントを持たないおっさんさ。
空は飛べないおっさんさ。
なのにクビはすぐとぶのよ、おっさんは。
かなしみのおっさん」
中年の男がそう言って歌います。
男にはかつて家族がいました。
しかし、魔王ベルゼブブ軍が現れ全てを奪い去りました。
魔王ベルゼブブ。
それは漆黒の王と恐れられている魔王のひとりです。
男はもう妻も子もいません。
無残にもベルゼブブ軍に殺されたのです。
復讐を誓いました。
ベルゼブブ軍を倒すと誓いました。
でも、誓うだけでは何も産まれません。
復讐をしたところで家族は戻ってこない。
それが死ぬってことなのです。
そしてなによりかなしいことは男には力がありません。
だから歌うしかありませんでした。
「妻も子どももいらいおっさんさ
バット(武器)も持てないおっさんが。
マントを持たないおっさんは。
空は飛べないおっさんよ
なのにクビはすぐとぶおっさんじゃ。
ぜつぼうのおっさん」
「やー」
その男に近づいてきた青年がいました。
青年の名前は鰤谷 ブリ男。
鰤谷王国のサラリーマンです。
「なんだい?おじさんは今。
疲れているんだ」
「知っているよ。
おじさん、僕と契約して魔人にならないかい?」
「魔人?」
「そう、ベルゼブブ軍を倒すために……」
それを聞いた男の目が濁ります。
「今は、そういう冗談に付き合える気分じゃないのさ。
そうだね、僕はただの村人Aさ」
中年の男は、力なくそう答えました。
「大丈夫。
魔王会は今、人手不足なんだ。
猫の手も欲しいくらいさ」
それを聞いた中年の男はブリ男に孫の手を差し出します。
「これは?」
「孫の手さ。
しかも猫の手の形をしているだろう?
娘と一緒に作ったんだ。
使ったらちゃんと返してくれよ。
大事なものなんだ」
ブリ男は小さく笑います。
「いえ、今孫の手は必要ありません。
貴方の力が必要なのです」
「僕はそんなに強くないよ」
「そうかい?ベルゼブブ軍の襲撃に合いひとり生き残った。
それどころかベルゼブブ軍の幹部イシュタムを撤退にまで追い込みました。
それだけでも凄いですよ」
「そうだね」
男の心には何も響きません。
「大丈夫。
失敗すれば死ぬだけ。
でも成功すれば最高の力を手に入れることができるだろう」
「いいですよ。
死ぬのもいい。
死んでもいい。
失ったものはたくさんある。
これから失うものなんてなにもない」
男はそういってブリ男の目を見ました。
「では、契約完了でよろしいですね」
ブリ男の言葉とともに男の身体が熱くなります。
憎しみでもない、苦しみでもない。
優しさでもない、愛でもない。
それは、まさに太陽。
天が平等に照らす温もり……
「これは……?」
男の鼓動が早くなります。
「もしかしてこれは」
ブリ男が驚きます。
「なんだ?なにをしたんだい?
この感情。この感覚。
まさに太陽、まさに太陽」
男の心に歌が溢れてきます。
「さぁ、歌うのです。
そして力を開放してください!」
「妻も子どももいないサラリーマン。
バットを持たないサラリーマン。
マントを持たないサラリーマン。
空を飛べないサラリーマン」
男の心に涙が溢れます。
「思い出してください。
貴方の名前を……」
「僕の名前かい?
リーさ……
ただのリーさ」
するとブリ男がいいます。
「貴方のヒーロー名。
『高貴な女性の優しさを持った男』という願いを込めて『サラリーマン』というのはどうでしょう?」
そして、男の名前がヒーロー名が決まりました。
名前はリー。
ヒーロー名は、サラリーマン。
「ああ、僕はなんにでもなるよ」
リーはそういって空を見上げました。
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